紙の本
私の「戦後民主主義」
2016/04/21 11:00
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投稿者:もんどのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
様々な分野の、様々の主張の人々が一様に抱いている危機感がひしひし伝わる。
とはいうもののあのヒットラーですら、合法的な選挙を経て恐るべき独裁者になったことを考えると安倍晋三の背後に何となくそういう気配が見え隠れ、同じ道を歩むことになるのかと思うと、やりきれない。
戦後民主主義が良かったと手放しでは言えないだろうが、そこから次のより良い社会を目指す指針にはなる。
本書からそういう萌芽が垣間見える。
それを根底からつぶそうという動きは恐ろしい。
唯一の救いは、老域に入り先がないことだ。
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1969年生まれの私は、この戦後民主主義の元で育ち、自分の土台となっていることを再認識させられた。そんな時代じゃない、という潮流が強いことは理解しているが、やはり自分はこの本に出ている方々の言葉に心から共感できるし、これからも大切にして行きたいと思う。
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1950年以前生まれの38人の方が語る「私の戦後民主主義」。思想的政治的立場は様々だが、自身の人生と切り離せないものとして「戦後民主主義」を生きてきたと語っている点が共通している。空気のごとく当然そこにあるものとして享受してきた自分などには、民主主義を語る言葉が乏しいなあと気づく。
何人もの人が言及しているのが「民主主義はうまいやり方ではないが、(今のところ)これに代わるものはない」という考え方。これは本当にそう思う。若い頃は「民主的」と言う言葉には、「ぬるい」「妥協的」「タテマエ」「実際には威圧的」というような響きを感じていて、使いたくないものだった。今のように多くの人が、特に若い人が、切実な気持ちで口にする言葉になるなんて思いもしなかった。自分は「民主主義」をどう語るのか、問われていると思った。
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戦後70年ということで、1950年以前生まれの38人の「私の戦後民主主義」についての一定の考え方、感想が取りまとめられたもの。
それぞれの年代で、戦前、戦中、戦後の感じ方が異なる。
いずれにしても、民主主義制度なるもの「道具」をどう使いこなすか、それぞれの市民の不断の努力が必要です。
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戦前生まれから戦後生まれまで、38人の識者が戦後民主主義の起点、通過点、転換点を述べる.
「天皇陛下が知らないところで軍人が勝手にやったことを事変」「天皇陛下が詔勅を発してやったことを戦争というのだ」(無着成恭 48p).
「民主主義が本当の意味で育つ」には、「それに立ち向かう人間の、『不動の覚悟』」と「『不断の努力』が必要条件で、なお且つ、長い時間がかかる」(米沢富美子 53p).
本州の名家に造られる庭、庭園.北海道ではその余裕も限りがあるも、決め手は「造るが精一杯、手入れにまわす投資がおぼつかず」.いつの間にやら、庭に荒廃、雑草がはびこる姿に、似るや.民主主義の空洞化、衰退.
「(人類は民主主義を導入したことで)平和と繁栄が恒久的に約束されていると思っていた」「近年のおいつぐ金融危機や先進国の経済低迷、格差社会からの拡大やテロ」「先進国をはじめその制度を支えてきた国家がその機能を発揮できないまま多くの問題に直面」(植田紳爾 54p).
「(一五の子どもながら感じたこと)日本人の男の変わり身の早さはすごい」「『えらい人』ほど変わり身が早く、昨日と違うことを言って平気な姿」(赤松良子 65p)、
「日本という国は、大きな変化が生じるときには必ず外圧がある」(同 65p)とも.
まずはここまで.語録、至言はこれからも.(岩波書店 2016年).
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いわば、私自身にとっての民主主義とは、疑問に思ったことを納得できるまで聞くことができることだった。(無着成恭:p48)
夫の横暴を泣いて耐えるしかなかった母の姿は、「弱い者を守る」ことこそ民主主義の基本だ、と私に強く信じさせた。
もちろん、それは「愛する人を守るために戦う」と戦争を美化することとは全く違う。こういう言い方は、戦争という大きな出来事を個人のレベルの話にすりかえて正当化しているのだ。それは少しも「弱い者を守る」ことになっていない。(赤川次郎:p92)
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二年前に読んでいたものを
今、一度読み直してみる
つい最近
松井久子監督の
ドキュメンタリー映画「不思議のクニの憲法」
のリニューアル版を観た
その一週間後に
姜尚中さんのお話を聞く機会があった
それで
では、ちょいと復讐
いや復習ということで
手にしてみた
38名の方のメッセージが
載せられているのですが
そのうちのお一人
中村哲さんのメッセージの
冒頭に
ー戦後の良識を代表する司馬遼太郎は
「今は敗戦より悪い」という言葉を
遺して逝った。
と綴っておられる
あれから二年
いや ますます悪くなっている
と 思ってしまった
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「戦後」の民主主義について、戦中、あるいは戦争終了直後に生きた各筆者が自分の体験談などを紹介しつつ書き記しているとても貴重な視点を得られる本。
一言では言えない、一人ひとりの「戦後」があり、そこで経験した「民主主義」の在り方がある。その一方でまた、私たちが今当たり前のようにとらえている民主主義は、戦争とは切り離せない元のして語られているという共通点がある。
戦争の傷跡をほぼ体験していない私などの世代は普段持ちえない視点だと思ったし、でもその連続性の中に今の日本の民主主義があることを認識するのは大事だと思った。
そして、その民主主義自体に基づいて国を運営するために、さらに学ぶべきことが多いと改めて思った。