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(2017/9/25読了)
長嶋さんの本は、面白いと感じる部分が自分のソレとピタッと合うとハマるのだけど、なんせ、この本はソレを探すのに時間があるかかりすぎた。
最初は部屋の間取りがわからなくて、見取り図のページを過ぎてからは、順不同に登場する住居人とそのエピソードを覚えておくことができず。これが全て五号室の住居人だとわかったのも、多分、他の読者より遅かったのではと思う。
住居人だけでなく、周りに住んでいる人、タクシーの運転手(→もしかしたら、最後の住居人と同一人物?)までも、伏線が張られ放題で、長嶋さんのユルさが好きな私は、ギブアップこそしなかったけど、結構時間がかかってしまった。
(内容)
傷心のOLがいた。秘密を抱えた男がいた。病を得た伴侶が、異国の者が、単身赴任者が、どら息子が、居候が、苦学生が、ここにいた。―そして全員が去った。それぞれの跡形を残して。
今はもういない者たちの、一日一日がこんなにもいとしい。
傷心のOLがいた。秘密を抱えた男がいた。
病を得た伴侶が、異国の者が、単身赴任者が、
どら息子が、居候が、苦学生が、ここにいた。
――そして全員が去った。それぞれの跡形を残して。
小さな空間に流れた半世紀を描いて、
読む者の心を優しくゆさぶる
長嶋有、面目躍如の会心作、ここに誕生
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当たり前のような1日の生活が当たり前に過ぎてゆく。いつだって一人だって、親子であっても。時が流れても季節が移っても人は連綿と生活を重ねてゆく。そんなことを部屋の視線(?)から昭和~平成の細やかな出来事、モノ、空気感を含みながら長嶋先生らしく紡いでゆく。
だけど、帯にある、面目躍如 何にたいしての?
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いっぱい考えて、つじつまがあうようにしたんだろうけど、小さな話をいっぱいつなげられてもしんどいので、もう少し大きな面白い話をつなげて欲しかった!
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自分の人生を慮り、幸せな思い出と後悔と後悔と後悔とで死んだ。6回は死んだ。「巨大なトライアングル(楽器の)」の丁寧に説明するところとか、「急に寒くそんな正しさを持ち出されることが、フェアに思えなかった」とか、他にも泣かされた。第七話の「1は0より寂しい数字」が一番よかった。
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渋谷HMV&BOOKS TOKYOで見つけた「三の隣は五号室」のサイン本を、購入!
一気に読んだ、 楽しかったなぁ。部屋が主人公というか、定点観測小説とでも呼べばいいのか。長嶋有史上でも特にテクニカルな小説のように思う1冊。登場人物たちのネーミング、家電製品や家の中のガジェットの変化そういった所がいかにもブルボン小林ぽくもあって嬉しくなっちゃう。
自分も賃貸物件居住者だけども、前に住んでいた人を知らないし次に住む人の事もきっと知らずにいるのって良く良く考えてみたら変な気がする。小説の中では、登場人物たちが緩やかに繋がっているように見えるのだけれど、同じ部屋に住んでいるのだから似たようなことを考えたりする事もあるだろうなと納得。僕の前の住人も、このスペースをどうしようか悩んだのだろうかとかね。
長嶋有は「なにも起こらない」間に大きな決断をしたり、大きな人生のうねりに飲み込まれたり、何というか「ドラマチックな展開の真っ只中」でも何も思っていない時があるという事を小説で描いていて、なにも起きていない時間やなにも思っていない時間も「生きている時間」だと思えて何だか良いのですよ。
そんな長嶋さんも15周年だそう、みんなで読もうじゃないか!オススメです!
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映画のような装丁がおもしろかった
頁をめくるとすぐに本文が始まって、そのあとに内表紙と目次が続く。映像的な作り。
年月を経て色んな人が住んだ五号室のおはなし。
ひとが主人公じゃない小説って斬新だなあ。
いろんなひとがこの部屋で生活をして、同じ所でつまづいたり、風邪をひいたり、キムタクのドラマをみたり。
キムタクで時代を反映させるって、新しいやり方だ。
時代を象徴できる、テレビに出続けているキムタクって凄いなと思ったり。
人の名前が住んだ順番になっているのもおもしろい。
霜月は11月で、ダヴァーズダはペルシア語で12。
薬を飲むと風邪は悪化する、風邪のほうが気づいてしまう、暴れていいんだな?という文章、長嶋さんらしいユーモア。
意欲作であるからこそ、すこしの退屈。
読めば読むほど味が出るのかも。
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アパートの五号室に住んだ人々の話。
個性的な間取りのせいか、同じ部屋なのに住む人によって使い方はさまざま。
自分に合わせて修理してみたり、何も触らずにあるがままで暮らしたり。でも、なんとなく前の住人の暮らしぶりがわかったり。
賃貸っていろんな人の人生がその部屋を通りすぎていくのね〜。
その時代時代の話題が出てきたりで「え、そんなドラマが実際にあったか?」と怪しい記憶をチェックするためにインターネットで検索してみたりとなかなか楽しめた。
自分が住んでいる家の前の住人のことをあれこれ想像してしまう。ふふふ。
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5号室に住む人たちをいくつかのテーマごとに書き込んである。やり方としてはおもしろいが、出てくる人たちを把握するのが面倒で、この人たちは、どうだったっけ?と分からなくなり、読みづらかった。
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第一話の後に表題紙、第一藤岡荘五号室の間取図、目次を挟んで第二話に続いていく。1966~2016年までの、四畳半三方向を障子に囲まれた変な間取りの五号室で暮らした13世帯。その生活の細やかな描写は長嶋さんならでは。
居住者の観ているテレビ番組「眠れる森」や「600こちら情報部」等が懐かしい!室内に残されたシールやホース等で前居住者に感想を持つ場面など、多彩な切り口で細部まで読み込める面白さがあり、人物ごとに些細な出来事を転記した年表を作りたくなる。長嶋さんがどうやってこの小説を仕上げたのか見てみたい。
終盤に描かれる六号室の住人の素性や諸木十三が五号室に越してきた理由は、五号室の50年間をなぞってきた一人として感慨深かった。
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第一藤岡荘の五号室に住んだ人たちそれぞれの暮らしを覗き見る。
よくこんなこと思いつくなあ。
間取図もついてておもしろかった。エピソードは順番通りでなくバラバラだけど、住人の名前に数字が入っているので大体どの辺の時代の人かわかるようになっている。
ただ眠気を誘う淡々とした雰囲気なので続けて一気に読めなくて残念。
いや、おもしろいんだけど。ほんとに。
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アパート。数字。もしかしたら読みながら退屈する人もいるかもしれないけど、こんなにも何気なさすぎる日常を細かくすくい取れるなんてすごい小説だ。
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横浜の外れの木造アパート。
四畳半と六畳、キッチンが少し変な間取りになっている三号室。
隣の部屋番号は、五号室。
その部屋に50年の間に住んだ住人は13組。
少し変な間取りの部屋を中心に、その部屋に住んだ13人が、その部屋にどんな風に越してきて、どんな風に暮らして、どんな風に出て行ったのか。
物語の中心は、少し変な間取りの四畳半。
当たり前のことだけど、部屋は何にも喋らない。
だから、話すのは専らその部屋に住んだ住人たち。
その部屋は何にも話さないけれど、それは確かにその部屋の記憶。
記憶の中で、少し変な間取りの部屋に住んだ人たちが、順不同で出てくる。
だから、本を読んでいて少し混乱する。
でも、それは確かにその部屋の記憶。
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同じ部屋に暮らした人々の、いたって尋常に過ぎた日々(尋常でない人もいるが)を、虫眼鏡で見るように拡大し、人工的に切り抜き、並べる。主役たちの些細な共通点や、受け継がれる生活環境がエピソード同士を繋ぎ合わせて、モザイク画のような多彩で厳粛な世界を描き出す。
物語が直線的にではなく、階層的に(?)広がっていく、不思議読書体験。
なんでもないような私たちの日常も、こんな風に俯瞰されうる、ある「歴史」の一部を作っているのかしら? ...そう思ったらなんだか少し力が出た。
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巧いなぁと思いながら読み進み,最後に深いなぁと思わされた。考えたことなかったけど私が住んできた部屋達にも前後の住人がいたんだよな,この後もいはるんだよな,としみじみ。
書評を読み返し,私も住民年表を作りながら読めばよかったと後悔。2回目はそうしよう。
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なんと斬新な切り口の、だが刺激の少ない(だからこそ愛おしい)小説だろうか。
「変な間取り」の小さなアパート、第一藤岡荘の五号室の最初の住人から最後の住人まで、約半世紀の物語だ。五十年という年月だから、それ相応の人数の人間が住んだ。男も女も子どもも、外国人も、若いのも年寄りも住んだ。
彼らが外の世界から帰ってきて、家のなかで見せる顔と、ふとよぎる思いをひとつずつ掬い取っていく。
大仰な事件はなにも(とは言わないが)起きないのに、時系列ではなく、起きた出来事やよぎった思いの「種類」ごとに分類されて語られていく物語を読むうちに、彼らになじみ、愛おしさを感じていく。
先の人が出て行かないと後の人はこないわけで、なので出てくる登場人物たちが邂逅することはない。けれど、部屋にのこした「軌跡」のようなもの…雑巾であったり、「水不足!」のステッカーであったり、障子の穴であったり、室内に豪快に響く雨の音だったり…が、本人たちは知らぬまま、ゆるやかに彼らを繋げているのを私たちは知っている。
五号室から一気に大きなことを言うが、こういうささいな繋がりから世界はできて、連綿と続き、歴史を紡ぐのだなあという感慨をも与えてくれた。傑作と思う。