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小倉昌男と言えばヤマト運輸を創設した名経営者という印象が強いが、本書は経営者という一面ではなく、素の小倉昌男という人物面が強く滲み出たものとなっている。
妻や娘とのやりとり、そしてその中で起こる内面の葛藤。先立たれた妻と残された夫、そして寄る辺のない娘との距離感。そういったものが至る所に散りばめられ、一人の人間としての小倉昌男について思惑をめぐらさずにはいられなかった。
当時の時代背景や立場ももちろんあるのだろうが、一時代を築いた人もやはり一人の人であり、その中でもがき苦しみながら日々を過ごし、また生きていかなければいけない人間としての宿命。本書は、それに対する意味を嫌が応にも考えさせられる作品となっている。
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3-4時間で一気に読みました。
稀代の経営者の知られていない物語。「なぜ福祉事業を始めたのか?」という筆者の疑問から壮大なストーリーが始まる。傑作です。
※改めて小倉昌男さんの「経営学」を読み返そうと思います。
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これはこれで良かった。感激を受けるかどうかと正しいかどうかは別にして、これはこれで感激を受ける。
どんな宗教かはさておき、家族だとか愛だとか、なにかを慈しみ祈ることは人として大事なことだと思う。
ただ、私には論理しか祈るものがないから、論理的にしか祈れないけどね。つまり、論理的であることでしか祈りは存在しない、ってことなんだけどね。
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『経営学』『福祉を変える経営』を以前に読んで
非常に感銘を受けました。また、赤坂の日本財団の
スワンカフェをよく利用させてもらっています。
そんな小倉氏の半生や、なぜ宅急便の生みの親であり
官庁と規制と闘う伝説の経営者が障害者福祉。とくに
精神障害の人々の社会的自立を目指した活動に没頭された
のかという謎をたどっていく内容です。
ある意味感動する内容です。
これらの内容を読んで、小倉氏のことをより尊敬する
気持ちが強くなりましたが、少しだけ境遇が似ている
との思い込みから、こういう人になりたいと思いました。
恥ずかしいくらいおこがましいことではありますが。
『サービスが先、利益は後』『障害者に月10万円の収入
を』に続いてこの本での、子どもや奥さんに対する
深い愛や贖罪。立場の弱い人々に対する思いや、
そこからくる精神障害の方々への思いなど、強く心に
残る内容です。
4月2日の世界自閉症啓発デイに読み終えました。
またスワンカフェを利用させてもらいます。
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宅急便で成功する陰に家族の犠牲があった。その贖罪のため福祉の仕事に晩年を障害者にささげた人生はクリスチャン以前の小倉昌男の生き方なのだろう。
小倉昌男の愛情深さと心の強さ弱さがよく出た作品でした。
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小倉昌男は取り上げられすぎてるし、どうしようかと思ってたがこれは買い。すこし都合の良い解釈な気もするが、しかし、できた人に苦難が襲うとは…とも言えるが、きちんと消化して世のために動ける人を選んで苦難が襲ったとも言える… なんとも畏敬の念は強まる。
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衝撃の一冊でした。小倉昌男経営学に続くビジネス書かと思いきや、社内の者でも知りえない小倉昌男のプライベートでの戦いが赤裸々に綴られています。最近特に感じるがどのような人でも必ず影の部分がある。その影との向き合い方について考えさせられます。
筆者の書き味としてはノンフィクションのサスペンスのように引き込まれます。それにしてもよく調べてあります。
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46億円という全財産を財団に献げてまでの障害者福祉事業への情熱、法を守っての行政の規制緩和を勝ち取る闘い、法を守らない佐川清から宅配便ニーズのヒントを得、占部都美氏が著した「危ない会社」からの立ち直り。会長時代に2年間、”毎日“教会へ通って祈りを捧げ、カトリックへの改宗、早世した妻への愛。穏やかな人間性が驚き。一方、長女真理のわがままに振り回され、精神的に崩壊した玲子も抱えた家庭の地獄、後年の真理と黒人ダウニィとの孫への愛情。今では自らを境界性パーソナリティ障害だったと語る真理。小倉の福祉への情熱の源泉でもあったのだ。これが小倉の没後もヤマト福祉財団に継承され、2011年の東北大震災では143億円の寄付に及んでいく。妻の死後、「土曜日の女性」遠野久子との絆は晩年の小倉にとっての救いだったことがほのぼの伝わってくる感動を呼ぶ!
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宅急便の創始者であり、日本のロジスティクスを変革し、ヤマト運輸をここまでの大企業の育て上げた名経営者、小倉昌男。彼は障がい者雇用や福祉活動にも積極的だったことで知られているが、福祉活動に入れ込んだその動機は何だったのか。
ノンフィクションライターの著者は小倉本人が自伝などでは決して明かさなかった何かがあるのではないかと思い、関係者への調査を続ける。その結果、彼が抱えていた苦悩の存在が明らかになる。
本書では、最終的に小倉昌男の長男・長女の二人のインタビューにまで成功し、彼が抱えていた苦悩を描きだすことに成功する。その結果、本書を通じて優れた経営者として成功を収めた彼の人間的な側面を痛切なまでに感じ取ることができる。
最終章で長女が新たな生き方を見つけて進もうとする様子が描かれるが、これは小倉昌男の意思を自ら継いでいこうとするコミットメントとして、深い感動を呼ぶ。
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新聞の書評欄で紹介されていたので手に取ってみました。
本書は、理不尽な規制権力に立ち向かった闘士としての稀有の経営者「小倉昌男」氏の知られざる一面を明らかにした著作です。
ここまで踏み込むか・・・、私としては、個人のプライベートを露わにするジャーナリズムの姿勢に諸手を挙げて賛同するものではありませんし、またその伝えられる情報には玉石混交の観があると考えていますが、本著作の筆致は徒にセンセーショナルに煽るでなく、対象に寄り添おうという心が感じられる至って穏やかなものでした。
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後日、著者の森さんと会食する機会があっていろいり取材話をきいた。で、オチになるので詳しくはいえないが、クライマックスの話をきく米国に西海岸の海辺ってどこですか?ってきいたらなんとレドンドビーチ。ここはくしくも自分の人生の転機になるような大事な話、数日をすごした場所でもある。レドンドビーチという場所は、人を素直にして話をさらけだせるなんともいえない力をもった土地だ。
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クロネコヤマト宅急便で知られる、ヤマト運輸の元社長・会長であった、小倉昌男氏の生涯を伝える、ノンフィクション。小学館ノンフィクション大賞受賞。
日本で初めての、個人から個人への宅配サービスを始め大成功を収めた小倉氏の、事業の成功と私生活の失敗、クリスチャンとしての生き方、引退後の慈善活動などが描かれている。もともと由緒正しい家の出で、東大に行き、親が創業した事業を受け継ぎ発展させ、人柄はまったく派手さがなく、誠実そのものだという。
一方、家庭は家族の病気などで崩壊し、自分を責め懺悔の日々を送る。お金がうなるほどあっても、幸せとは限らないのだな、と皮肉にも感じる。本書は、小倉家の恥部とも思えるプライベートなことを、小倉昌男を直接知らない著者がディスクローズしてしまっているが、いいのだろうか。家族に会ってはいるようだが。
妻が死んでから面倒を見てくれた女性の件も、考えさせられた。現在の日本では、やはり籍を入れていないと、最期に立ち会うことはできないのだ。
小倉氏のことを手放しで称賛するだけではなく、フェアな視点で書かれた本ではある。
次に帰国したら、スワンベーカリーに行ってみよう。
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一人の名経営者が、なぜ引退後に巨額の私財を投げ打って福祉財団を設立したのか。誰にも語られていなかった動機を筆者は会社関係者だけでなく、家族などのプライベートな関係者への取材を通じて、ミステリーのように明かしていく。
その裏にあったものは、長女の抱えていた境界性パーソナリティ障害と妻のアルコール依存症と自殺、だった。
そして小倉の死後、長女の病気は薬で抑えられるようになり、「コーリング」として精神障害者のサポートを志していく様子は、物語として救いがあり涙が出た。
また小倉の経営者としての素晴らしさも所々で垣間見れる。これは僕自身が中小企業の経営者だからこそ、感銘を受けた。僕もこうありたい。
「インタビューで訪問すると、取材用に書類やデータを大量に用意している。その資料をもとに語る・・・その説得力や論理も一流でした。ところが、人柄としては、硬そうに見えて、会うと非常に丁寧な人。取材が終わるとエレベータまで見送ってくれる。そんな礼儀正しい事をしてくれる経営者も珍しかった」
「小倉さんは、はっぱをかけるようなことはしない人でした。むしろ現場のセールスドライバーと会って、直接話を聞く。そこで問題や改善点などを発見していく。一方で地方の支店長など管理職には厳しく、ちゃんと仕事ができていないとか、わかっていないような人には、まともに口もきかない。」
(スワンベーカリーの立ち上げの際に、タカギベーカリーを見学して)「さらに驚いたのは、小倉がただ見学するだけでなく、自らパン作りの工程を体験してみたいと言い出したことだった。・・・・「サービスが先、利益が後」など品質やサービスを第一にしてきた人だと思いました」
その他、いくつか印象に残った箇所を。
・(会長に戻った経緯について)
「私が相談役になってから、そう言った事実(交通事故の隠蔽)があまりに多いのに驚いた・・・恥を忍んで再び会長に復帰した」→小倉の現場への理解を表す言葉だなぁと。誰よりも現場をわかっていたからこそ、トラブル時に現場に復帰したのだなと。
・アルコール依存の治療プログラムのメソッドとして有名な「変えることができるものについて、それを変えるだけの勇気を我等に与え給え。変えることができないものについては、それだを受け容れるだけの冷静さを与え給え。そして、変えることができるものと、変えることができないものとを識別する知恵を与え給え」は、神学者のニーバーの祈りという言葉が元。
・自殺について第二バチカン公会議で「病死」という解釈になり、カトリックでも祈りの対象になった。
筆者の取材力(よくここまで関係者の関係を築き、本音を聞き出せたなぁと思う)と構成力(ミステリーのように、読み進めると止められなくなる)も圧倒的だった。
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すごい人もいるもんだな
→ 成功者だもんな
→ あー家庭はだめだったのか
→ 娘が全部わるいのか
→ 実は……
家族のあり方や精神ケアなどいろいろと考えさせられる内容だった。かなり先進的な発想をするひとだったんだなあ。
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ヤマト運輸 社長として行政とケンカしまくる小倉昌男には障害者の娘がいた。その娘のためもあり、小倉は障碍者の社会参加に真剣にとりくんだ、という話。