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主人公のルーは、楽しく働いていたカフェの閉店に伴い、仕事を失う。見つけた仕事は6カ月限定の四肢麻痺になった男性ウィルの介護職。介護職といっても、それは一般に考えられる介護とは違っていた。
ウィルは自分の人生を心から愛しエンジョイして仕事でも成功していたスーパーエリートだった。
事故にあい四肢麻痺になり、スイスのディグニタスに6か月後に予約を入れてある、その心を変えられる人をウィルの両親は欲していた。ルーはそれをかなり早い段階で知りながら試行錯誤というには軽すぎる言葉とも思えるような、様々な試みをして、少しでもほんの少しでも、ウィルに笑顔を、と行動する。かつてのルーにはなかったような、様々なことを考え行動するようになれた背景には、ウィルからのルーに対する、意地悪な命令とも思えるような指示があった。自分を狭いところに押し込めないで、自分の能力をできる限り発揮できるよう努力する、あきらめずやり遂げる、そんなことを6カ月で教えてくれた。
そんなウィルのことをルーは、好きになっていく。
6カ月の仕上げとしてモーリシャスに看護師を伴い3人で旅行に行く。その旅で、ウィルが生きる意欲を取り戻してくれることを願いながら。
でもウィルは、最後まで意思を変えることはなかった。ルーにスイスに一緒についてきてくれと。
怒り狂い口を利かなくなるルーを、最後の姿として記憶したままウィルはスイスに旅立つ。
ウィルにとっての最後の夜、ウィルの母親からスイス行きのチケットがあるからすぐ来て、と要請があり、最後に立ち会う。
ルーはウィルに、人生の最後に楽しいと感じられる一瞬を与えることができ、ウィルはルーにこれから生きていくための糧をあたえることができた。
最後にウィルが意思を変えることを望んでいるようなそうでないような気持でラストまで読んだ。
この本を読んだのは、安楽死について書かれた本(宮下洋一氏)を読んでディグニタスに興味を持ったからで、ディグニタスとは直接の関係はないが、そこに行く人のバックグラウンドを細かく書いてあることで、ディグニタスの存在意義を改めて感じることが出来た。
自分も難病を持っていて、常に痛みと戦っている。ディグニタスのことを心の隅にとどめながら、何とか乗り越えようと、思った。
いい本です、読んでいない人にはおすすめです。
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2021-2
映画は大好きで何回か観たけど、小説は初めて。大学の時映画館で観てすごくよかったからすぐ小説買ったけど読めずのまま閉まってあってやっっと読めた。。
映画では書かれていなかった部分を知れてよかった。ルイーザの過去とかウィルのお父さん、妹のことやパトリックのこと。パトリックは最後まで最悪だったね。
ウィルのように四肢麻痺になった場合生きるか死ぬか自分で決めることもできない。つまり自殺することもできない。選択できない。四肢麻痺でも希望持って生きてる人もいるんだからと思ったけど読んでいくうちにあらゆるリスクがあり回復することはなく弱っていくばかり。あらゆる希望を捨てざる得ないことはわかった。
ハッピーエンドと言えるかわからないけ1番好きな作品。
最後のスイスのシーンでは涙が止まらなかった。気分が悪くなるくらい泣いてしまった。
常に重苦しいシーンばかりではなく笑えるところもあるからぜひみんなに読んでほしい!
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自分にとって考えられないような辛い事。
それを大切な人が心から望んでいる時、どうするのが正解なのか…正解ってないと思いました。
1番大切なのは正解でも、望みでもなく、大切な人そのものですね。
読んでいて、とても辛くて涙をながしましたが、読後はどんよりした気分ではなく、むしろ素敵な本に出会えてよかったと思いました。
ページ数は多めですが、それを感じさせないくらい、一気に読みました。
映画化もされているとの事で、ぜひ観てみたいですと思います。
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人生の最期を自分で決める尊厳死は、ある意味で自分らしい生の表現とも言えるかもしれない。
もう治ることがないという事実、弱くなっていく未来がわかっている苦痛、屈辱、そういったものに耐える人生を自分で終わりにするという固い意志によって、自分らしさを取り戻すような意味があるのかもしれない。
「死」をタブー視する日本で、尊厳死について意見を持ち発信する人は少ない。だけど誰もが対峙している「死」について考えを深めることは、どう生きていくかに向き合うことなのだと思う。
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読書会で紹介されて知り、気になって読んだこちらの作品。"尊厳死"という重たいテーマを扱っているものの、ルーとウィルのユーモアたっぷりな軽い会話に引き込まれて、あっという間に読み切ってしまった。
「相手の選択を尊重することができるか」、すごく難しいなぁと思った。相手のことを思って何かを言っても、結局は自分が一番で、自分がよく思われたい、言ったことを後悔したくない…という風に考えるのではないかとも思った。
ルーとウィルのママたちの気持ちもすごく丁寧に描かれていて感情移入してしまった…主人公の2人だけでなくて、周りの人たちの人生や葛藤もよくわかるので物語に入り込める。
600ページ超えるけれど、読みづらくなく、サクサク読めるのでぜひ手に取って欲しい1冊。
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読むのは三度目だけど、また泣いた。
決して軽くないテーマだけど、生きるってことを前向きに捉え直せる気がする本。
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なかなか読み応えがある一冊でした。
ウィルとルイーザの物語。私自身初めて尊厳死について考える事が出来、命のあり方について考えさせられました。
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自殺が絶えないこの世界で、「尊厳死」という選択を選ぶ人たちがいる。これは、医師や弁護士を伴い、法的に許された国でしか行えない、貴重な選択である。だから、その分お金と時間がかかるし、尊厳死を許される人も厳選される。
自ら死を選ぶ、という部分では自殺と変わらないが、「尊厳死」は「自死を選ぶに遜色ない」と、他者が選び、また実行されるもので、自殺とは大きく異なる。
しかし、愛する人に「あなたには死んでほしくない」と思われる点では同じである。他人が他人の死に方に干渉することは、理不尽だし、余計なお世話かもしれない。だけれども、死にたいという気持ちを、少しでも軽くできるならば、人はどんな理不尽も、どんなお節介もしてあげたくなるのではないだろうか。
この本は「尊厳死」を取り扱った本だが、そこが主題ではない。死を求める者の周りにいる、「死んでほしくないと願う者」たちが主役なのだ。
結末は決まっていたことだった。読み進めていけば分かる。この話はラブロマンスでもヒューマンドラマでもなく、ある意味ドキュメンタリーに近い。
消えかけた灯に、はつらつとした高温の愛を注げば、ひと時は燃え上がり、鮮やかな炎が立ち上がるが、それは生涯続くものだろうか。一気呵成に蝋を使い果たした蝋燭の末路は、火を見るよりも明らかだろう。
この本を勧めたいのは、「死にたい」と溢した友人や、家族に、どんな言葉を掛ければよかったのかと、内罰的な感傷を受けた人に読んで欲しい。この本に正解が書いてある訳ではないが、少なくとも「この世に引き留めるメリットは何か」とか、「死を選ぶ自由もあるのではないか」などという難解な思考は消える。そして、自ずと答えが出てくるはずだ。
最後に、「自殺を考えている」人へ。
我々が生きてく上で、死は自動的にやってくるものだ。それは事件、事故、病気、寿命など、原因は数多にあるが、人生が終わるときは必ず来る。
それを、自分の意思で終わりを早めるのは、もったいなくはないだろうか。
今がとても苦しく、辛く、孤独で、逃げる力もないかもしれない。だが、思い出をさかのぼって欲しい。楽しかったことがあったはずだ。それにも必ず、終わりがあっただろう。苦手な教科の授業も、必ず終わりがあったはずだ。つまり、今の現状も、いずれ終わりは来るのだ。それは緩やかに来るかもしれないし、一瞬で終わるかもしれない。この先の人生を、あなたが生きていけば、苦しみが終わる時に出くわすはずだ。その先に楽しさがあるのか、新たな試練が待ち受けるのかは誰にも分からないことだが、少なくとも死に直面するほどの苦しさを乗り越えたあなたにとっては、ほっと胸をなでおろすものとなると思う。だから、自分の人生にいずれはやってくる死を、わざわざ自分から迎えに行くことはしないで欲しい。死は、彼らは常に我々の脳裏に暗い影を落とし、苦々しい存在感を胸中に残すが、我々が無視していれば、向こうからは何もできない。特に今を生きるために精一杯もがいている人には。
死にたいと思う人々が、人生の苦難を乗り越える力の端々と��れればと思いつつ、感想とメッセージを誠に勝手ながら、ここに残す。
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この本はブクログで知ってからすぐに読み始めた。翻訳され、かつそれなりのページ数なことからもっと読みづらいものだと思ったけど、スムーズに読み進められた。
正直みんなそれぞれに癖が強く、普通の状況ならひどい人たちばっかりだけど全員に共感できた。
ウィルは多分性格の悪い男だと思う。こんな状況でもなければルイーザを馬鹿にして見下してただろうし。それに6ヶ月だからこそウィルとルーに愛情が芽生えたのであって、仮に結ばれてもっと長い時間一緒にいるとなると、気が合わなくなるんじゃないかと思う。ルーはウィルのお陰で自分の殻を破ることができ、ウィルは楽しい時間を過ごせたのなら、この結末が1番幸せなんじゃないか。だから読後も全く後味の悪いものではなかった。