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〈本から〉
物を作る人間は都会にいてはいけないという強い決心を抱きました。
美というものは、歴史を離れて、どんな時代でも、国や、男女や、学問のあるなしに関係なく、胸を打つものでしょう。勉強しなくてはわからない、といういうような性質のものではないと思うのです。
極寒の寒さに耐える山の草木には、次の春に芽吹く命が眠っています。冬の中には春の予兆があり、死の中に、生へのエネルギーを秘めた命が息づいているのです。生と死は常に隣り合わせで、決して別々に存在するものではないことを、自然はわたくしに教えてくれました。
描くものに対しては、感動とか興奮といった生易しいものではなく、逆上に近いような感情を持っていないと、人の魂など打たないのです。
わたくしは山の獣、草木、花々が、日々生と死を分けながら生きているさまを観察してきて、その原始の感性とでもいうものに少しでも近づきたいと思っています。そうした本来の生物としての能力を発揮しているときこそ、命は輝くのではないかと考えております。
縁側というものは、里山だと思います。外の世界と内の世界を隔てる役割を持っていたものだったのです。
わたくしが生まれた時から身につけていた言葉づかいや礼儀作法、美の意識は、すべて「古い日本」でした。
「慣れない、群れない、頼らない」という生き方
私の生涯
いま
私はその日その日の現在に熱中し
無慾脱俗を忘れず
何物にも執着せず
私流の生き方を求めて歩き続けて参りました。
これが私の生きた道です。