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香港生まれの社会学者による、鉄道という目でみた日本の近代。
鉄道マニア向けの鉄道ネタではない。鉄道という存在を使った人、振り回した人、いや人というよりも空気というか雰囲気というか、解説では制度と呼んでいるが、そういうもの。
日本の「ネイション」は鉄道がつくった、といわれるとなんとなくわかる。かつての「国」というのは駿河とか三河とか、そういう国であり、幕府こそあれど「国」ではなかった。これをネイション化したのが鉄道ではないか、と。鉄道がつながることで国が出来上がっていった。我田引鉄と揶揄された政治家と鉄道の関係。
鉄道が日本人を作った、のではなく、鉄道への夢が作ったのだ。
でも、鉄道がつながることでネイションが、というのも半世紀ほど前の話かな、とも思う。北陸や北海道に新幹線がつながって、話題にもなったし便利になったりもしただろうけれど、それが経済的な話以上に昇華した感はない。今でも整備新幹線を夢見る地域もあるが、これからの鉄道敷設は文化もへったくれもないのだろう。そこにある「夢」は、本書でいう夢とは違う。というか、経済的利得の先に、社会生活が、文化があったはずなのに、今は経済という言葉がゴールだからなあ…。