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『群像』連載の単行本化。
連載時から読んではいたが、単行本化でハチャメチャ度合いが上がっていてかなり楽しめた。ストーリーとしては『鳥類学者のファンタジア』の続編という部分があるのだが、本作だけ読んでも充分に楽しめる(読んでいた方がもっと楽しめるのは確かだが)。
単行本で600ページ超えの、随分と長い小説ではあるのだが、最近の単行本は少々長くても軽くなったのが有り難い。一昔前はずっしりと重たかったものだが……。
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2000年代半ばにコンピューターウィルスによるパンデミックが起こり、甚大な被害が出たのち復興を遂げた日本を舞台に、アンドロイドの猫が語り手となって話は進む。
『鳥類学者のファンタジア』の続編で、前作が過去にタイムスリップしたのに対し、こちらは22世紀も間近という未来の話。本作の主人公の曾祖母が、前作の主人公フォギ-に当たるという設定だ。
しばしば登場する仮想空間では、寺山修司やら伊丹十三やら演劇界のホープが新宿のバーにいたり、往年のジャズプレイヤーが主人公とセッションするなど、作者ならではの遊び心も満載で楽しめるのだが…。
10年ほど前に読んだ前作は、軽妙な語り口と宇宙オルガンを始めとする壮大で摩訶不思議な物語に、これぞ小説の醍醐味と酔いしれ、お気に入りの1冊となっていた。そして今回、その続編ということで、個人的には期待が恐ろしく膨らみすぎた感もあるのだろう。
事細かに書き込まれた未来の状況や、ジャズの蘊蓄に徐々に集中力は削がれ、ひいては好きだったはずの文章のリズムまで鼻についてしまい、体言止めの多用や、常体、敬体の混用など作者ならではの持ち味がむしろ邪魔に感じた。
『虫樹音楽集』あたりから違和感が加速してきたのは、おそらく私の好みや感覚、受け止め方が変わったためだろう。ただ、『東京自叙伝』もそうだが、作品を通して昭和、平成の日本を書き残し、未来への危惧を示すという思いは伝わってくる。そして無類の音楽好きであることも。
個人的には『鳥類学者~』をもう一度読み返して、今はどう受け止めるかを再確認したいと思った。
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個人的に読むのに労力のいるSFものの中では、非常に読みやすい。
語りが軽やかで、フォギーもいつでも飄々としてるので、危機感は全くなく、楽しく読めたのはいいのか悪いのか、ですが。
出てくるアンドロイドも人間も魅力的。
前作があるとは知らずに読んだけど、問題なし。前作も面白そうなので読んでみたい。
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「雪の階」からの「ビビビ・ビ・バップ」。実は若い友人に出版当初から勧められていたのですが、手付かずに放置しておりました。2018年のミステリーランキングからの「雪の階」で、ストーリーはともかく、圧倒的に豊穣な言葉の洪水と展開のスピードに翻弄され、いままで知らなかった小説の快感を覚え、よし、今年は奥泉光で行くぞ!という訳で手にした次第です。前回の昭和初期の華族文化から、今回は二十一世紀後半の電脳世界へ。(書かれた順番は逆だけど…)でも、得られた気持ち良さはおんなじでした。むしろ、表紙にもイラストとして描かれているエリック・ドルフィーを始めとするJAZZ黄金時代を素材としている分だけ、文章にスピード感、スィング感を感じたかも。そう、JAZZのフレーズを文体にしてみる、みたいな実験なのかも。結構な頻度でインプロビゼーション的ツッコミ入るし。YouTubeで音楽検索しながらのページめくり、楽しかったです。JAZZに限らず、志ん生、談志の落語や昭和の将棋、そして新宿ゴールデン街への愛とか、たぶん著者の嗜好を構成する要素の「オモチャのカンヅメ」感も微笑ましく。言ってしまえば、重要な登場人物の容貌のモデルになっている植草甚一の晶文社のシリーズを無理矢理に未来小説にしたみたいな不思議な本でした。そう、スピルバーグの「レディ・プライヤー・ワン」の奥泉版みたいな。って言うか、こっちの方が先か…
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吾輩は猫であるから始まる軽快なSF。
SFとジャズと近代文学と古典落語に詳しければ間違いなく面白いんじゃなかろうか。
何とも言えぬ軽妙な語り口を読むだけで楽しい。安定しない、軽やかな語り口で語られる不安定な落ち着かぬ物語はどこに行くかわからない。
面白い読書体験だった。
でも、再読するならば、文庫で上中下くらいで読みたい。さすがに重い。
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初読。図書館。分厚かった。。。中身は軽やかだった。奥泉さんが好きなもの満載でつくりこんで詰め込んだSF世界。特にジャズの大御所大集合のセッション・シーンは、書いてて楽しかったんだろうなあというのがガンガンに伝わってきた。細かいところから大きなところまで、20世紀カルチャー、サブカルをちりばめて遊び心満載。頭の中で映像化するだけで、楽しめる。凝りに凝ったエンタメです。
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分厚いので、読後に達成感はある。
内容だけを拾うならば近未来ハードSFといってもいい。
ただし、いつもの奥泉節だ。
いつもの悪ふざけ大魔王だ。
だからつまり、近未来ハードSFという印象は残らない。
昭和かれススキSFと言ってもいいし、新宿騒乱SFと言ってもいいし、ジャズセッションSFといってもいい。
登場するキャラクターはみな魅力的で、会話も物語の語り口も面白い。今回は舞台設定も素晴らしい。
なのにどうして奥泉さんの小説はいつもこうなってしまうのだろうか。理屈が無理やりになってしまうのだろうか。物語が破たんしてしまうのだろうか。
ただただそれが残念だ。
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これは楽しい!この分厚さだし、ジャズはよく知らないし、というのでためらっていたのが嘘のように、ずんずん読んで大満足。「鳥類学者のファンタジア」よりメチャクチャ度が高くて笑える。
一応「近未来SF」ってことになるのかな。AI、アンドロイド、仮想現実、人間のデジタル化といったガジェットが詰め込まれている。二十一世紀末のえげつなく格差が拡大した世界が舞台で、その描写もおもしろいのだが、そこへさらに、ジャズやら落語やら70年代の新宿ゴールデン街やら、これは作者の趣味なのね、という要素がこれでもかのてんこ盛り。終盤は一大活劇となり、全篇狂騒的なグルーブ感にあふれている。ここまでするかと呆れるけれど、ワタシこういうの好きなんです。
一番笑ったのは、志ん生と談志のアンドロイドが会話する場面。これがほんとに「志ん生」と「談志」。パソコンに向かう志ん生が可笑しくて可笑しくて。ゴールデン街の酒場で野坂昭如が酔いつぶれてて、そこに中上健次や伊丹十三や唐十郎、寺山修司、大島渚などなど次々やってくる所も笑った。若い人にはわからないだろうなあ。年くってて良かった。
門外漢でも名前くらい知ってるジャズの大御所がわんさか出てくる。こちらもアンドロイドだけど。二代目フォギー(初代のひ孫)と彼らが演奏する場面は、ジャズに詳しかったらもっと楽しかろうと、それだけが残念。
ヒロイン(という言葉が似合わんなあ)フォギーが、すっとぼけたキャラであるのは「鳥類学者の~」と同じ。そんなこと考えてる場合じゃないでしょ!というツッコミを作者とともに繰り出しつつ、なんとも愛すべきジャズ者だと思いました。
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近未来の東京を舞台に、ジャズ、落語、将棋、新宿ゴールデン街などの要素をふんだんに盛り込んだ世界観に圧倒された。
独特のリズムを持った文体が面白くて、単行本で600頁超というボリュームでも飽きずに読み進めることができた。
登場するミュージシャンや文化人について調べたりするのも楽しかった。
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色んな要素を詰め込み過ぎてついて行けない所も所々ありましたが、未来の設定(世界観)は非常に面白いと思う。
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まずドルフィーがかわいい。
そして主人公のフォギーはすごく気持ちいい女性だなあ。
ぜんぜんジャズを知らないくせになぜか、「やっぱりジャズっていいなあ!」と思って読み終えた。
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これはなんというかとんでもない物語だ。あえていうなら電脳スイングミステリーとでもいうか。とにかくストーリーが広大でとんでもない。
職業ジャズピアニスト、副業音響設計士が主人公。家や公共空間の音響をデザインする。膨大な資産を保有するグローバルロボット制作会社社長から電脳墓の音響デザインを任されている。しかも(なにがしかも、かはわからないが)20世紀末から21世紀初頭の文化をこよなく愛し、その莫大な資産を用いて電脳墓の中に新宿の寄席やジャズライブハウスを再現し、アンドロイドで立川談志やエリックドルフィーを再現してしまうのだ。
そう、この時代はサイバー空間と、現実空間が入り乱れており、電脳端末は身体に直接装着されており、だからいつでもウイルス攻撃や空間位置把握、盗聴の脅威にされされているわけで、その便利さと脅威に過剰に対処しているというわけ。そんな世界では、ジャズ音楽のようにライブ・即興といったプログラムされていない世界というのはとにかくに珍しいわけで、逆にそのような「遺物として残っている世界」に惹かれていく人もいるわけで。
そんな世界で、まもなく死んでいく天才科学者の脳完全コピー版に死ぬ前の天才科学者、ジャズピアニストが戦いを挑み世界を救おうとする。
奥泉光の文体はその膨大な知識と表現を待っている世界観ゆえ、一文が長い。そこをテンポよく物語を引っ張っていくために体言止めや、丁寧語を適宜組み合わせ得ており、小気味良い。
世界を覆う生体・電脳パンデミックとジャズや落語といったライブ文化の融合が壮大なスケールで組み合わさった『ビビビ・ビ・バップ』は奥泉光のほとばしる才能が創り出すワンダーランドストーリーだ!
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女性ジャズピアニストが世界的ロボット工学者から受けた奇妙な依頼。
それが人類の命運を揺るがす事件の始まりだった。
電脳内で生き続ける命、迫りくるウイルスの大感染の危機。
バーチャル新宿から近未来の南アフリカまで、AI技術による人間感の変容を通奏低音に奏でる、類のないエンタテインメント小説!
長ぇ!
800ページに渡る自由奔放なSF小説。
ノリの軽さは銀河ヒッチハイクガイドっぽい。
ジャズと落語が好きなんでしょうが、それをSFの世界にぶち込んでアンドロイドとして往年の巨匠を登場させてしまったので登場人物の多いこと。
細かいところだと、ですます調とである調が混在していてなんか気持ち悪い。
ジャズの即興演奏のノリで一気に書いたんだろうな、という作品。
なんで読もうと思ったんだろ?
でも、いろいろ賞を取ってる作家さんなので、他の作品も読んでみよう。
いつか、きっと
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奥泉光「ビビビ・ビ・バップ」読んだ http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000189794 おおおおお。おもしろかった。。なにこれ。SFの体裁だけど(わたしはSF読まない)肉体vs意識vsAI、記憶vs自己とか、吾輩は猫であるで始まりラザニアで終わるふざけた感じとか、何より文体が超好み。初奥泉光だったけど他のも読みたい(おわり
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将棋もジャズもさっぱりわからないが面白い!
芯城とフォギーは付き合うのか付き合わないのかなどと呑気なことを考えていたらアンドロイドが壊され、ではミステリーなのかと思えば話はもっと大きく人類滅亡の瀬戸際へ。
どんな時でも酒と食べ物のことは忘れないユルい(でも音楽には真摯)ヒロインは素敵でした。