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死を思う
2021/12/31 15:29
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投稿者:ユミユミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
輪廻やリインカネーションの思想の出現は、伝統社会に政治的、経済的な変動が生じ、より流動性の高い社会が出現した時期に重なる。遠い昔のことと思われた感染症パンデミックや、それによる死が意外と身近になってしまった今、こうした思想が再び顧みられるかもしれない。祖霊観念が衰退した現代には新たな神話が要請されると著者も書いている。
生まれ変わりの観念が、病人や遺族を癒す医療資源となる可能性があることを考えると、「生まれ変わり」を単なる絵空事とすることはもったいない。生まれ変わりの「事実認定」とは、複数の証言や証拠から引き出される最も合理的で有効な解釈であるという著者の言葉は納得できた。
さらに、死について問うことは「人間とは何か」「私はいかに生きるべきか」を考えることに通じる。ブッダやピタゴラス、プラトンなどの思想も紹介され、興味深い内容だった。
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五蘊について、私たちはいまある形に紡がれている状態であるという考えに感銘を受けた。超心理学のような領域は科学者から忌避される傾向が強いが、人に与える癒しの役割を輪廻転生の思想が大いに果たしている大切さを痛感した。
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タイの人は輪廻転生を信じている。そのため彼らはタンブンを怠らない。タンブンをすることにより転生を優位にするためだ。
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輪廻転生を”再生型”、”輪廻型”、”リインカネーション型”に分類し、それぞれの意味するものを考察している。意外だったのが、日本において”輪廻転生”という言葉が1990年頃から多く使われ始めたということ。オウム真理教絡みの報道や関連書籍が原因ではないかと思うのだが、著者はスピリチュアリティ文化の興隆とぼかしている。他には、ヴァージニア大学医学部のDOSPで前世の記憶が研究されており、生まれ変わりに否定的な立場の人達でさえその成果を認めざるをえないほど科学的、客観的な手法で研究されているのも意外だった。
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著者は1976年生まれで、東大文学部を卒業後、予備校講師などを経て現在東工大大学院の博士課程に在籍しており、宗教人類学を専門としている。
本書のテーマは所謂「生まれ変わり(=輪廻転生)」であるが、輪廻転生の真偽を検証しようとしたものではなく、時代や地域によって様々なバリエーションがある輪廻転生という概念の整理・考察を試みたものである。従って、輪廻転生は有るのか無いのかといった著者なりの考えや結論が示されているわけではない。
著者は「輪廻転生」を以下の3つの類型に整理している。
◆再生型・・・世界中の民族文化に見られ、歴史的にも古層にある再生観念。生まれ変わる先は自分の家族や親族に限定される“循環”的な概念で、「宗教信仰」というよりは「生活習俗」に近く、多くが祖霊祭礼や呪術の実践とともに保持されている。
◆輪廻型・・・古代インドで生まれた転生思想。再生型の地縁・血縁の原理よりも抽象性の高い「カルマの法則」に支配され、どこに生まれ変わるかわからない“流転”的な概念。理想郷に到達することができない人間が繰り返し地上世界に生まれ変わると説かれ、転生自体が望ましいことと考えられていない。
◆リインカネーション(reincarnation)型・・・19世紀半ばのフランスを席巻した心霊主義の渦中で生まれた。霊魂の“進歩”が強調され、来世を自分の意思で決定する、という自己決定主義の教義が説かれる。「近代版生まれ変わり思想」ともいえ、現代のスピリチュアリティ文化に大きな影響を及ぼしている。
更に、米ヴァージニア大学医学部の付属機関DOPSで行われている、前世の記憶を語る世界中の子どもたちの事例の研究が紹介され、最後に日本における輪廻転生の概念について、上記の3類型全ての因子が見られることと、近年の祖霊観念の減衰は今後も続き、本書で取り上げた輪廻転生という物語は、それを補う新たな神話のひとつとして考えられると結んでいる。
私は基本的にリアリストであるが、我々人間が輪廻転生になぜこれほどまでに関心があるのかを考えると、そうした死生観が、人々の人生の意味を増大させたり、病人が苛まれる死の不安を軽減したり、愛する人を失った遺族の悲しみを癒す力になるからなのであろう。とすると、我々にとって大事なことは、輪廻転生そのものの真偽を突き詰めることではなく、輪廻転生という考え方を自分なり消化し、自分の中に位置づけることと言えるのかもしれない。
(2015年9月了)
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なんだかんだで生まれ変わりを信じる人が現代社会でたくさんいることにおどろいた。生まれ変わりの思想を紹介。
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自分のキャパシティをかなりオーバーしていて理解不能な所が多い。結局は輪廻を証明できない以上、信じるか信じないかという一点に行き着く。それでもカルデックと霊の交信は面白かった。ここだけでも読む価値はある。
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・祖霊となったカミは、生前の居住地からさほど遠くない山中などにとどまり、子孫の繁栄を守護する存在ーつまり「ご先祖様」となるのです。これが日本の氏神信仰の基底にある観念だと柳田は指摘しています。
・重要なことは、これは極楽浄土への往生を説く仏教的な死後観念とあまったく別種であるという点です。浄土は別名十万億土とも呼ばれ、この世からは途方もなく遠く離れた場所にあります。となると、祖霊と言えども毎年ひょいひょい戻ってこられるような距離ではありませんから、正月やお盆にご先祖様を家に迎えることも不可能になります。こうした矛盾をはらんだまま、浄土思想は日本人の生活習俗のなかに新装していきました。
・その結果、日本人の他界観念のなかに「ご先祖様は近くにいて年に数回戻ってくる」とする土着の他界観念と「死者の霊は遠く離れた浄土へ往生する」という浄土思想とが併存するようになりました。
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「輪廻転生」というタイトル買い。
世界各地の「転生」の思想に関して、①再生型(自然信仰、血族への生まれ変わり) ②輪廻型(インド、仏教) ③リインカーネーション(スピリティスム)に分類してその例に関して解説がある。
自分は仏教(浄土真宗)の立場だが、②輪廻型の整理はとてもわかりやすかった。縁起、生まれ変わる主体はなにかの説明もなかなかいいなと感じたが、唯識やってる人がみたらどうなんだろうな。素人的にはいい表現だと感じた。
意外とキリスト教系の「転生」の受け止め方の変遷が面白かった。かつてのキリスト教が滅亡に向かった「後退」属性だったというのはびっくり。神に創造されたときが最高潮で後は下り坂・・・。そこからのスピ系での「霊性を高める」系の台頭。
個人的にはスピ系が苦手なのだがこれを読んで、スピ系にもそれなりの歴史というかベースになる者があるのだということを学んだ。『霊の書』というのを読んでみたいような読んでみたくないような。。。
前世の記憶を持った子供たちが世界に結構いるって話もあるのだが、そういうこともあるかもしれないなとは思うけれどだから自分の中に新たななにかは生まれないな。自分としては、子供が母親を選んでおなかの中に宿るなんていうのは耐えがたい話だ。これは誰得なのだ?もし虐待する親がいたとして、選んだ子の自己責任とかいうわけ?ちょっと理解出来ないところもある。でもこれは著者のせいではなくて、思想としてそういうものがあるという話。
最後の著者が自分の思いを「おわりに」で書かれている。自分は真宗の立場だからなにも言えないけど、この方がこういう気持ちで学問に向き合ってこられてこの本が出来たと言うことはすごいことだなと思う。人間って、すごいな。
「輪廻転生」をキーワードに、人類が生と死をどのように見てきたかという概論として非常に面白い。他で見ないジャンルだと思うので、宗教に興味のある方にはお薦め。難しく捉えないで面白く読める一冊。