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人の心理の描写には、もちろん清武の相当な脚色が入っていると思う。だが、現実にあった会社破綻の活写、一人一人の緊迫感のフラッシュは、ビジネスパーソンの惰眠と惰性にインパクトをあたえてくれるであろう。
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とても興味深く読んだ。山一證券の破たんは21年前になるが、衝撃的でリアルに記憶に刻まれている。当時、バブル後の経済、特に不良債権に耐えられずに倒産した金融機関が相次いだ。とはいえ、破たんしたのは主に地銀や信用組合で、この4大証券会社のひとつの山一證券が無くなるというのは、驚きを超えていた。
経営破たんが発表された時点で、何万人という社員がいた。そしてほとんどの社員は、まじめに働き、会社のために尽くしていた。バブル期の強引な営業は、やがて不正に数字を操作してしのがなければ立ち行かなくなってしまう。本書では、破たんの直接の原因となった簿外債務がどのようにして作られ、誰に責任があったのか、ということを徹底的に調べた、倒産後会社に残って清算処理をし続けた7人の社員にスポットを当てている。彼らの調査方法、隠蔽工作など分かったこと、社員たちのその後の人生など。
会社というものは、規模が大きくなるほど、ごく一部の役員の判断ミスや責任逃れで、社員の運命が変わってしまうものだと改めて認識させられた。本件も、悪いのはごく数人で、その人たちは猶予刑で済んでいる。また、金融というのは本当に男社会だと痛感されられた。女性は秘書以外に全く出てこない。社員や投資家をだます詐欺をばれるまで続けて、ばれたら逃げ出す、もしくは自殺する。その中でも、責任感や使命感を持って事実を突き詰めようとする社員たちがいたのは救いだ。本書が面白いのは、著者が読売新聞から野球の分野にいた人で、さすがに元新聞記者ということでリサーチが徹底しており、文章も読みやすく、引き込まれる。当事者の悔しさもよくわかる。読んでよかった。
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株とか投資って、やってない側からするとすごくカッコいい、大人のやることだな〜と思っていたのだが、少しかじったらそうでもないかもと思うようになり、そういうときにこの本を読んだらそんな妄想はすべて吹っ飛んだ。
海千山千、魑魅魍魎が跋扈するこんな世界で自分の資産を増やそうというのは、博打とあまり変わらないのかもしれない。
要は資産だのお金だのって、増やす力はもちろん必要だけど、それ以上に守る力が大事みたいね。山一の重役たちのお粗末さを知り、心底思いました。
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山一證券破綻後に最後まで残り原因究明や精算処理に携わった社員たちのものがたり。これ、小説ではなく実際に起ったことなんですよね。。「上がそう言っているから…」という言い訳、内部のチェックを逃れる仕組み、それぞれの社員の野心。これは山一が特別なのではなく、どこでも起こりうることだなと感じました。
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著者の清武さんって、あの巨人でゴタゴタした清武さんやったんやね。同じ苗字やと思っていたが、まさか本人さんやったとは…。
バブル崩壊の一つの象徴である、山一証券廃業、その廃業までを支えた社員たちの物語。
何かを始める事もエネルギーがいるが、仕舞うとなるとこれまたとんでもなくしんどい仕事なのである。まして従業員数数千人、隠し負債数千億、当時世界最大の経済大国と言われた日本における4大証券会社を仕舞おうというのだから、後片付けをすることに対するしんどさといったら、想像を絶するものがあったと思う。
あの時、日本は金に浮かれる事に疲れ、何某かの戒めを持ったに違いない。勿論そのまま貧乏な国になるのが正しいこととは思えないが、無理してオリンピックだの万博だのと、シャブのような景気高揚策をやって、バブルが再来(そう簡単にするとは思えないが)したとして、また、彼らのようなしんどい仕事をすることになってしまうんじゃないだろうか?
この本は、仕事がらみで必要を感じて読んだのだが、こういうしんどい報われない仕事は、やっぱりしたくない。お金に振り回される亡者の生きようは怖いし哀しい、その怖さも哀しさも関係ない多くの人にふりまくのだから余計たちが悪いよなぁと思った次第である。
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TVドラマ化もされた山一證券破綻の内幕もの。
同じく世界を震撼させた米国のヘッジファンド、ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の経営破たんのドキュメンタリー(「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」(R.ローウェンスタイン著、日経文庫))を思い出しつつ、「山一」「LTCM」それぞれのドキュメンタリーとしての性格を比較しておく。
以下、ネタバレと感じる方もいるかもしれません、楽しみにされている方はスルーしてください!
一つ目、両者の差は人間ドラマか企業ドラマか。
「山一」は、会社が積み上げた膨大な簿外債務についての専門的説明にはあまり時間を割かず、むしろ泥船から次々と「エリート」たちが脱出する中、失業を覚悟しながら会社に踏みとどまり不正追及にまい進する企業戦士のドラマにフォーカスする(元上司を調査する苦しみ、無給のため住宅ローンを返せなくなる苦悩など)。
そして、日本人にとってなじみ深い「愛社精神か転職か、カネか志か」といった葛藤について語り尽くす。平時には報われない境遇を呪っていた非エリートたちがこの有事において「誰もが逃げたがった仕事を勤め上げる」、その背後にあったものを突き止めようとしている。合理性の議論では答えのでないことを探る、それがテーマと言えるかもしれない。
一方「LTCM」は、登場人物の魅力的なバックグラウンドももちろん簡略には紹介するが、むしろ破綻か回避かのそれこそラスト1日のギリギリの攻防にフォーカスする「会議モノ」活劇。また、「そもそもデリバティブって何?」みたいなところを歴史を振り返りながら一般読者に伝える技術はさすが。マーケット全体を守るために救済するか、優勝劣敗を貫徹するために破綻させるか、ここでは過酷なまでに「合理性」が問われ、そして同時にそれぞれの当事者の貪欲なまでの思惑のぶつかり合う「交渉」こそがハイライトである。
二つ目、個人的により印象に残るのは「ヒーロー像」の違い。
山一では、清算業務、社内調査を最後まで成し遂げた「12人」が決してその後恵まれた再就職を果たしたわけではないことを共感を込めて示唆しつつ、「真の働き甲斐」について問う。一方、「LTCM」ではこれだけ世界を激震させた中心人物たちが不死鳥のように再び金融の表舞台にも舞い戻ったそのバイタリティを、(もちろん幾分かの批判をにおわせつつも)概ね肯定的に描いていた。
黙々と報われない責任を果たしただ去る老兵、どれほどの挫折にあっても表舞台復帰への挑戦を止めぬ強烈な自負、どちらの中にも本当の意味で仕事に必要な何かが潜んでいるということだろう。
ほぼ同じ時期(1997-8年)に起きた2つの破綻の物語は、実は「日本的な働き方と米国的な働き方」の間に明確な線引きのあった最後の時代を映し出しているのかもしれない・・・。
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んー、ちょっと合わなかった。
ちょっと冗長な感じしますなー。
もうちょっと圧縮した方がダイナミズム出たような気がする。
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2016/4/9久しぶりに骨のある本にめぐりあえた。会社の破綻後、何の得にもならないのに真実を知るために立ち向かった12人。サラリーマンとして見につまされる箇所もあり。★4上
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しんがり。
97年社会人デビューした。
だから山一証券の破綻は未だ記憶に新しく、かつ新聞記事の見出しはまるでドラマのように思えた。
バブル。
高校生であったが社会に出たことにより、知り学ぶ機会も増えた。
山一証券の後処理に奮闘した人がいたこと。
当時、それに物語が光が差すこともなかったと記憶している。
社会人をこころざすうえで、忘却したくないことが『正義』。社会的に正しい行動を為すこと。
この書籍はその襟を正す内容である。
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会社が経営破綻し、多くの社員は再就職に向かったが、「山一證券社内調査委員会」の人たちは、崩壊した会社に踏みとどまり仕事をつづけた。損得勘定はせず、「誰かがやらなければいけなかったから」、彼らはとどまり、やるべき仕事を行った。
彼らは「幸せな会社人生だった」という。山一證券が経営破綻していなければ、「自分はきっと無批判、無自覚に会社人生を終わって」いたが、破たんを通して、「進んで貧乏くじをひく人間を仲間に得た」とのこと。
彼らの責任感や熱意に尊敬の念を抱かざるを得ない。
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自主廃業した山一證券の社内調査委員会を描いたノンフィクション。Amazonプライムにあったドラマを見て興味を持ったので読んだ。
内容はフィクションのドラマかと思うほど手に汗握るものだった。監査部門トップに着任した矢先に発生する些細な綻びから、会社の廃業へ一気に階段をかけ下り、その後の調査でその全貌が明らかになっていく。
「にぎり」は顧客第一主義の弊害ではないかとも思う。利回り保証は今でこそ絶対悪のようにも考えられるが、本質的に言えば経済が成長し続けるのであれば、わざわざ利回り保証などしなくても利回りは保証されるところ、それを契約として起こし、顧客の信頼を得ようとしたことが裏目に出てしまった。とはいえ元を正せば総会屋や国内の大企業を相手に引き下がってしまった結果の埋め合わせが連綿と続いているもので、こうしたものに会社としても毅然と立ち向かうことが必要だったのだろう。
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実話。大手証券会社が潰れるというショッキングな出来事として当時は話題だったらしい。結構読みにくいと感じてしまった。
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2020年64冊目。満足度★★★★☆ 山一證券の最後までとどまった12人の物語。私はそこに「美学」をみた。ドラマ化されており、こちらもオススメです。
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多少一面的ではあるものの、丁寧な取材による臨場感は読み応えあるノンフィクションにしている。
会社、サラリーマンとして一度は読んでほしい一冊。
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作者が新聞記者ということもあり、事実を客観的に淡々と書かれている。この文体が事実をよりリアリティに表現できている。ただ、考慮しなければならないのは、ものの見方が一方からしか描かれていないので真実であるかどうかは十分に見極めないといけない。