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SF。短編集。
「逆行の夏」「さようなら、ロビンソン・クルーソー」は既読。
全体的に高品質。美しい。あとエロい。
特に、目と耳に障害を持つ人々だけの世界を描いた「残像」が素晴らしい。とても感動した。
奇妙なSFミステリ、「バービーはなぜ殺される」もミステリファンとして高評価。
あと、帯の円城塔さんの紹介が最高すぎます。
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初ジョン・ヴァーリイ。「残像」はよくこんな話を考え付いたなぁと感心。「ブルー・シャンペン」はQ・Mが不憫だけど最後の一言にグッとくる。「PRESS ENTER ??」は、結局、なんなのー!どの話も面白かった。
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特異な世界観と、どことなくセンチな余情が残るSF短編集。物語の雰囲気をつかむまでに苦戦した短編もあるにはあったのですが、その世界観や人間関係であったり、あるいは「ここでない世界」に対しての、切ない思いが印象的です。
収録作品は6編。
表題作『逆行の夏』はストーリーはもちろん、SFならではの描写が印象的。水銀の湖と洞窟が、太陽の光を照らし返す情景なんかは、美しさを感じるとともに、SFの想像力の豊かさも感じます。
ストーリーとしては、クローンの姉との再会であったり、身体の改造や性別の転換ですら、簡単に行える、という技術背景が描かれ、なかなかのハードSFらしい雰囲気。
そのため、ややとっつきにくさはあったものの、技術や世界観の面白さだけに頼らず、技術では変えられない家族の関係性に焦点を当てた、暖かさが印象的な短編です。
世界観でもっともインパクトがあったのは『バービーはなぜ殺される』という短編。「統一教」という男も女も性別関係なく、すべてバービー人形のような顔、身体に整形した宗教団体で起こった殺人事件。捜査は被害者、容疑者、目撃者全て顔が同じな上、思想や思考まで一緒という状況に困難を極め……
この設定だからこその、展開の持っていき方や、動機の異常さなどが見事! 統一教の教義や始まりについては、触れられていたけど、それぞれの個人が、統一教のどこに惹かれたのかは、あまり詳しく書かれていなかったと思うので、少しだけ感じたことを。
他者とまったく同じになるというのは、みんなと同じ、自分は異質じゃない、という安心感があるのかなあ、という気がします。そういう意味においてはユートピアとも感じる人もいるのかもしれないけど、そういう思考に対するアンチテーゼとして、この短編は書かれたのかも。
また改めて読んでみると、印象が変わりそうな作品です。
『残像』もある意味ではユートピアのお話。経済不安によって社会が不安定となり、それぞれが小さなコミュニティに分かれた世界。その小さなコミュニティを渡り歩き旅をする男は、ある日、視覚・聴覚ともに不自由な人たちが中心となって運営されている町を訪れる。
音声、文字が認識できない人たちが、どうやってコミュニケーションを取り、文化を維持、発展させるか。現代のパートに、時折過去のパートが挟まれ、現在の実際的な状況と、過去のコミュニティが成り立つまでの歴史や理念までも語られます。
視覚や聴覚などあらゆる情報にさらされる人々と、そこから離れ、独自の言語文化や考え方を発展させていった人々の対比としても読めるかも。思考実験的な部分と、物語のテーマ、そしてここではない世界や文化への憧れが共鳴し合う、こちらも印象的な短編です。
アメリカではいくつもの賞を受賞した作品みたいですが、それも納得の出来。
ユートピアの話はもう一編。少年と一人の女性の出会いが描かれる『さようなら、ロビンソン・クルーソー』は、ユートピアの終わりと共に、一つの時代の終わりの寂しさや郷愁と、新たな決意や爽やかさも印象的な短編でした。
���定自体は特異で作り込まれたものが多くて、話にスッと入れるかは、人によって分かれるかもしれません。
でも一方で、そういった世界を描きながらも、どこまでも変わらない人間の憧れや哀しさを、表現した短編集でもあった気がします。