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読書録「桐島教授の研究報告書」4
著者 喜多喜久
出版 中央公論新社
p210より引用
“「……大したことではない。新しく物質を
作り出すのではなく、市販医薬品やら、実験
用試薬やら、手に入るものを片っ端から評価
していっただけだ。”
科学者に憧れて入学した男子学生と憧れの
対象となった教授を主人公とした、長編ミス
テリ。同社刊行作「美少女教授・桐島統子の
事件研究録」改題文庫版。
小学生の時に開かれた科学教室をきっかけ
に、理系ルートから国立大学へ無事合格する
ことが出来た主人公・芝村拓也。これからの
大学生活を想像しつつ、入学式・オリエンテー
ションを受け終わりキャンパス内を歩いてい
ると、おかしなポスターを見かけた…。
上記の引用は、劇中のウイルスの治療薬を
発見するために用いた手法についての、もう
一人の主人公・桐島統子教授の台詞。
何かに対して有効な手段や物は、気付けない
だけで身近にあったりするものかもしれませ
んね。作中では割と希少な物質のようですが、
ある場所と手に入れられる算段が付けば、何
とでもなるのでしょう。
ジャンル的には科学ミステリ物なのでしょ
う、しかしそこに美少女BBA属性やラブコメ要
素も盛られていて、とても濃い味付けな作品
ではないでしょうか。
味付けの話はまあいいとして、作品中の終
盤p296,297で語られる事件の真相に対する推
理と、現実で2019年末から起こって2021年10
月現在進行形の病気の流行とその対策を照ら
し合わせると、世の中に流言が溢れるのはど
うしようもないことなのかもしれないなとお
もってしまいます。誰の言葉か忘れましたが、
「人が想像することは、現実に起こりうるこ
とである」だそうです。しかし、こんな時こ
そ冷静に日々を過ごしたいものです。
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