紙の本
紫式部が探偵の平安推理物
2015/08/28 09:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
源氏物語の成立(と幻の帖)を絡めた前作に続くシリーズ第2段の文庫版です。
ずいぶん前に発売された単行本も持っているのですが、文庫で読み返したいと思い、「待ってました」と購入しました。
(現在、さらにシリーズ続編となる、【望月のあと 覚書源氏物語『若菜』】も単行本で発売されてます)
平安ミステリー、しかも有名な紫式部(香子)が主人公…という、下手したら薄っぺらな「なんちゃって平安物」になりそうな題材が、「もしかして本当にこんな事があったのかも?」と思わせる、リアリティーを感じさせる上質のエンターテイメイントに料理されてます。
今回は、紫式部日記の成立と(中宮定子亡き後の)中関白家周辺が描かれており、このあたりの時代が好きな人は楽しさ倍増だと思います。
教科書などでおなじみの道長、彰子(道長の娘)、清少納言、(定子の忘れ形見)脩子内親王・敦康親王、和泉式部などはもちろん、前作で式部のワトソン役だった侍女の阿手木と夫の義清も大活躍。
様々な階級、状況の登場人物達が、縦糸と横糸のように交わりながら生き生きと描写されている点も読んでいて面白いです。
推理物としてのプロットは少々弱い印象ですが、一気読みさせる楽しさがあると思います。
4作目(続編)、単行本後書きから期待できる雰囲気ではあったのですが、なかなか新刊がでず…待ってます!
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一作目の存在を知らず、こちらを先に読んでしまいましたが、これはこれで完成している話でしたので問題なく楽しめました。でも人物関係などを楽しみたいのであれば、順番通りに読んでいたらよかったのかも。
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時は平安。人々の注目を集めるひとりの女性がいた──その名は紫式部。かの『源氏物語』の著者だ。実は彼女は都に潜む謎を鮮やかに解く名探偵でもあった。折しも、帝が寵愛する女性が待望の親王を出産、それを祝う白一色の華やかな宴のさなかに怪盗が忍びこみ、姿を消した。式部は執筆のかたわら怪盗の正体と行方に得意の推理をめぐらすが……。鮎川賞受賞作家による王朝推理絵巻。著者あとがき=森谷明子/解説=細谷正充
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源氏物語を書いた背景の1巻と続けて読みましたが、紫式部日記を背景にしたこちらも面白かったです。謎そのものの不思議も良いのですが、式部はもちろん端役まで登場人物の人柄や間変え方、人間関係が実に生き生きとしてます。上つ方々の悩み、下々の悩みが今の世界とそう変わりなく身近に思えます。3巻も楽しみです。
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探偵・紫式部第二弾。こちらは紫式部日記のでき方をベースにした物語。
物語の本筋の推理もおもしろいけど、
紫式部の周辺を取り巻く部分もびっくり。
綺麗に張られた伏線が見事に回収されててすっきりした。
そしてやっぱり道長は憎らしい。
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最近の「探偵もの」は予想も付かない人物を探偵に据える。
この本を手に取るまで、まさか紫式部が探偵役になるとは思ってもいなかった。
そもそも私は、(非常にどうでもいい話ではあるが)紫式部という人物を好ましく思っていなかった。清少納言のほうが好きだし、和泉式部も紫式部よりは好きだ。なんとなく「一の字も書けない振りをするいけ好かない女」というイメージが先行してしまう。和歌でも、機転の利く清少納言や感情を揺り動かすような和泉式部、そして品があり優雅な赤染衛門のほうがいい。もちろんこの3人も登場する。
式部の君(紫式部)は道長の娘彰子の女房の一人として宮仕えをすることになる。時期としては清少納言の仕えた定子は亡くなっており、彰子がまさに帝の子を出産するというころ。女房たちの様子を日記として纏め上げる役を式部の君は与えられる。源氏物語も世に出ており、文才を買われてのことだった。そんな中、都に盗賊が現れる。その盗賊は、式部の君のいる邸宅に忍び込んだ。しかし彰子の出産のため、人が多く出入りし宴が催されるなか誰にも見られずに姿を消したらしい。道長からの依頼もあり、この謎を追いかけるが…。
平安貴族って面倒くさいんだな、と思えるような回りくどい話し方。さりげなく何気なく引き出した言葉から真実を突き止めていくというのはかなり新鮮だった。
しかし時代設定もあるが、かなりグレーな落としどころになっている。ほんのりもやもや。
赤染衛門はとても嫌な女性だったが、和泉式部や清少納言の描き方は好ましかった。意外と紫式部と仲良くしているので「あれ、紫式部日記と書いてること違う」と思ったら、そうかなるほど、というオチがあった。この発想は単純にすごい。女房たちそれぞれの日記を繋げて「紫式部日記」となっているのね…。なるほどでした。
でもミステリーとしては個人的にはもうひとつかなあ。
天上人の雅やかな世界は九州の雑な人間からしたらまどろっこしいや…。
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心に食い込んでくる源氏物語の力、というものを、思い知らされました。本を読むのは好きなほうですので共感できなくもないですが、残そうという強い気持ちを掻き立てられる作品なければ、こうして伝えられて来たかどうか。
それが現代でも、スピンオフ作品と言える物語を生み出す、すごいと思います。なにせ千年ですからね。
と言いつつ、単純にそれだけではないとも思います。忘れたくないのは、今、ここにいる人間に、前作に続けて「購入」させて「読ませる」ているのは、疑いなく作者の力なのだということ。それも意識していたいし、物語を作ってくれた存在には、感謝をしたいものです。それが千年前のひとでも、現代のひとでも。
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