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歴史は誰の立場から捉えるか、誰の立場で編纂されたか、でまったく違う物語になる。
それでも、ある立場から、ある期間を俯瞰して見た歴史というものには、さまざまな立場を越えて理解をさせ得る力があることを感じる。
戦争の歴史には、戦争というものの持つ力の強大さが絶対的なものとして存在する。
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内容の重さもさることながら、記述が細かくて、読んでいてとても疲れる。ちょっと間を空けて中巻に取り掛かろう。
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1939年ドイツ軍のポーランド侵攻から1945年原爆投下による日本の無条件降伏に至るまでの第二次世界大戦を編年体で書き綴ったノンフィクションの労作である。一冊約五百ページが三冊という量にまず圧倒されるが、よく知られる政治家や軍人にスポットをあて、映画にもなった作戦行動を実際その場にいた人が残した手紙や特派員の記事といった資料を駆使し、ドキュメントタッチで書かれているので、厖大な分量ではあるが、読物として読むぶんにはさほど苦痛ではない。
日本にかかわる部分から類推するに、これだけの量をついやしても実際の戦争のごく一部についてふれただけであることは分かる。それでも、北アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、北アフリカ、アジア、オセアニアとほぼ世界中を巻き込んだ第二次世界大戦の規模の大きさと、そこで起きた人類史上かつて類を見ない惨劇と愚行について想いを寄せるには頼りになる書物だろう。
まず、戦記物が好きな人にはノルマンディー上陸戦争や、マーケット・ガーデン作戦といった映画にもなった有名な闘いを、政治家同士の駆け引きや功を焦る軍人同士の嫉妬や羨望といった心理を小説さながらの筆致でぐいぐい書いてゆく著者の手法に少なからず満足するのではないか。もっとも、人物の造型にかなり個人的な好き嫌いが目立つ。映画では英雄扱いされることの多いあのベレー帽の戦車乗り、モンティことモントゴメリー将軍が、大言壮語する割りに攻撃には慎重すぎるとくどいほどくさしているし、敵将である砂漠の狐ことロンメル将軍などは、ヒトラーの寵愛をいいことに作戦本部の思惑など端から無視して突っ走る、とんでもない自分勝手な人物になっている。
日本の戦争映画などを見ていると一応陛下の御裁可は仰ぐものの作戦は軍人が立てているように思うのだが、チャーチルなどはさかんに作戦に口出ししているし、スターリンもヒトラーも同じだ。ローズヴェルトは、どちらかといえば政治家らしく後の国際連合を考えて行動していて、実際の戦闘はアイゼンハワーに任しているように見える。もっとも、マッカーサーは戦時中大統領選の宣伝を盛んにやっているし、そのライバルであるアイクが戦後は大統領になるのだから、政治家と軍人の境界は曖昧である。スターリンもヒトラーも、その猜疑心の強さや自己陶酔のあまり現実感を失ってゆくところなど、人間性については否定的に描かれるが、人たらしの外交力や統率力など、戦争に際して必要とされる力は卓越している。日本では、およそ人心掌握の才もなければ指揮能力もなさそうな政治家が防衛論に口を挟むが、いざ戦争ということになったとき、果たして彼らにその役が務まるのだろうかと正直これを読んで心配になった。
著者が繰り返し注意喚起するのは、戦争がもたらす被害である。都市の消滅や兵器の破壊といった物的資源はもちろんのこと、大量虐殺、兵士による略奪、強姦、戦火によって奪われた食料の枯渇による飢餓、さらにはそこから起きる人肉食、と聞いてはいたが信じられないほどの行動が暴かれている。慰安婦や南京大虐殺といった日本軍の過去に異常に神経を尖らせている現政権であるが、世界的ベストセラーとなって全世界に翻訳されている本の中に、それがどうした、と思ってしまうほどの事実が記されていることを知っているのだろうか。
日本では大手マスコミは腰が引けてしまっていて、政府に都合の悪い内容の報道は口を閉ざしているし、テレビには日本礼賛の番組が目白押しである。まさかそれが多くの人にそのまま受けいれられているとは思わないし、思いたくもないが、バランスをとるために、たまにはこうした本を読んでみるのも悪くないのではないか。著者の姿勢は無論かなり英国よりである。ただ、次のような箇所には、公平な視点が感じられ、なるほどと思わせられる。
「アメリカの潜水艦部隊による海上輸送路の破壊は、絶大な効果を及ぼした。日本は護送船団システムの確立に着手したばかりだし、輸送船の数からして少なかった。それは主に、帝国海軍がもてる資源を主力艦の充実にあてることを好んだせいである。しかしその結果、東京の大本営に見放され孤立した日本軍部隊は、降伏することだけは許されないのである。そして、「現地調達」でひたすら頑張るよう求められた。それはつまり、補給も増援部隊もいっさい期待するなという意味である。日本軍の戦死者一七四万人のうち、一〇人に六人は病死もしくは餓死だったと推計されている。外国人に対する日本軍の戦争犯罪がどれほどの規模だったかはともかくとして、大本営の参謀たちは、まずは自国の兵士に対しおこなった犯罪行為によって、当然糾弾されるべきであろう。だがしかし、かれらのような体制順応型の社会では、それを敢えて問題視することは、想像を絶する事柄なのである。」(下)
蛇足ながら、訳者の苦労は察するに余りあるが、戦記物には普通なのか知らないが、軍事用語と思われる見慣れぬ漢語が続出するのには閉口した。もっとも、マニアにはそれがこたえられない、ということもあるのかもしれない、と分かってはいるのだが。(中・下巻を含む)
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決断の遅れと悪い結果の因果関係が強すぎる。
読んでいるうちに日本に肩入れしてしまうのが人として悲しい。
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ナチス・ドイツのポーランド侵攻から始まる第二次大戦の記録。上巻はモスクワの戦いと日本の南方進出まで。指導者(ヒトラー、ムッソリーニ、ルーズベルト、チャーチル)など、主要な登場人物はもちろんだが、軍幹部クラスや政治家などの言動まで非常に細かくリアルに描かれていて、ページ数は膨大なのだが読み飛ばせない魅力がある。日本とアジアの関わりはよく読んだが、欧州戦線は未読だったので非常に面白い。枢軸国と連合国の戦いというのはあまりに複雑で人間臭い事実がそこにはある。
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アジアではノモンハン事件、欧州ではドイツのポーランド進攻から始まる第二次世界大戦。
刻々と変化していく戦況、各国首脳部の思惑や外交上の駆け引きなどの大局的な部分はもちろん、戦地の兵士たちや戦禍に巻き込まれる市民の手記・証言も多く引用されておりリアルな戦争の空気が伝わってくる。
常に局面のカギを握るのはヒトラーとスターリン。
二人の極端な独裁者に自国民、自軍だけでなく世界中が翻弄されているようにすら感じる。
チャーチルが待ち望んだアメリカの参戦により戦局がどのように展開し、各国がどう舵をとるのか中巻もじっくり読み進めていきたい。
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淡々と丁寧に第二次世界大戦のはじまりから描写されていく。ドイツの戦争の始め方、ポーランド侵攻、フランス、イギリス、ロシアへと戦争を拡大していく様は狂気だ。並行して日本は満州を舞台にロシア、中国と戦い、やがて真珠湾攻撃へと向かう。2度と戦争を繰り返さないためにも第二次世界大戦を知る必要がある。読み応え満載です。
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その分厚さ(上中下の上だけ)で圧倒されたがエピローグのストーリーを読むだけで引き込まれて一気に読み切る。数ある名文の中から、最も恐ろしく感じた部分→「最終的解決」の発動がいつ決定されたのかはさまざまな歴史家が読み解こうとしたが不可能だった。一つの民族を絶滅させるというこの運動は、国家のトップからの記録に残らない形での奨励によるものではあったけれど、同時にそれはさまざまな殺戮集団がそれぞれの現場において行った実験や、互いに統制の取れていない試行錯誤を経ながら徐々に形成されたものだからだ。
ドイツ陸軍の「訓令戦術」も将軍が降りてくるのは大方針でそれらを現場の指揮官が臨機応変に任務化し実践に活かすからこそ組織は有機体として動ける。