紙の本
言いたいことはあるけれど、上手く言えない
2016/02/05 09:39
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投稿者:TORA - この投稿者のレビュー一覧を見る
絶望名人カフカの人生論
という本を読んで、
カフカはこんなにネガティブだけど
作品は素晴らしい、というようなことが
書いてあり興味を持ち、購入。
作品を読んで納得。
さすが永年生き残ってきた傑作は違う。
でもカフカは辛かったろうな、と思う
この感受性をもって生きていくのは。
故のネガティブな人生観か。納得。
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再読の『変身』をはじめ、どの作品も最後の最後までどこに向かっていくのか方向性が読めないところが面白い。
中でも『流刑地にて』は衝撃でした。
とある植民地の島を舞台に、公開処刑の装置の仕組みについて嬉々として説明する士官。それを半ば冷めた目で眺める旅行者達。
そして何故テーブルの下に墓石がある?想像するとかなりシュール。
『訴訟』についても、解説を読むと色々な読み方ができて再読したくなりますね。
またカフカの書簡についても、かな~りウザイ性格(ストーカーじみてる!笑)が伝わってきて、これまた楽しめました。
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カフカの新訳を多和田葉子さんが手掛けていると知り再読
といっても『変身』のみ再読で、他11編は初読なり。
全作品についての感想は控えて
一番ボリュームがあり且つ読了後あれこれ考えを巡らした『訴訟』について書くことにします。
ちなみにこの訳は多和田さんではなく川島隆さんです。
訴訟の手続きなんて冗長で煩雑で救いようがないさ!
そしてそれって訴訟だけに限らないよねぇ。
っていう主題だと解釈していたのだけど
まさかのラストを迎え呆然…
身に覚えもないし拘束されないくらいだし
罪はないのに訴訟されたのだと思ってた。
じゃあ死刑になるくらいなんだから
それ相当の罪を犯したということなのか。
わからない…多和田さん、help!
この主人公は制欲を持つが故に有罪判決を受け
法律の力でその無罪を証明するのは不可能であり
性を有罪とする判決が全くナンセンスであることを明らかにしている。
と、多和田さんは解説していた。
なるほど…
それにしても悲惨な結末すぎやしないかと思うけれど
『変身』も同じことが言えるので納得。
他にも様々な解釈がされているらしい。
多角であることは読書の醍醐味でもあるもんね。
すごいわ、カフカ!
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多和田葉子さんの新訳『変身(かわりみ)』に惹かれて。
‘‘グレゴールザムザがある朝のこと、複数の夢の反乱の果てに目を醒ますと、寝台の中で自分がばけもののようなウンゲツィーファー(生け贄にできないほど汚れた動物或いは虫)に姿を変えてしまっているのに気がついた。’’p9
カフカの『変身』というと、ある朝主人公が虫になっちゃうやつ、と認識されている方も多いですよね。
それはそれで間違いではないのですが、正確にはウンゲツィーファーという言葉で記されているそうなのです。
このウンゲツィーファー、ひきこもりの暗喩として見て取れる、という解釈をはじめて知ったのは斎藤環先生の著作だったと思います。カフカの時代にはhikikomoriなんて言葉はなかったのでしょうが、同様の状態はあったのでしょうか。
私は今回再読して、これは、モンスター小説を、モンスター(グレゴール)側からも、被害者(この場合は家族)側からも描いたダブル・ホラーの面もあるかな、と思いました。グレゴール側からも見ても、家族側から見てもホラー。
襲ってくるわけじゃなく、同じ家にいるだけで、忌み嫌われるんですね。
今、ヴィラン(悪役)映画って流行ってますよね。そんな感じ。
グレゴールは体は化け物じみたものに見えていて、人間の言葉も発せなくなっているけれど、中身はグレゴールのままなのです。
家族のほうも、一家の大黒柱から、突然モンスターに変身してしまった息子(妹から見たら兄)を持て余し、見たくない、存在すら認められないものに変わります。
両者のお互いの認識の違いがつらく、せつない。
また、グレゴールは、言葉を理解してないと思われてるけれど、実は完璧に理解していて、家族に姿を見られないように、空気を読んで、家具の下に隠れちゃったりしていて、胸が痛みます。
ある意味衝撃のラストシーンは、ホラー映画で、モンスターが倒された後のエピローグ的で、グレゴールに感情移入してきた身としては、複雑な、唯一無二の、この小説でしか感じ得ない(かもしれない)思いを感じます。
多和田さんは再読してみて、この小説に「介護」を読み取ったのだそうです。
今なお色褪せない古典。
後はおいおい読んでいきます。
何しろ803pもあるので…。
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ウンゲルツィファーはやりすぎだと思うけど、「お父さんは心配なんだよ」というのは、オドラデクを愛でるお父さんの姿がイメージされてとても心が暖かくなる。