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美苗は地方都市で校正を仕事にしている。
つまらない印刷物だと思っても、自分の仕事に誇りを持ち、一生懸命やってきた。
しかし、独身貴族とまではいかない。
毎日がやりがいと虚しさで包まれている。
そんな中、彼女は理想的な男性、葉山と出会う。
完璧な男、シックで、知的で......。
しかも彼は結婚を前提にして美苗と付き合うというのだ!
しかし、そんなめでたしめでたし、のわけがない。
彼が呼ぶマリという女。
彼女は人格破綻者だった。
愛した男を苦しめる恨みがましい女。
美苗はこの女を抹殺することにする。
ホラーと呼ぶべきだろうか。
せまりくるマリの恐ろしさ、そして、人々の豹変。
人間とは恐ろしい。
脇役ではあるが、美苗の義理の妹、絵津子が私はとても好きだ。
レディース上がり、高校中退、自分より一回り下の絵津子を美苗は好きではない。
彼女の娘(美苗の姪)は知的で恥ずかしがり屋で読書家で、全く両親に似ていない、と美苗は感じ、親近感を持っているのだが、義理の妹は金を要求してくるばかりで好きになれないのだ。
ところが、人は必ずしも学歴で判断はできない。
エリートと不良、単純な対比ではあるが、「筋を通す」「人を見る目」という点では美苗は絵津子に及ばない。
何より素直で裏表がなくて気持ちがいい。
マリは愚かであったかもしれない。
美苗もそうだ。
だが、人を愛するということは愚かで、悲しくて、それゆえに純粋なものなのかもしれない。