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下巻の中では、李賀の「雁門太守行」が好きでした。
最初に読んだときの強烈な印象が忘れられず、図書館でもう一度借り直して読みました。
戦を終えた城の夜の風景を、鮮烈に描き出す筆致がすごい、というのが最初に読んだときの感想です。
一行目の「黒い雲の圧力で城が砕けそうだ」という印象的な比喩から、一気に不穏な世界観に引き込まれてしまう。
二回目に読むと、また違う魅力が見えてきました。
例えば五行目の「半巻紅旗臨易水」(力なく半ば垂れた紅旗が易水(川の名前)に臨み……)という描写。
最初の4行には、旗に関する記述は一切出てきません。
なのに、五行目を読んだときには、描かれている旗のイメージがすでに頭の中にぼんやり見えている。
その見えている旗のイメージを、五行目で「すぱーん!」と言い当てられているような感じ。
ものすごく主観的で、読んだ全員がこんな感覚になるわけじゃないと思いますが・・・
とにかく、いつも新しい読書体験をもたらしてくれる一作です。
これが、たったの56文字で表現されているんだから本当にすごい。
最近の言葉でいえば・・・コスパ良すぎです!笑