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役員までは上り詰められず子会社の取締役で定年を迎えたサラリーマン=「終わった人」の物語。定年後の亭主が家庭で邪魔ものになると言えば昔からありきたりの話だけど、大量に退職している団塊の世代が巷にあふれている現在が舞台のこの小説は、今現在かなりの人々の現状を言い当てているのかもしれない。主人公が東大法学部出の元エリート銀行マンであることや、中盤から主人公が30代の女性といい感じになったり、ベンチャー企業の顧問から社長になって倒産したり、終盤では奥さんと離婚寸前になったり、と、その辺は小説だから面白く波瀾万丈の生活が描かれていてあまりリアルとは言えないけど、定年退職した男性の落ちぶれ方とか、なかなかプライドが抜けない主人公の前半の描写は結構現実的だったように思う。自分もあと20年ちょっと。定年のある組織に所属しているという事実を認識しながら、自分の人生の楽しみ方についても真剣に考えていかねばと思った。
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今の心境にぴったり。結局、みんな入社して坂道を登り続けて、その坂道は、どこかでおわるんだよね。そして、下って行くんだよ。そんな当たり前のことを考えずにある日突然、終わった人になったら、突然死だ。この本を読んで、その日がいつの日か来ることを考え、その日が来ても動揺しないためにも、この本を一読する価値は、ある。自分は、事前にではなく、まさに宣告されて、呆然としているときに、偶然にも丸の内の丸善で、この本に出会い、むさぼるように読んだ。この本に出会えて、これからの人生を考えることが出来たことに感謝したい。終わったことを悔やんでもしょうがない。これからどうするか?突然死する時の山が高いほど、その落胆も大きいよね。いっそ、平社員で、定年まで会社に居られる方が、しあわせなのかな?
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内容(「BOOK」データベースより)
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。妻は夫との旅行などに乗り気ではない。「まだ俺は成仏していない。どんな仕事でもいいから働きたい」と職探しをするが、取り立てて特技もない定年後の男に職などそうない。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回す―。
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団塊世代が退職をするピークを迎えている。そのような人を主人公にリタイアしたその後、長寿時代になり第二の人生をどのように過ごすか、過ごしているか、準備が出来ているか等を問う作品。
サラリーマンで会社の中枢にまで上り詰める人は限られている。当時は誰もがある程度のポジションまでのぼり、そこでリタイアできると思って入社した世代だろう。しかし高度成長時代は去り、中年以降になると閑職においやられる、また子会社への出向、早期退職等が当たり前になってきている。
この主人公は出向、閑職に納得できず、しかしそのまま定年を迎える。ある日突然「毎日家にいる」という状態に陥るのである。プライドが高いと同世代の人と普通にコミュニケーションもとれない、こんなはずではないと納得できないのである。もう65歳になっても自分は若い、能力があると仕事を探したり、「恋」を夢見たり、「老年」を受け入れられない。あげく、膨大な借金を背負い込むことになってしまう。当然のことながら妻にも冷たくされ・・・
最近は老年の人々が元気で第二の人生をエンジョイしている風景を見かけるが、一方このうような人も多々いるのだろう。「醜態」としか見えない。歳をとると回りは自分より若い人ばかり、変に自分はえらいと思ってしまう人が多い。公衆の面前でそのような態度をとる高齢男性(なぜか男性が多い)をみかける事がある。自分を客観的に見れなくなってしまうのだろう。
ユーモラスな面もありながらシリアスな「悲劇」と感じてしまう作品だ。このような状況に陥る前にクールに自身を見つめ、早い段階から第二の人生設計をしておかなくてはならないだろう。
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女性の内館牧子さんが、終わった人こと、田代壮介の気持ちをよく書けるなーと感心。
これからは熟年離婚でなく、卒婚の時代になるのかな。
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定年後の身の振り方を考える作品である。
親を見ていてわかったことだが、仕事をしなくなったとたん、急に老化が進む。
自分はどのようにしていこうか。
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バリバリ働いて定年を迎えたが、穏やかな生活にソフトランディングできずに、請われてIT会社の社長に就任したが……。
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おもしろかった。誰でも共感できたりうなずかされたりしんみり考えさせられたりする話なんじゃないかなと思う。故郷への思いが良いなと思ったし,夫婦ってこういうものなのかなとも思った。
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「終わり」への準備はその年齢にならないとなかなか実感がわかないと思う。基本リアルで静かな展開であるため、読者の年齢によっては、全く響かなかったということもあるのではないだろうか。
自身に重ねて考えてみれば、厳しい現実を突き付けられたようで、特に前半は息苦しさも感じた。スパッとあきらめることは難しい。しかし、計画的に成功を生きることも難しい。それでもあがいて何かを掴もうとするのが人生なのかもしれない。少なくとも「一億総活躍」というような美辞麗句で説明できるようなものではないような気がしている。
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東大、一流銀行と、高層圏を飛んだエリートにとって、ソフトランディングすること(定年を迎えること)は、何とも難しいらしい。
自身とプライドと自意識過剰がまとわりついて、自らの身を縛ってしまう。「思い出」ばかりと戦っている65歳の男が主人公の物語。
『思い出と戦っても勝てねンだよ』とは、プロレスラーの武藤啓司さんの名言だそうだ。
恋に、仕事に、いろいろ足掻きながらも、一応ハッピーエンド?、なるようになって終わり、読後感は悪くないな。
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内館氏の本を読むのは初めてだと思います。
マスコミに露出している氏を見ていると、どちらかと
いうと苦手な部類のような感じを受けています。
この本については、読みやすく、どんどん読み進めれる
ます。
ただ、内容的には身につまされる内容で、読むのが少し
つらい気持ちになります。
まだまだ、自身として引退後や老の世界を認識
していないからかもしれませんが、あまりにも救いが
ないような内容に少し気分が悪くなりました。
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改めて内館牧子さんの凄さを知った想いです。
何を隠そう、妻も秘かに買っており、我が家にはこの本が2冊あります。これからは買った本は随時見せ合いっこすべきと思いました。
タイトルの「終わった人」は、定年後と言う意味に留まらず、深い意味を持ちます。定年を「生前葬」と断定する主人公、そう言う意味で、彼は私と真逆の人間なのですが、殆ど全てと言って良いくらい共感してしまいました。いや主人公に限定せず、周囲を含めた出来事や意見等々にです。そして女は怖い!とも思ってしまいました。
まだまだ六十代は先ですが、内館さんの描く定年後の主人公、かなり参考になりました。決して迂回路を求めている訳ではありませんが、未然に防げる状況はあるような気もします。本当にためになる大作をありがとうございます。
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「散る桜 残る桜も散る桜」
比較的、よく頭によぎる言葉であり、この本にも何度か引用されている。
帯には「定年って生前葬だな。こらからどうする?」とある。この本の主題は定年退職の話かと思ったが、どちらかといえば、比較的うまくいっていた会社生活が、徐々にコースを外れ、冷遇されたことの消化が上手くできなかったことをどう受け止めるか、というもの。
夫婦の関係も書き込まれていたが、こちらは、いまいちピンとこなかった。
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定年退職したエリートサラリーマンの退職後の生活を、現実の厳しさをデフォルメしてちりばめながら、鋭く描いた作品。面白かった。
こんなに恵まれた老後なのに、何をバタバタするのか、なんでそんなにいつまでも仕事やプライドに拘るのかと、前半は主人公に違和感を感じつつ読みました。後半からは一気の急展開で、楽しみつつも、考えさせられることが多かったです。
まだ退職まではしばらくの期間がある50歳くらいで読むと、この先の人生についていろいろと考えられるし、でもまだ方向転換も可能だし。本書を読むには適齢期ではないかと思います。
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東大・法学部卒、メガバンクに就職、役員になる寸前で子会社に移籍、エリートコースを外される。そして定年。子会社の定年前には年収1300万。退職時には自分の金融資産だけで1億5000万ある。定年後も「終わった」ことも受け入れられず、IT会社の社長を引き受けることになるが倒産。会社の負債を返すために金融資産は1500万に減り、妻とぎくしゃくする。最後は故郷に救われ、卒婚と称して別居して故郷に帰ると言う話である。
主人公の人物描写や心情、会社や夫婦のあり方、定年後に出会った周りの人々との関係、ものの見方など面白いところはたくさんあった。
思い浮かぶのは、確か漱石が言っていた「一生三円」という言葉である。結局、人生は総決算すると誰でも三円程度の値打ちしかないと言うもので、この小説も最後は誰でもあまり大差はないということがひとつのテーマのように思える。
それでも、主人公は十分恵まれた人であり、バブル時代にはさんざんいい目を見て、バブル崩壊後も優先して国から支援を受けていた銀行員のことだと思うと良い気持ちはしない。
IT会社が倒産するところでもそれほどのやり手の銀行マンであったのだったら、まともに会社の負債を肩代わりして返すなどと言うことがとても不自然に感じた。実際のところは財産はすべて妻に移してしまい、返済を逃れる手を当然のように採るのが普通だろう。
本の装丁に描かれている人物とはまるで印象の違う小説で、とても違和感が残った。