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忘れずにいて、しかし赦しあうことは可能か。
忘却による安寧と、確執による復讐の連鎖と。
縦の論理と、横の倫理と。
仕事と、愛と。
偽の物語にすがることの愚鈍さと、真実を引き受けることの残酷さと。
誰もが引き裂かれている。矛盾を抱えている。
霧が晴れるにつれてさらに痛みは募る。
忘れることなく、
発狂することなく、
誇りを失うことなく、
人は矛盾に耐えていけるのだろうか。
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これはきっと何か大きな歴史や文化の暗喩の物語であるのだと思うのですが、それの意味するところをまったく理解できず、ひたすらに続く老夫婦のまだるっこしい会話やつまらない活劇がただただ退屈で仕方なかった。
訳者の責任もあるのかどうか?登場人物の吐く台詞がいちいち回りくどくて的を得ない。ベアトリス婆さんの台詞には憎しみを抱くほどだった(笑)。
っていうか、根本的な文化の違いなんだろうと思う。
読む人が読めばきっと良い作品なんだろう。。。
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カズオ・イシグロの作品は、シニカルさを感じるものが多いが、この物語では作家のメッセージが直球で届いた。
我々は、平和や愛を求めながら、憎しみや復讐を繰り返す。今も昔も変わらない。
真実と向き合い、時間がかかっても、問題を乗り越えられる時が来ますように。
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忘却の霧に支配された土地で、人々は過去が不確かなまま生活をする。
アクセルとベアトリスは仲のいい老夫婦だが、失くした記憶の向こう側に見える過去から、自分達には息子がいることを知る。そして息子の村へと二人は旅立つ。
二つの国の対立と、強引に解決した過去。
忘却の霧によって二つの国の国民は隣人への憎しみを忘れていたが、やがてその霧を払うために遣わされた男と、老夫婦が出会う。
面白かった。
忘れることで麗らかな関係を築いていたとしても、当然許しにはなっていない。
しかし、全てを思い出したあげくに発生するだろう対立の果てに何が待っているのかはわからない。
老夫婦は人生の終わりを見据えて全てを思い出す道を歩んだのだろうけど、若者にとっては悲惨な結果かもしれないと思う。
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数世代に及ぶ人類の歴史を一世代の夫婦の人生に収斂させた歴史物語なのだろうか。かつての民族間の激しい諍いも、現世を生きる者たちにとってその痛ましさは記憶にない。記録さえも時とともに霧にかすんでいく。邪悪な雌竜、現代ならば核兵器は、眠らされているものの、争いの抑止を担ってきた。その廃絶によってもたらされるものは、平和なのか、新たな諍いなのか。ないがしろにされる古き者ども。彼らは最期の十念を次代に遺すため、つとめて忘れ去ろうとしてきた忌まわしい過去、その巨大な犠牲を手繰り寄せる旅に出る。かな。
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イギリス。夫婦。騎士。竜。霧。記憶。ファンタジー。大切な思い出を忘れて、対立を忘れて、そんな生き方を変えたなら、のところで物語は終わる。夢のような話だった。
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これまで邦訳されたものは全て読んでいるカズオ・イシグロの最新作。作品ごとにテーマが異なるのは彼の作品の一つの特徴だが、今回はイギリス中世を舞台にした歴史ファンタジーという点に驚かされた。鬼や竜が登場し、アーサー王伝説を下敷きにした騎士が活躍するというこれまでの彼の作品世界からはかけ離れたものであったが、読み進めればいつもの彼の文学世界に浸ることができる。
彼が得意とする「信頼できない語り手」の文学技法は、登場人物数名の一人称で語られる本作でも健在であり、主人公の老夫婦の語り口を怪しみながら、どのような結末になるのかを期待するのは、彼らの作品の大きな楽しみ方であるように思う。
大傑作『私を離さないで』のような衝撃的な結末ではないが、序盤に張られた伏線が結末で解きほぐされ、じんわりとした暖かさを与えてくれる佳作。
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カズオイシグロ+ファンタジー、ということで非常な期待をしてしまった。ドラゴンや妖精、鬼が登場し、著者の作品につきものの「ぼんやりとした不安」みたいなのも感じさせつつ、解説にあるようにテーマは「恋愛」。思ったほどでもなかったなあ、というのは、読みながらなんとなくつっかえてしまう和訳のせいでしょうか…。
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不思議なガジェットが散見するのはイシグロの趣味?
未婚の娘にとって災難な草。僧が順に鳥に体を差し出す修道院。
卑劣な行為も残虐な情景も、品位を保った落ち着いた語彙で静かに淡々と語られるのがこの作家の持ち味だと思ってたんだけど、修道院を抜けた後の川で小妖精たちにベアトリスが襲われるシーンや、山羊を繋いだ後の三者三様に自己主張するシーンには、珍しく焦燥感があった。そういうシーンでも、闇雲にテンポアップするんじゃなくて、むしろスローモーションで細部まで描写するような筆運びが斬新。
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なかなかいろいろ考えさせる小説.竜だとか鬼だとかが出てきて,何のアレゴリーかを考えてしまうが,あまり考えない方が本のテーマには入っていけそう.
記憶(あるいは忘却)と赦しがそのテーマか.忘却がなければ赦しはないし,忘却をすれば記憶を取り戻したく思い,そして過去の記憶は赦しを導かない.この関係が個人対個人,民族対民族と多層的に絡み合っている.難しい問題.
私自身,あるいは日本ののまわりをみても,同じ問題はたくさんある.私が惚けてすべての過去が忘却されるとき,真のやすらぎが訪れるのか.
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英流ファンタジー?歴史?英雄譚?恋愛?結局どんな枠組みにも入らないというのがカズオ・イシグロのすごさなんだろう。400ページを超える分量を一気読みさせるストーリー展開と3人称と一人称を巧みに絡み合わせる技法で読み手をも絡み取られたような気がする。
ファンタジーや歴史ものには共通して、その世界観や場面展開を理解していないとついていけない。アーサー王が崩御してしばらく経った頃の魔法や竜が存在する、つまりなんでもありの場面設定がちょっとご都合主義的でもある。あのころのイギリス、ブリトン人やサクソン人の関係は勉強不足で分かりにくい。
霧が記憶を消していく中、最後まで残ったものは何だったのか・・・うわぁ~ネタバレしたい~
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記憶の問題、かみ合わないコミュニケーション、信頼と憎しみ。読み進めるのは、決して楽ではない。しかし、象徴と寓意を考えずにはいられない。「お姫様」という呼びかけが、優しさに満ちている。
ゆれる主人公が最後、きちんと待てる人になれる、というのが、まさに象徴的。
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う〜つまらん。
途中でリタイア。
神秘的なファンタジーで本来好きなジャンルのハズなんだけど、続きを読む気がしない。
あまり印象に残るシーンがないからかな。いくら文体とか描写とか雰囲気が良くても面白くなければ最後まで読む事はできません。
よく半分も読めたなぁと思うくらいつまらんかった。
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今までの カズオイシグロの作品と比べると
評価は低くせざるをえない。
中世の イングランドを舞台に
過去の記憶の多くをなくした
老夫婦が旅にでる。
ドラゴンあり 鬼あり 妖精ありの不思議な世界。
そして明らかになる過去。
それなりに読ませるし、どうなるのか予想がつかない展開を最後はまとめる 構成力はなかなかのもの。
しかし 記憶することの意味。
民族の対立。
憎悪を記憶し、それを持ち続けることなおどの
概念が十分咀嚼されていない感じで
いろいろと中途半端になってしまった感じで
残念。 多分 ドラゴンや妖精や騎士など
作者なりに 何かの隠喩なのだろうが
いまひとつ 響かず
多少読みづらかった。
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初のカズオ・イシグロでした。
うーん、この作品中にも霧というものが出現しますが、最初はおぼろげな、登場人物やストーリーでしたが霧が晴れるようにが集約されて行く構成に夢中で読んでしまいました。
でも完全には晴れないんですが(笑
最後をどう解釈するか少し戸惑いながら、記憶というものについて、人間について、色々と考えさせられる作品でした。
他の作品も読んでみます。