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この相葉英雄という作家は、この社会に憤っている。その怒りを、田川刑事を通して見事に読者に伝えている。田川刑事の捜査は本当に丁寧で、1つ1つ小さなことを積み重ねていく。相葉英雄の文章もそうだ。
今回の事件は、社会の歪みがもたらした結果起こってしまった。ある車の会社の部品に疑問を抱いた1人の非正規雇用労働者の仲野。彼が会社を訴えようとした際、理不尽にも殺されてしまう。彼を殺した実行犯にもそうせざるをえない実情があり、その犯人よりも、怒りはこうした社会にぶつけるべきではないかと思わされる。非正規雇用労働者の実態や巨大組織の隠蔽問題等、ノンフィクションを読んでいるようだった。
上下巻トータル600ページほどのボリュームだが、一気に読ませる力がある。しかし、読後感は爽快とは言えず、僅かなシコリが残る。
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トクダモーターズの工場に派遣された仲野が自殺と見せかけて殺害された事件。
田川刑事の執念の捜査によって真相が暴かれたものの、結局、トカゲの尻尾切りで下っ端が逮捕されただけで幕を閉じようとするが、きっとまだなにか最後にあるに違いない。
いや、あってほしい。長内の裁判での情状証人として法廷に立つ田川刑事にもう一頑張りしてもらいたい。
普通に働き、普通に食べ、普通に家族と暮らすことがそんなに難しいことなのかとやりきれない気持ちになった。
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正社員になるためなら人殺しも厭わない。
そこまで追い詰められてしまう
派遣労働者の実態。
これ、今の日本のお話?って
思いたくもなるが、これが事実なんでしょう。
う~ん、この国大丈夫か?
シャープや東芝のニュースがあるだけに
自動車産業も危ないのかと不安になる。
警察ものとしては、案外捜査もすんなり進むし
黒幕もありがちな展開で普通かな。
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上巻に続いての下巻はとにかくの一気読み。
ページをめくる手が止まらなかった。
現代の色々な社会問題を散りばめた力作。
ラストでこの犯罪の始終が分かっても、全然スッキリするものはなく
悲しさが込み上げてきます。
僕の働く学校でもある正規と非正規の関係。
今やそれがどんな仕事の中でも存在していて、格差が間違いなくある。
どこかで自分の生き方を踏み外せば、誰もがなり得る。
僕だって、今正規で働けていることなんて、運がいいとしかいいようがない。
自分の雇用を守り、家族を守る、それぐらいのことしかできない
ちっぽけさをあらためて感じさせられた作品です。
これはすべての働く人にぜひ読んでもらいたい。
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田川刑事が粒ほどの遺留品から犯人を特定していく流れはとても面白く、あっという間に読み終えた。宮古島から岩手までの動きもダイナミックで楽しかった。著者の次作が楽しみ。
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相場小説を読むと、この国で生きていくことが本当に怖くなる。
普通に、ごくごくあたりまえの生活を普通に送る事がこんなに難しくなってしまったのか、この国は。
どこで間違えたのだろう。
クルマのCMがそらぞらしく見えてしまう。
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「貧乏の鎖は、俺で最後にしろ!」。仲野の魂の叫びに涙。働けど働けど楽にならざる暮らし。失われた祖父の三線。それでも「なにくそ、負けるか」と働き続けてきた挙句に親友の裏切りに遭うとは…。真実の糸を丹念に手繰り寄せていく田川刑事の地味で地道な捜査手腕が光る。自動車業界の今後に注目。
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派遣社員の実情がドロドロと記載されていた。正規社員になることを引き合いに殺人まで陥れるなんて…恐ろしいことだが、これまで蔑まれてき彼らにとって、安定した生活を手にすることは何より変え難いものだったのだろう。ほんとに誰がいったい悪かったのかわからなくなった。
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本格的推理小説。
上下巻と頁数は多いものの、読み始めると事件の真相が気になり一気に読み進めてしまう面白さ。
下巻では割と早い時期に真相が示唆されるものの、そこから二転三転どころでない怒涛の展開で最後の一ページまで読者の心を離さない良質の推理小説である。
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大量殺人の陰で発生した、ある男性の練炭自殺。自殺として処理されたがのちの調査で殺人事件と判明。1人の刑事が事件を追う。
だんだん、犯人に近づいていく過程が、読んでいて楽しい。事件の背景に、日本の派遣労働とか自動車メーカーのコスト競争があったり。
話としては、読みやすい内容だけど、どんでん返しとかないぶん、わかりやすくて読みやすい。
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自殺に偽装して殺害された青年・仲野は、派遣労働者だった。田川は仲野殺害の実行犯を追いながら、大企業、人材派遣会社の欺瞞に切り込んでいく。ガラパゴス化した日本社会の矛盾を暴露する、危険極まりないミステリー。
ハイブリッド車に拘り続けて世界の趨勢に後れを取っている国内自動車メーカーは、大手家電メーカーが陥ったようなガラパゴス化に陥りかねないと警鐘を鳴らす。人材派遣の深い闇と絡めて暗澹たる気持ちになるが、殺人事件の捜査の進捗ぶりも興味深く、ページを捲る手は止まらなかった。
(A)
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直接手を下した犯人が仲間で、動機を聞いて余計苦い思いがした。それにしても悪が悪として際立ってるので、スカっとはしないが期待できる終わり方だったのでよかった。
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警視庁捜査一課継続捜査担当の田川は身元不明事件を追う。しつこく、粘り強く捜査し真相を暴いていく。
そこから、日本産業の傷が見えくる。
派遣労働者の過酷な実態など驚くことばかりだった。
読んでいて思う。
まだまだ、隠されていることがあるのではないかな。
〈マスコミは表面上の事柄しか伝えない〉
〈政治家の言葉に関しても、同じなのだと痛感した〉
相場さん、すごい作品を届けてくれたのだなぁ。
改めて思ったこと。
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正社員になるために殺人を犯す。ここまで格差があると雇用の規制緩和は歪んだ社会を助長するだけなのかもと考えさせられる。「普通」ということはとても大切なんだと思った。
小説として派手さはないがすごく緻密で心理描写も上手く、読者を引き込ませる力を強く感じた。
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「しかし、働くってのはそんなに難しいことなのか?」
今でも思い出す胸糞悪い6年前の就活のころ、このセリフと全く同じことを思っていた。
朝が来るのが怖くて不眠に陥り、毎朝トイレで吐いていた。
最後の最後、30社以上惨敗した挙句の二次選考に数打ちゃ当たるで唯一内定勝ち取った会社に、今もいる。
あんな思いは二度とご免だ。転職する奴等の気が知れない。
あの時以来、俺は俺に期待しちゃいないし、誰も俺には期待しちゃいないと割り切れたから、楽になれた。
最初から自分にも他人にも社会にも何にも期待してなかったら楽だったのにな。
しかし、もしもあのときに内定が取れていなかったら。働くことができてなかったら。
今の俺は何してるんだろうな。
本書の表紙は働く奴隷たちのレリーフがデザインされている。
ガラパゴス、グローバル標準からかけ離れた日本製品を揶揄する言葉だ。
その言葉の裏で、使い潰されている派遣労働者がいる。
コストカット、不景気、リストラ、その裏で何万人の、まともに食えない連中がいるのか。
「俺はどこまで運が悪いんだよ」
「執行猶予が付こうが、実刑になろうが、どっちにしても俺はまたアルバイトからやり直しなんだよ!」
追い詰めた末に殺人犯が叫ぶ最後のセリフは最後まで利己的なものだった。
この世の中、自暴自棄に追い込まれた末の無差別殺傷事件増えてないか。
これって、正常な社会?