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極めて魅力的なタイトルに惹かれてその意味するところを深く考えずに手に取ってみた作品。大東亜とあるけれど実質的にはボクシングによる第二次対戦後のフィリピンとの国交回復物語。たまに太平洋戦争は欧米の植民地からアジアを解放するための正しい目的の戦争だったという説を唱える人がいるけれども本作を読めばそれは少なくともフィリピンに関してはまやかしだと分かる。個人的には日本があの当時やったことは純粋な侵略行為だし当時アジア解放を唱えた人がいたかもしれないがそれはあくまで少数はであっただろうと思う。大勢が関わっていたのだから同床異夢というかいろんな意見はあっただろうけど全体としては侵略に違いない、とそう思う。そして欧米化がいち早く進んだ大日本帝国はアジアの先駆者、盟主として振る舞ったわけだがアメリカの植民地であり少なくとも首都マニラについては当時の日本より欧化が進んでいたフィリピンはいわば目の敵にされ酷い目にあった。5人に1人しか生還できなかった日本軍も悲惨だがそれに否応なく巻き込まれたフィリピンの戦後日本に対する目は極めて厳しく日本を反共の砦として活用しようとした米国の仲介も効かず、日本の大使も当事のフィリピン大統領に会えない状況で日本人ボクサーだけは現地人と交流が図れた、それがいかに国交回復に貢献できたか、という作品。多過ぎる脚注が邪魔で読みにくい部分はあるけれど裏社会の顔役や大物政治家、国粋主義者などが暗躍する国際政治と興行世界の交わりは非常に興味深い。非常に面白い作品でした。