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音は言う。
「努力って、ときどき、報われる。」
そうなのだ。『ときどき』なのだ。言い換えると「ほぼ、報われない」のだ。別に『真面目に生きたほうがいい』とか『だから努力が大切だ』とか言っているわけではない。ただ、少しだけでも希望をもって生きてゆく、できる範囲でちょっと頑張ることで、何か変わるかもしれない。練は言う。
「変わってないように見えるかもしれないけど、全然、違います。」
「頑張って生きたのって、目に見えないかもしれないけど、心に残るんだと思います。」
奇跡が起きるかもしれない、ということ。
そもそも、音の心の支えとなっていた母からの手紙を、わざわざ東京からトラックに乗って届けてくれた人がいた。その人は、優しさを運んでくれるだけでなく、音と「同じふうに思える人」だった。いつかたったひとりの人に出会えるといいねと手紙に書かれていたように…。そして、その人も音のことをちゃんと好きになってくれた。また北海道まで会いに来てくれた。しかも、デミグラスを頼んだのにトマトソースのハンバーグが出てくる「ちょっとした運」もあった。
『問題のあるレストラン』の最終話で、二階堂ふみが「奇跡、起きなかったですね。」と言ったとき、真木よう子は「奇跡は起こりましたよ。今日まで営業してきたじゃないですか。」と言った。
想いは通じるかもしれない、ということ。
そもそも他の誰かとわかりあえることは少ない。誰かの気持ちをわかっているようで、実のところはわかっていない。また、自分の気持ちをストレートに伝えることができない人もいる。何らかの事情で離別してしまったり、死別してしまったりすることもある。でも、たとえ死んでしまった人とでも、レシートや思い出で想いが通じることができるかもしれない。
練は言う。
「道、ありますから。」
いろいろあって5年も過ぎてしまったし、距離も離れてしまったけど、二人の想いは通じているし、これからも通じるのだ。
『それでも、生きてゆく』最終話で、瑛太と満島ひかりは投函しない(届かない)手紙に書いていた。
「私が誰かと手をつないだその先で、誰かがあなたの手をつなぎますように。」 「つないだ手に、込めた想いが届きますように。」
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