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1巻より続く
気づき
・マルクスは自分は決して真の民主主義の道から逸脱し
ているわけではない。真の民主主義の息の根を止める
資本主義という毒ガスを除去しなければならないと宣
言しただろう
・民主主義は「市民による統治」と定義できるかもしれ
ないが、「市民」と「統治」にはさまざまな概念があ
る
・結局のところ、民主主義の原理とは、競争を勝ち抜い
て最大の支持を得た個人や集団に政権を委ねることを
意味するにすぎない。そうなれば民主的な手法のロジ
ックでは多数決制度が肯定されるように思える
・有権者の選択はイデオロギー上「市民の声」と美化さ
れているが、自発的なものではなく、作り上げられて
いくものだ。それを作り上げることが民主的なプロセ
スの本質的な要素といえる。争点に決着をつけるのは
有権者ではないが、議員を選ぶ際も、まったく自由な
状態で被選挙権者から選ぶわけではない。通常のケー
スでは例外なく主導権は候補者にある。候補者は議員
のポストとそこに見え隠れする地元のリーダーシップ
を手にしようと目論んでいるのであり、有権者にでき
るのは「他の候補者の目論見よりはこちらの候補者の
目論見の方がよい」と受け入れるか、受け入れを拒否
することだけだ
・帝政はロシアの社会のパターンが生み出した体制であ
り、イギリスの議会君主制やアメリカの民主共和制と
同様、実際には社会のパターンに適した体制であった
・ロシアの工業部門が有力な社会主義大衆政党を生み出
せなかった背景に資本主義の発展が大きく立ち遅れて
いたという事情があったとすれば、アメリカの工業部
門が有力な社会主義大衆政党を生み出せなかった背景
には、資本主義が目まぐるしいスピードで発展してい
たという事情があった
・民主主義の首相は手綱を握るだけで精一杯で行き先を
自分で自分で決められない騎手のようなものである
今日、民主主義と社会主義とどちらがよいのか、資本主義には限界がきているのではないかということが取りざたされているが歴史上特にヨーロッパ諸国でこんなに上記の主義が入り混じった複雑な時代があったとは勉強させられました。
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「民主主義とは、単に『統治する人を受け入れる機会、拒否する機会が市民にある』という意味にすぎない」(p109)
なかなかドライな指摘ではあるが、民主主義の本質をしっかりと見据え、よりマシな政治を展望するまっとうな書といえる。エリート民主主義の本丸とみなされている本書だが、そういう看板を外して、現代の民主主義の現状を踏まえて読んでみると、実に有益だ。
あえて狭くとらえつつ、効果を最大化する戦略といえる。逆に理想を大きくして、現実を一ミリも前に進めない思想はダメだ。
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第2巻では「第4部:社会主義と民主主義」、「第5部:社会主義政党の略史」に加えて、戦後のその後の展開へのコメントとして、「イギリス第三版への序文(1949年)」と「社会主義への行進」というシュンペーターが亡くなる直前の(不完全な)論文が収録されていました。
率直な感想はというと、第1巻での資本主義の深い洞察パートに加えると、第4部、第5部はやや物足りない感がありました。特に民主主義に関しては歯切れの悪さというか、分析の切れ味がどうしても資本主義に対するのに比べれば悪いなという印象でした。その意味で予想外だったのが第5部がとても面白かったこと。冒頭には自分は専門家ではないが、と断っていますが、そこらへんのジャーナリストよりはずいぶん読者をひきつける文章だったと思いますし、とても勉強になりました。第1巻よりはボリュームが少ないのであっという間に読めると思います。