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「性格補強ワクチン」があったら打ちますか?
自分ならどうするか、打つとしたらどういう配合にしようかと考えながら読みました。
もちろんワクチンは高額で、まだ副作用もはっきりしないところがあり、効果は20年。
途中、フランスの企業の話として、フランス人は自分の性格が好きだから自分にワクチンを打とうと思わないが、周りの人に打ってほしいと考えているという分析が出てきたのが小説の中とはいえ、面白い~と唸りました。
日本人はおそらく自分のために打ち、人生や他人に勝ちたいと思うだろうなと想像できました。
私なら、打ちたいけど~と決断できず数年経ちそうですが、打つなら、自己肯定感+5、心の強さ+3、柔軟性+2かな。
そして、今の性格から脱し、好きなように生きる!!
夫が私に配合するなら、柔軟性、配慮力、工夫力、優しさあたりだろうな。ははは
私は周りを気にせず好き勝手にやりたいけど、夫はもう十分やってるよと思っているに違いないですね。
ワクチンの原材料が突然死滅して、経営者の翔子はパニックになります。
自分がワクチン1号被験者である翔子は会社の将来はもちろん、ワクチンが切れたら自分はどうなるのかと考えます。
結末はそうならざるを得ないかーと、無難な感じもしました。
ワクチンの効果が続いている状態だったら別の結末になったかもしれないなと、そちらの展開を想像すると面白かったです。
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どんな本かと思いつつ読み始める
ワクチン?
性格変更?
ピンとこないまま 文章力に惹かれて読み続ける
ああ なるほど 内容が頭の中で理解されていくに従って面白くなってくる
そして展開が変わる。尻切れ感がなくはないが
最後までキチンと読んで涙する良い本!
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自分の性格を変えてしまいたい。そうすればもっと幸せになれるはず。そんな願いを叶える薬が開発された。
多くの人たちが接種したが、まもなく薬効期間の20年を迎えようとしていた。
近未来の日本を舞台に、性格補強ワクチンをめぐるって繰り広げられる人間の欲望を描くヒューマンドラマ。
◇
20年前にマンションの一室からスタートしたワクチン製造会社・ブリッジ。性格補強ワクチン開発に成功したことで急激に発展を遂げた。
社長の加藤翔子も自らワクチン接種したことで決断力が強化され、会社の的確な舵取りができていた。
だが、ワクチン効果が切れる20年目を迎え、衝撃的な事案に見舞われる。培養していた微生物 RX というワクチンの主成分が死滅し始めたのだ。
500万人のワクチンユーザーの追加接種の時期は次々と迫ってくる。大きな決断を迫られる翔子。だが翔子自身、ワクチンによって補強されていた決断力が薄れだしていたのだった……。
* * * * *
人間は自分の性格的な弱点を認識しているものです。そこをなくせば理想的な自分になれ明るい未来が拓けるに違いない。誰でもそう考えるでしょう。
でも果たしてそれは本当なのか。実に面白いところに目をつけたと思います。
さてテーマの柱は2本ありました。
1本目は人間の弱さです。
本来、自分の弱点を少しでも改善しようと様々な努力をすることが人間的な成長に繋がるのであって、薬物により容易く(金銭的負担は大きいですが)手に入れたものでは真の幸福は得られないでしょう。
大人なら当然そんなことは承知しているはずなのに、つい楽な方法に流れてしまう。
2本目は企業倫理を保つことの難しさです。
企業が進めてきたことが間違っていたとき、経営者として何を優先し、どのような行動を執るべきか。そんな事態に直面した経営者で悩まぬ人はいないでしょう。
企業の意義は人々の幸福に貢献するところにあるのは疑いないことです。けれど、金儲けを追求するあまり、その意義を疎かにしてしまう企業(経営者)は多いのではないかと思います。
このテーマは企業サスペンスではよくあるもので、翔子が最良の選択をするというオチのつけ方もよくある理想的なものでした。
ただ翔子の選択が、ワクチンで強化した決断力が薬効切れで弱くなってからのものだっただけに、1本めのテーマをも踏まえたうまい展開だと言えます。
もう少し周辺の事情を丁寧に描いて欲しかった等の不満はありますが、桂望実氏のストーリー構成の巧みさが如実に表れた作品だと思いました。
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本の帯を見て、面白そうと手に取った一冊。登場人物が多くて混乱しつつも、どんな結末になるんだろうとドキドキしながら読みました。ワクチンを打てば幸せになれると思い込んでいた人たちもワクチンの効果が切れていくことによって自分の人生を見つめ直していくところが面白かった。元々決断力の無かった翔子がピンチに陥ってから下した決断とその後がかっこよくてスッキリとした読後感でした。
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仕事の成功、円満な家庭-ただ、幸せになりたいだけだった。加藤翔子は、20年前にワクチン製造会社・ブリッジを起こし、会社は大きな成長を遂げた。ブリッジが製造する"ワクチン"は、「人生を変えたい」と願う人間にとって必需品だったが、ある日突然、原材料が死に始める。原因は不明。ワクチンの効果は20年で切れるため、このままだと接種者がパニックに陥る可能性がある。だれよりもそれを恐れたのは、ワクチン接種第一号である翔子だった…
☆彡☆彡☆彡☆彡
年齢を重ねるたびに自分の弱さが露呈してきて、つくづく愛想をつかしたくなることが多い。”ワクチン”と聞けばコロナ禍がヒントになって書かれたのだろうと推測したが、すでにコロナ禍の前2018年に出版されていた。性格を補強するワクチンのアイデアに先ず感服。そんなワクチンがあれば、コロナワクチンと同等位の価値を持つのではないか。しかもこのワクチンXを打っている人がかなりいて、面接で接種者が優位に立たないようにという配慮もなされているなど、本当っぽい書きぶりだ。自分自身を肯定できない人が結構いるのかもしれないと思うと妙に安心できた。
私だったら、鈍感力を補強するワクチンを入れたいと思っていたら、本作中に鈍感力を最優先する人物が登場してきた。やはりそこなのか。若い頃はどちらかと云えば繊細さを望んでいたのに、年を経て鋭敏な感覚では自身が持たないと気づいた。
原材料が枯渇してしまい、一時的にプラセボ効果に頼ることで切り抜けたが無理な話というもの。(実際にプラセボ効果は証明されている)
面白い素材だっただけに、ラストはもう一歩踏み込んで納得できるものが欲しかった。
追記 20年前に初めてワクチンを打った接種者が効果が切れるとわかっているのに、2度目を打たないと決心している人が意外と多かったのに救われました。
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面白い!!
性格の負の部分が変われば、人生も素晴らしくなると考えてワクチン接種。
もしかしたら自分もワクチンなら簡単に考えてやってしまいそうな、でもよく考えると、整形と同じじゃないだろうかという、後ろめたさも感じる。
二十年後、ワクチンの効果が切れる時、どんな選択をするのか、興味深く読んだ。
自分らしく、生きたらいい。
短所も受けいれて。
どうかなるんだというドキドキ感と最後の結末に暖かさを感じ、少し前向きになれます。
おすすめ本です