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橘玲『「読まなくてもいい本」読書案内』(筑摩書房、2015)
進化論の発展から各学問分野にビッグバンが起こり、枠組みが変化していることを示した橘流サイエンスガイド。
パラダイム転換以後の考え方を知り、「それ以前」の本を「とりあえず」読書対象から外してしまおう(パラダイム認識ができたのちに読む)という提案です。
もともとリバタリアンを自称し進化心理学によるヒトの性質に注目していた著者だけに、大いに説得力があります。
目次では複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義の5項目が示されますが、実はこれらは「進化」の考え方を基礎にしつつ、相互に関連・発展してきたものだと。
ここに挙げられた新しい「知」
そして、旧来の学問の「死」
進化生物学が意識の謎を解き明かしたことから、哲学の役割は終わる。
人はなぜ老いるのか → 思春期に生殖能力を最大化するため
病気はなぜあるのか → ウイルスと免疫との"軍拡競争
神はなぜいるのか → 脳のシミュレーション機能の自然への拡張
【本文より】
◯日本ではあいかわらず「文系」「理系」の二分法が使われていて、進化論は理系の世界の話だと思われているが、進化論はいま、社会学や経済学、心理学といった「文系」の分野にも拡張され、社会科学を根底から組み替えようとしている。(p.60)
◯1970年代になると、生き物の生態がゲーム理論で読み解けることがわかってきた。知能も感情もない生き物は進化論的に合理的な”機械”なのだから、「効用=自己の遺伝子の複製」を最大化する戦略をせっせと実行しているだけだ。(p.144)
◯ゲーム理論が超強力なのは、(生き物を含む)この世界がゲームの集合体だからだ。植物も、動物も、そして人間も、与えられた条件や環境の下で、自らの能力を最大限に使って利得(遺伝子の複製だったり、子孫の数だったり、お金の量だったり、幸福だったりする)を最大化しようとさまざまなゲームを行っている。(p.160)
◯ひとはものごころついたときから死ぬ瞬間まで、意識があるかぎり、「if... then...」の思考をひたすら繰り返している。仏陀はこの終わりのないシミュレーションを「煩悩」と呼び、修業によって「if... then...」の回路を遮断し、とらわれのないこころの静けさに至ることを目指した。(p.224)
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『読んでいない本について堂々と語る方法』的な本かと思ったが違った。仕掛けの利いた本ではなくわりと正統な読書案内。
複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義の5章。
上記のジャンルの概観ができ、相互の関係性にも触れる。
複雑系と進化論が通底している。(内容が正しいかは知らない)
筆致はやや軽薄なくらいだけど、その分読みやすくほんとうに5日もいらずに読み通せる。
ブックリストにあった木になる本
1.複雑系
マンデルブロ『フラクタリスト』
ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』
ワッツ『偶然の科学』
2.進化論
佐倉統『進化論という考え方』
長谷川 眞理子『進化とはなんだろうか』
古川『理不尽な進化』
3.ゲーム理論
川越『行動ゲーム理論入門』
カーネマン『ファスト&スロー』
4.
ウィルソン『知の挑戦』
ピンカー『心の仕組み』
バラバシ『新ネットワーク思考』※読了
5.功利主義
大屋『自由とは何か』
カーツワイル『シンギュラリティ』
レジス『不死テクノロジー科学が』
ヒース『啓蒙思想2.0』
結局読みたい本が増えている・・・
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これはいい。
この本だけで、その項目にまつわる予備知識を系統だてて学べるので、これから読むべき本がおのずとわかってくる。
複雑系は学生の頃少し勉強したので、懐かしい感じもした。
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とても読みやすいです。哲学とか心理学とかは嘘臭いと感じるものも多いです。でもそれをデタラメだ!というためにはかなり勉強しないといけない。それをやってくれてる感じです。
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以前からなんとなく気付いていたが、人文科学や社会科学、いわゆる文系学問は瀕死の状態にある。
法学や哲学が最先端のイケてる学問だったのは遥か昔の話。心理学で有名なフロイトや、ハーマンのトラウマ理論は何の根拠もないデタラメということで決着済みだ。
経済学が前提にしている常に経済的に合理的な人など存在せず、もはや科学とは言えない。
じゃあ文系学問はどうすれば良いのか?
実は、これらの分野では、遺伝学や進化心理学、複雑系、行動経済学といった分野で、知のパラダイスシフトが起こっている。
だったら、古いロジックで構築されている学問は捨てて、新しいロジックを学べば良いのではないかって話。
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タイトルはトリッキー。
内容は 興味深く読むところもあるけど 随分読み飛ばした。
読むべき本は山のようにあるので その気になったら再読しようと思います。
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一見脈絡のない様々なテーマが、根本の部分でつながっているという事が分かります。
各分野の導入という点で、少し物足りない部分もありますが、そこから先はそれぞれの専門書に進んでいけば良いという事ですね。
かえって読みたい本が増えてしまいますが。
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「科学や技術は進歩するけれど、ひとは進歩しないのだ、ぜんぜん。」
本書で取り上げられたテーマをこれまでよく知らなかった人(私もそうであった)であれば、まさに物理的に殴られたような衝撃を覚えるはず。知の最前線を知りたい人、刺激が欲しい人、より良い社会の在り方を考えようとする人…とにかく一度読んでみてほしい。
各章末尾のブックガイドを足掛かりに読書の幅を広げるのも楽しいはず。
ただ、「知のパラダイム転換」以前の知識を学んでも意味はないとの著者の主張については慎重に考える必要があるだろう。
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本書で紹介している進化生物学、進化心理学の考え方があまりに強力なため、どんな内容の項でも最終的には進化論に行き着いてしまっているところが面白いところ。日常の出来事に進化論を当てはめてみると面白くなることが多々ありそう。
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トンデモ本の紹介的な内容を想像していたが、近年の社会科学についての入門的な解説と入門書の紹介だった。看板に偽りあり。
最初に出てきた「社会学について自然科学の用語と数式(それもでたらめ)を使って高度な内容を記述しているようだが、実は何も言っていない本」(極めつけはそれらしく見せたパロディ論文が専門誌に掲載されたというエピソード)を題材に、「読むだけ時間の無駄」というところはタイトルどおり。
Amazonの低評価レビューにあるとおり、そこまで有り難がって読む内容ではなかったが、社会生物学や経済学、統計学の概説としてはわかりやすい。
検証ができないのをいいことに、頭の中で考えた仮説やイデオロギーを自然法則でもあるかのように見せかけて(やっぱり数式を使って)あげくに世界を滅茶苦茶にした経済学やインチキ心理学といったエセ学問は、シミュレーションと統計解析を駆使した自然科学に吸収されていくだろうという主張は、まあそんなものかと思うし、事実、有害な経済学者は一刻も早く消えてもらわないと困る。
「科学とイデオロギーをちゃんと見分けましょう」という話。
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Maverick はぐれもの
1960 アトキンソンダイエット 糖質制限
1975 ウォルターベクトリン ストーンエイジダイエット アトキンソンに進化論的な根拠を加える
現在 パレオ(旧石器時代)ダイエット 自然至上主義
糖質オフダイエット 現代の進化論が日常を侵食する時代の象徴
ベルリン ドイツ降伏時、英米仏がベルリンの西側を支配した 西ベルリンへの武力進攻はアメリカへの攻撃とみなすと警告 世界最終戦争はベルリンから始まると恐怖が高まっていた。フルシチョフは、西ベルリンを壁で囲い込み東側から分離する奇策によってこの危機を見事に回避した
トラウマ理論という災厄
ショッピングセンターで迷子になったという存在しない過去の出来事を、信頼している人から指摘されたにもかかわらず、自分にはその記憶が全く無いという矛盾(認知的不協和)を解消するために、脳が無意識に都合のいい物語を作り出したものだと説明できる。だが被験者のこの過程を、忘れていた子ども時代の記憶を思い出したと体験するため、捏造された記憶が事実になってしまうのだ
ハーマンの抑圧された心的外傷 トンデモ科学
フィンランド エドワードウェスターマーク 発達期に一緒に過ごした男女は、血縁かどうかに関わらず、性的魅力を感じない ウエスターマーク効果はイスラエルのキブツで確認されている
人間の行動はほとんどは無意識が決めていて、性的欲望が決定的に重要だと指摘したことはフロイトの大きな功績だ。だがフロイトの評価が難しいのは、そこから先の理論がほとんど間違っているからだ
エディプス・コンプレックスはない。女の子は自分がペニスをもっていないことで悩んだりシない。脳科学の実感からリピドーはみつからない。意識が、イド、自我、超自我の三層構造になっている証拠もない。夢は睡眠中に感覚が遮断された状態で見る幻覚で、抑圧された無意識の表出でなくたんなる意識現象だ
アイゼンクによれば、フロイトは重度のコカイン中毒で、精神分析で有名になってからも実際の患者はほとんどみたことなく、たとえ診察してもその診断は間違っていて病気はまったく治らなかった
アンナOのヒステリー性のせき 結核性髄膜炎
フロイトは、世紀末ウィーンのセレブたちが求めているのは、科学でなくお話であることを知っていたから
新しい功利主義は、話し合いよりもテクノロジーの活用を選択する
ドレクスラー 創造する機械 1986 ナノマシン等まだ実現されていない
テクノロジーは資本主義と同じく、「もっと豊かになりたい」「もっと幸福になりたい」というひとびとの欲望によって自己増殖していく自律的なシステムだからそれを道徳的な説教や批判で止めるのは不可能だ。だったらいま必要とされるのは、新しい世界にビジョンを受け入れたうえで、進化するテクノロジーとどのように共生していけばいいのかを示す新しい哲学ではないだろうか
フーコー
権力は君のなかにある。きみ自身がきみをしばりつけている権力なんだ
その時以来ぼくは、「自分は善で、(自分の外にある)悪=権力と戦っている」という物語を一切信用しないようにした
もう一つの教訓 科学や技術は進歩するけれども、ひとは進歩しないのだ。
古いパラダイムでできた知識をそれほど学んでも、なんの意味もない
フーコー ひとはエラくなるほど自らの内なる権力から目を背け、外に敵をつくって偽善を隠蔽しようとする
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ここ一、二年の間に自分が読んだトピックが網羅されていて、記憶の再整理に役に立った。もう少し掘り下げたい分野の探索にも有用。ただ古いパラダイムの下で構築された知は一般の読者には無用で、その再評価は専門家の仕事だという著者の主張はどうなのだろう。パラダイムの恣意的な選別が為されていないか監視するvigilante readerとしての目を養うのも必要では。最新のパラダイムが永遠に妥当するという保証も無い訳だし。また大変失礼ながら、そのような断罪が許されるほどの実績がこの著者にあるのかどうかも、略歴を読む限りでは疑問。
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複雑系、進化論、ゲーム理論、意識・自由意志の脳科学、功利主義という5つのテーマについての読書ガイド。特に功利主義に関する部分は知らないことも多くて面白かった。行動経済学やマーケットデザインなど、読んでみたい本が増えた。
進化論
人種差別に対する反省からでてきてPolitically Correctの立場やタブラ・ラサ的な思想の流行に乗っかって、スティーブン・ジェイ・グールドが社会生物学を「遺伝子決定論」「遺伝子還元主義」として激しく批判し、EOウィルソンやドーキンスらと論争を続けていたらしい。
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ゲーム理論で「おっ!習ったことある!」と思ったり、脳科学とか進化論の話で「おもしろそう、でも難しい」と思いつつ読み進めていきました。
楽しそうな話題がてんこ盛りだったのですが、4分の3くらいきたところでまとめが入ります。取り上げられている分野の学問によって知のパラダイム転換が起きているのだそうです。
そんな枠組みの変化に対応するために自分にできることは、この本にあげられてる関連書籍を読むことですかね。
あと最後の方に経済と法の関係についての言及があって、関連分野のシステムに関わっている自分にとっては覚えておかなきゃいけないと思えるものでした。
自分の無知っぷりと著者の読書量、すごい。
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この本自体はいまの知の現在への導入とカタログで、ここから読む本がよいかどうかで価値がきまるだろうなあ