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私には難しい部類の本だと思うのに,なぜか先が気になってしまいながら読んだ。すごさなのだろうか。こういうことが言われているんだろうなぁということが何となく分かった気がする読後感。
アーサー王といった知識がなくても楽しめる,と書かれていたけど,知識があった方が断然おもしろいだろうなと思う。
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ファンタジー
アーサー王のちょっと後の時代。
だがそれはそういう設定であるだけ。
本質はすべての時代の物語である。
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舞台となるのは、六世紀か七世紀ごろのイギリス。この地域を300年ほど支配したローマ帝国が勢力衰退によって引き上げ、土着のケルト系民族であるブリトン人と、新しく今のドイツあたりから移住してきたサクソン人がそれぞれ別々に村をつくって住んでいる。川や沼地には冷たい霧が立ち込み、鬼の隠れ家になっている。地面は耕すに固く、病気も流行する、厳しい世界だ。
主人公はアクセルとベアトリスというブリトン人の仲むつまじい老夫婦。村からはろうそくさえ取り上げられるほど冷遇されているが、二人で懸命に助け合って暮らしている。この二人が、長らく会っていない息子の住む村を目指し、旅に出るところから物語は始まる。とはいえ息子の顔や声さえさだかではない。この国は「健忘の霧」に蔽われていて、二人だけではなく、みな数日前のことさえ忘れてしまうのだ。
旅が進むにつれ、じょじょに世界の広がりが見えてくる。かつて大きな戦争があったらしいこと。悪鬼や獰猛な烏が増えて、どうやらこの国はだんだんと悪いほうに傾いていること。そして、クエリグという雌竜が吐く息こそが「健忘の霧」の正体であるらしいこと。
そしてサクソン人の旅の戦士ウィスタン、故アーサー王からクエリグ退治を命じられた老騎士ガウェインとの出会いにより、二人の「息子を訪ねる旅」はいつしか「クエリグ退治の旅」へ、すなわち「世界の謎」にかかわる活劇へとスライドしていく。
ファンタジー要素が注目されているが、本書の本質はミステリーだ。戦士にも、騎士にも隠された本当の使命がある。アクセルは昔、二人に出会っていて、ただの農夫ではなかっただろうこともほのめかされる。しかし、なにしろこの国には「健忘の霧」が立ちこめているのだ。「信用できない語り手」しか登場しない世界を、読み手は老夫婦とともにさまよい歩かなくてはならない。
謎は、老夫婦の間にももちろんある。そもそも二人が「息子を訪ねる旅」から寄り道するきっかけになったのは、ある船頭の話を聞いたから。長年連れ添った夫婦でも一人ずつしか渡してくれない不思議な島。その島で二人で幸せに過ごすには「一番大切に思っている記憶」について、別々に答えなければならない。この話を聞いて不安になったベアトリスは、どうしても記憶を取り戻したくなったのだ。しかし、思い出したくない記憶だって、長年連れ添った夫婦のなかにはある。時折、不実の影が顔を出し、不穏な空気を漂わせる。
一方、世界最大の謎は、かつての大戦争に関わること。「わが敬愛するアーサー王はブリトン人とサクソン人に恒久の平和をもたらした」と語るガウェイン卿に、「偉大な王はどのような魔法で戦の傷を癒やされたのですか」と尋ねる戦士ウィスタン。もしかしたら「忘却の霧」こそが、その要にあるのではないか――。
歴史というものを「民俗の記憶」ととらえたとき、「思い出したくない」ことを忘れてしまっていいのか、その忘却が何をもたらすのか。ファンタジー仕立てになっていることで、かえって「現代」を思わせる物語になっている。
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読むのにすごく時間がかかった。最後の100ページくらいで主題のようなものが見えてきたがそこにいくまでの300ページはなんだったんだろう、、という感じ。
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カズオ・イシグロの最新作で、「私を離さないで」以来10年ぶりの大作。アーサー王伝説をモチーフに、7、8世紀のイギリスが舞台のファンタジー。
竜や鬼や妖精が出てくるが、どれも気味が悪い。竜の息で、辺りに霧が漂い、人々の記憶が消えてしまう。ブリテン人とサクソン人、人種が違うだけで憎しみ合い、血の争いは終わらない。
物語は結局、最後までどんよりしていて、よく見えない。細かい部分は霧の中。戦いの悲惨さ、無意味さは明確に描いている。今の世でも繰り返す争いへのメタファーと受け止めた。
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イシグロが描くイギリス伝統のファンタジー。アーサー王伝説をも受け継ぐローマ時代のイギリス。
息子に会いに行く年老いた夫婦の旅立ち。
さまざまな出逢いと戦い。
新たなイシグロの世界観。
素敵です!
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竜、鬼そして妖精などが跋扈し、ブリトン人とサクソン人が対立する6世紀頃の英国を舞台にした冒険ファンタジー。主人公である老夫婦の葛藤が恋愛小説としても読めるところも面白い、著者と同じアラカン世代なら楽しめること請け合いです♪
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忘却の霧に包まれている世界で、息子に会うため旅に出る老夫婦。
記憶・歴史の積み重ねの上に今があるのに、霧に包まれるとこんなにも足が地に着いていない感じがするのかと。。
不安が絶えずまとわりついて離れず、その不安を払拭したくて読み進めたものの、余韻を引くラストでなんとも言いがたい読後感。
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文学作品は著者と自分との個人的な関係なのだが、
読了後にもやもやとした時はついつい
書評なり解説の類の周辺情報をあさってしまう。
巻末の早川書房編集部による解説に記載の
“The New York Times (http://nyti.ms/1wjJWNh)”、
“ The Guardian (http://bit.ly/1EC8N03, http://bit.ly/1GjQqyy)”と
“The New Yorker (http://nyr.kr/1EtG22J)”をみてみた。
1 本のリポートと肯定的と否定的な書評が 1 本ずつの
The New York Times がいい感じであった。
Ishiguro さんには申し訳ないが、
今回はMichiko Kakutani (http://bit.ly/1JiNp4z) さんの
review が一番良かったように思う。
早川は当然 Neil Gaiman (http://bit.ly/1Nw7FNy) みたいだが。。。
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待望の長編。「わたしを離さないで」から、もう10年もたったのか。
ファンタジー仕立てということを知り、あ、ダメかも、と思ったが、やっぱりダメだった。
最初の方と最後の方はしっかり読み、ラストは衝撃だったが、間の冒険譚、さまざまなものや人との出会いなど、きっちり読めていない。悲しい・・・
ラストを知り、もう一度読み返せばいいのだが、その気も起きない。悲しい・・・
実は「わたしを離さないで」も、評判は高かったが、私はあまり好きではなかったのだ。
もうカズオ・イシグロ好きとは言えないな。悲しい・・・
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初読。図書館。一作ごとに異なる手法で描くイシグロさんだが、今回は歴史ファンタジー(?)。いろんなテーマが盛り込まれているが、個人的には民族対立と憎悪の連鎖の側面が、普遍的でありながら現代的なテーマとしても、興味深かった。老夫婦の会話で奥さんに必ず「・・・、お姫様。」と語りかけるのがじわじわと効いてきてよかったな。
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カズオ・イシグロ新作、言葉の使い方・考え方において同時代の中でも最もリスペクトする作家。
古いおとぎ話か前世代の物語のように思えて、実は現代・近未来を描いていることに気づかされる手法は前回同様。
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『昔ながらの不平不満と、土地や征服への新しい欲望---これを、口達者な男たちが取り混ぜて語るようになったら、何が起こるかわからない』
イシグロ・カズオの新作は相変わらすどこかファンタジーのようでいて実際には現実の社会を色濃く映し出したような手触りがする。「わたしを離さないで」もそうだったように。穿ち過ぎであるかも知れないけれど、少なくとも自分にはこの作品が、基本的にはラブストーリー、とは思えない。憎しみの負の連鎖。ハムラビ法典の時代から絶えず繰り返されてきた、それをどこで絶ち切るのが正しくどこからが過ぎた報復であると言えるのかというテーマ。アーサー王の時代のイングランドに舞台を設定したためか、遠すぎず近すぎず、現代を重ね合わせることができるように思えてならない。またその時代であれば、宗教的な対立の構図に拘泥しすぎることもない。その舞台の中で、許しに対する問い掛けが通奏音のように響き続けている。
ある民族と別な民族の争いと融和。そしてその和平協定に対する裏切り。大きな物語としてはそんな構図の上で繰り広げられる伝説的な一匹の竜を廻る冒険譚。すらすらと読んでしまうと、これはイシグロ・カズオによる指輪物語のプロローグかとも見えてしまうような話であるけれど、ここにあるのは勧善懲悪の物語等では決してなく、弱った竜に託されていた幸福と、その息の根を止め為されようとする正義との相容れないものの対立の物語なのだと思う。そして、そんな大きな正義の物語の直ぐ隣で、忘れられた過去を恐れお互いの許しという問題に向き合う老夫婦の物語が並走する。この一つのテーマを全体レベルと個人レベルの両方から描いて見せるところにも、どこかしら現代社会の縮図のような隠喩めいたメッセージを読み取ってしまいがちだ。
忘れられた巨人の意味するものは最後に明かされるが、その巨人が深い眠りから目覚めるか否かは明かされることなく物語は幕を閉じる。同胞の少年に負わされた重荷は単純にその巨人の怒りの中で解消するようには見えないし、擬似的なものであるにせよ、幾つかの家族的な関係を全体正義の中でどう捉えるか、読むモノ一人一人に考えて見るように問われてもいる。そして、最後に老人は許しを得たのか否か。その謎を残して物語を終える巧みさが、自分がイシグロ・カズオを鋭い社会批評家であると思う理由なのである。
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人間はどのようなことを記憶して、どのようなことを忘却するのか、またいつ忘れたらいいのか、いつまで忘れてはいけないのか、そうしたテーマは今戦後70年の節目を生きる我々日本人にも大きな意味をもたらすと思った。図らずも安倍首相が語った、「こどもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と語った。そのために我は我は何が出来るのか。忘れるわけではな、記憶し続けておくことが必要なのだが、でもその記憶とどう向きあえばいいのだろうか。
この本を読むこと答えが見つかる訳ではない。しかし、何かを考えるきっかけにはなる。何かもやもや感のある読書感覚は記憶を曖昧さを感じることにもなる。不思議な読書体験ながら、ずしりと重い。
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たまたまチャンスがあったので読んだものの、ちょっと長かった…。記憶を消す霧、鬼、騎士、竜、妖精、修道士などファンタジーは嫌いじゃないけど、終盤はなんだかわからなくなり眠いままページを進める始末…。