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テーマは同じだが、短編の詰め合わせ。
大元のテーマの説明が、そんな簡単に受けられる人がいるのだろうかとそもそも疑問を持ってしまうが、短編は人間の、「あとちょっと」欲がハラハラしてとても面白かった。
最後の締めくくりは、これ!っていう結論ではなかった気がして、モヤモヤ感が残りました。
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突如襲った「大忘却」と呼ばれる特異現象で、全人類が記憶が十分程度しか保てなくなった世界を描くブラックSF。本作はやや特殊な構成となっており、大忘却の発生と混乱、それを乗り越えるまでの第一部は序章に過ぎず、大忘却の原因を探る幕間を挟み、外部記憶に頼るようになった人類の細かなエピソード群となる第二部が実質的な本編である。読んだ感触としては長編というよりは連作短編のそれに近い。人間を定義する大事な要素である「記憶」と「人格」のほとんどが外付けハードディスクで賄えるようになった社会というのは偶発的であれ中々に悪夢的で、それによる社会の混乱や変化(具体的には暗記項目のテストがなくなる等)が面白かった。終盤の人間の定義や可能性にまで話が広がるのは必然とはいえやや興ざめで、そういう壮大さよりももっと身近な物語のほうが読みたかった。そういう意味では第二部の連作短編のような作りは良かったのだが、やはり少々物足りない。個人的に気になったのは外部記憶があまりにも簡単に着脱可能な点であることで、アップデートのしやすさという説明がなされてはいるものの、この取り外しの簡単さがほとんどの物語の原動力となっているため、もう少しここに突っ込んだ話が欲しかった気がする。取り外し可能で記憶が残らないとなると、やはりすぐに思いつくのは強盗や強姦といった犯罪行為で、そのあたりがどう対処されているのかが分からず、どうしても引っかかりを覚えてしまった。ただホラー出身の作家らしいゾワゾワとした感覚は健在で、倫理観や常識が足元から崩れていく恐怖や、存在の拠り所のないあやふやさなど、本作の設定でないと味わえない未知の恐怖感はひしひしと伝わってくる。特にラストのイタコの青年の好意を仇で返す老夫婦の話は人間の弱さとも相まってなんとも言えない後味の悪さがある。独特な構成とオチに向かうまでの話運びの求心力の弱さが難点だが、一つ一つのエピソード群はどれも秀逸で、設定もいくらでもひねれる良設定だと思う。
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長期記憶が持たない。生まれながらにして持たざる人間は。記憶メモリーの普及で、肉体は違っても、記憶は再生できる。生とは、死とは。
独特の会話が多く、静かな世界に浸りながら読める。
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たまたま本屋で表紙を見て面白そうな題名の本だと思って手に取ったら非常に当たりだった。
記憶が保たなくなった人類はどうやって過ごすのかと先が気になってしょうがなかった。思いの外、記憶はなんとかなるということが始めの方でなんとかなってしまい、この後の話はどうするのかと思ったが、いい意味で期待を裏切られた。
自分も記憶を無くしてまた読みたい一冊。
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相変わらずの小林泰三ワールド全開。SFなのか、哲学的なのか、ブラックユーモアなのか。独特の世界観で、自分は何者なのか、そもそも他者と自分との区別とは何か、既存の概念を根底から覆し、存在自体を危うくするような恐さがある。
以前読んだ、クライオニクスを扱った小説を思い出した。
クライオニクスとは、現代の医療では治せない病気や怪我を、その肉体や脳を冷凍保存することで、未来の医療に託すというもの。
その話の中では、脳が人間にとって最も重要で、脳さえ冷凍保存できれば、自己を甦らせることができる、とされていた。
それを読んだ時は、想像もつかない数十年、数百年後の世界に甦り、記憶だけを積み重ねて生きていくことが果たして幸せなのかと思った。
今回の小林作品は、それをさらに突き詰めた形なのだろう。
脳が記憶を保存できないなら、肉体はもちろん、脳にも何の価値はない。そうなった時、そもそも生きることに意味があるのか。
行き尽くした感のあるラストにゾッとする。
最後に。そういう問題ではないとは分かっているけれど、あえて言わせてもらいたい。
外部メモリ、簡単に外れすぎじゃないか?
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ブラックSF単行本。2部構成。
第1部
地球規模で全人類の記憶障害が発生。それによって起きたパニック、解決策を探る様を原子炉運転の緊張感とともに描く。
第2部
数十年後、人類は連続しない記憶をメモリー化し持ち歩くことで、日常生活ができるレベルになった。
果たして「自己」とはメモリーの情報なのか。
人の進化と魂の帰結は読者に委ねられる。
「自己」とは、己が〇〇だと認識し、それを他人が承認することによって生じる。
他人の記憶メモリーを挿入したからといって直ちに他人に代わってしまうわけではない。
しかし、自分が認知症になった場合、こういった事態に陥るであろう…なかなかにシンドイ作品。
外レビューにもあるが、命ともいうべきメモリーが、階段を落ちたくらいで抜けたりしてしまう仕様は改善して欲しいものです。
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ある日突然長期記憶が不可能になった人類の混乱とその後の発展(?)の話。何をもって死と判断するのか、死後の魂は、記憶はどうなるのか、誰もが一度は抱くであろう疑問に切り込んだものであるように感じた。
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記憶を外部保存できるようになるとは、すなわちその人の人格や魂を保存できるようになること…
前編では、記憶ができなくなってしまった人々がどのようにそれらの問題にまず立ち向かうか、後編は世界が大きく変わってからのお話
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古典的テーマであるが故に、読みながら/読み終えた後も色々と考えさせられました。
爽快感や感動とはまた別の、思慮深い作品です
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人々のきおくが10分しか持たなくなった世界。
長期記憶ができず短期記憶しかできなくなり、人としての生活が保てなくなり、時代が進み人はメモリという半導体に自分の記憶を残すようになる。
6つほどの話に分かれていて、最初は記憶がなくなることをメモやSNSを使い状況を改善していく話から、メモリに頼りはじめた人類に起こることがまとまっていて面白い
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外部メモリーに記憶を保存出来るようになって、他人の体にメモリーをさすと、中身が入れ替わる。
っとなると、魂って何だろう。
魂=メモリーなのかも。
輪廻転生する事で人の魂は成長していくというし、どんどんメモリーに蓄積されて成長していくのかもと思った。そんな風に想像するのがまた楽しかった。
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記憶がメモリー化されたら?
面白い設定と平易な文章で、休日午後の2時間程度で一気読みできたよ。エンディングが2001年並みのスケールに拡大されるのは少しばかり笑えるけれど、いろんなケースでの「記憶の差し替え」が面白いね。