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カズオイシグロ+ファンタジー、ということで非常な期待をしてしまった。ドラゴンや妖精、鬼が登場し、著者の作品につきものの「ぼんやりとした不安」みたいなのも感じさせつつ、解説にあるようにテーマは「恋愛」。思ったほどでもなかったなあ、というのは、読みながらなんとなくつっかえてしまう和訳のせいでしょうか…。
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不思議なガジェットが散見するのはイシグロの趣味?
未婚の娘にとって災難な草。僧が順に鳥に体を差し出す修道院。
卑劣な行為も残虐な情景も、品位を保った落ち着いた語彙で静かに淡々と語られるのがこの作家の持ち味だと思ってたんだけど、修道院を抜けた後の川で小妖精たちにベアトリスが襲われるシーンや、山羊を繋いだ後の三者三様に自己主張するシーンには、珍しく焦燥感があった。そういうシーンでも、闇雲にテンポアップするんじゃなくて、むしろスローモーションで細部まで描写するような筆運びが斬新。
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なかなかいろいろ考えさせる小説.竜だとか鬼だとかが出てきて,何のアレゴリーかを考えてしまうが,あまり考えない方が本のテーマには入っていけそう.
記憶(あるいは忘却)と赦しがそのテーマか.忘却がなければ赦しはないし,忘却をすれば記憶を取り戻したく思い,そして過去の記憶は赦しを導かない.この関係が個人対個人,民族対民族と多層的に絡み合っている.難しい問題.
私自身,あるいは日本ののまわりをみても,同じ問題はたくさんある.私が惚けてすべての過去が忘却されるとき,真のやすらぎが訪れるのか.
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英流ファンタジー?歴史?英雄譚?恋愛?結局どんな枠組みにも入らないというのがカズオ・イシグロのすごさなんだろう。400ページを超える分量を一気読みさせるストーリー展開と3人称と一人称を巧みに絡み合わせる技法で読み手をも絡み取られたような気がする。
ファンタジーや歴史ものには共通して、その世界観や場面展開を理解していないとついていけない。アーサー王が崩御してしばらく経った頃の魔法や竜が存在する、つまりなんでもありの場面設定がちょっとご都合主義的でもある。あのころのイギリス、ブリトン人やサクソン人の関係は勉強不足で分かりにくい。
霧が記憶を消していく中、最後まで残ったものは何だったのか・・・うわぁ~ネタバレしたい~
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記憶の問題、かみ合わないコミュニケーション、信頼と憎しみ。読み進めるのは、決して楽ではない。しかし、象徴と寓意を考えずにはいられない。「お姫様」という呼びかけが、優しさに満ちている。
ゆれる主人公が最後、きちんと待てる人になれる、というのが、まさに象徴的。
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う〜つまらん。
途中でリタイア。
神秘的なファンタジーで本来好きなジャンルのハズなんだけど、続きを読む気がしない。
あまり印象に残るシーンがないからかな。いくら文体とか描写とか雰囲気が良くても面白くなければ最後まで読む事はできません。
よく半分も読めたなぁと思うくらいつまらんかった。
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今までの カズオイシグロの作品と比べると
評価は低くせざるをえない。
中世の イングランドを舞台に
過去の記憶の多くをなくした
老夫婦が旅にでる。
ドラゴンあり 鬼あり 妖精ありの不思議な世界。
そして明らかになる過去。
それなりに読ませるし、どうなるのか予想がつかない展開を最後はまとめる 構成力はなかなかのもの。
しかし 記憶することの意味。
民族の対立。
憎悪を記憶し、それを持ち続けることなおどの
概念が十分咀嚼されていない感じで
いろいろと中途半端になってしまった感じで
残念。 多分 ドラゴンや妖精や騎士など
作者なりに 何かの隠喩なのだろうが
いまひとつ 響かず
多少読みづらかった。
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初のカズオ・イシグロでした。
うーん、この作品中にも霧というものが出現しますが、最初はおぼろげな、登場人物やストーリーでしたが霧が晴れるようにが集約されて行く構成に夢中で読んでしまいました。
でも完全には晴れないんですが(笑
最後をどう解釈するか少し戸惑いながら、記憶というものについて、人間について、色々と考えさせられる作品でした。
他の作品も読んでみます。
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私には難しい部類の本だと思うのに,なぜか先が気になってしまいながら読んだ。すごさなのだろうか。こういうことが言われているんだろうなぁということが何となく分かった気がする読後感。
アーサー王といった知識がなくても楽しめる,と書かれていたけど,知識があった方が断然おもしろいだろうなと思う。
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ファンタジー
アーサー王のちょっと後の時代。
だがそれはそういう設定であるだけ。
本質はすべての時代の物語である。
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舞台となるのは、六世紀か七世紀ごろのイギリス。この地域を300年ほど支配したローマ帝国が勢力衰退によって引き上げ、土着のケルト系民族であるブリトン人と、新しく今のドイツあたりから移住してきたサクソン人がそれぞれ別々に村をつくって住んでいる。川や沼地には冷たい霧が立ち込み、鬼の隠れ家になっている。地面は耕すに固く、病気も流行する、厳しい世界だ。
主人公はアクセルとベアトリスというブリトン人の仲むつまじい老夫婦。村からはろうそくさえ取り上げられるほど冷遇されているが、二人で懸命に助け合って暮らしている。この二人が、長らく会っていない息子の住む村を目指し、旅に出るところから物語は始まる。とはいえ息子の顔や声さえさだかではない。この国は「健忘の霧」に蔽われていて、二人だけではなく、みな数日前のことさえ忘れてしまうのだ。
旅が進むにつれ、じょじょに世界の広がりが見えてくる。かつて大きな戦争があったらしいこと。悪鬼や獰猛な烏が増えて、どうやらこの国はだんだんと悪いほうに傾いていること。そして、クエリグという雌竜が吐く息こそが「健忘の霧」の正体であるらしいこと。
そしてサクソン人の旅の戦士ウィスタン、故アーサー王からクエリグ退治を命じられた老騎士ガウェインとの出会いにより、二人の「息子を訪ねる旅」はいつしか「クエリグ退治の旅」へ、すなわち「世界の謎」にかかわる活劇へとスライドしていく。
ファンタジー要素が注目されているが、本書の本質はミステリーだ。戦士にも、騎士にも隠された本当の使命がある。アクセルは昔、二人に出会っていて、ただの農夫ではなかっただろうこともほのめかされる。しかし、なにしろこの国には「健忘の霧」が立ちこめているのだ。「信用できない語り手」しか登場しない世界を、読み手は老夫婦とともにさまよい歩かなくてはならない。
謎は、老夫婦の間にももちろんある。そもそも二人が「息子を訪ねる旅」から寄り道するきっかけになったのは、ある船頭の話を聞いたから。長年連れ添った夫婦でも一人ずつしか渡してくれない不思議な島。その島で二人で幸せに過ごすには「一番大切に思っている記憶」について、別々に答えなければならない。この話を聞いて不安になったベアトリスは、どうしても記憶を取り戻したくなったのだ。しかし、思い出したくない記憶だって、長年連れ添った夫婦のなかにはある。時折、不実の影が顔を出し、不穏な空気を漂わせる。
一方、世界最大の謎は、かつての大戦争に関わること。「わが敬愛するアーサー王はブリトン人とサクソン人に恒久の平和をもたらした」と語るガウェイン卿に、「偉大な王はどのような魔法で戦の傷を癒やされたのですか」と尋ねる戦士ウィスタン。もしかしたら「忘却の霧」こそが、その要にあるのではないか――。
歴史というものを「民俗の記憶」ととらえたとき、「思い出したくない」ことを忘れてしまっていいのか、その忘却が何をもたらすのか。ファンタジー仕立てになっていることで、かえって「現代」を思わせる物語になっている。
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読むのにすごく時間がかかった。最後の100ページくらいで主題のようなものが見えてきたがそこにいくまでの300ページはなんだったんだろう、、という感じ。
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カズオ・イシグロの最新作で、「私を離さないで」以来10年ぶりの大作。アーサー王伝説をモチーフに、7、8世紀のイギリスが舞台のファンタジー。
竜や鬼や妖精が出てくるが、どれも気味が悪い。竜の息で、辺りに霧が漂い、人々の記憶が消えてしまう。ブリテン人とサクソン人、人種が違うだけで憎しみ合い、血の争いは終わらない。
物語は結局、最後までどんよりしていて、よく見えない。細かい部分は霧の中。戦いの悲惨さ、無意味さは明確に描いている。今の世でも繰り返す争いへのメタファーと受け止めた。
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イシグロが描くイギリス伝統のファンタジー。アーサー王伝説をも受け継ぐローマ時代のイギリス。
息子に会いに行く年老いた夫婦の旅立ち。
さまざまな出逢いと戦い。
新たなイシグロの世界観。
素敵です!
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竜、鬼そして妖精などが跋扈し、ブリトン人とサクソン人が対立する6世紀頃の英国を舞台にした冒険ファンタジー。主人公である老夫婦の葛藤が恋愛小説としても読めるところも面白い、著者と同じアラカン世代なら楽しめること請け合いです♪