紙の本
日本の現代政治を分析する為の一級資料
2019/04/30 22:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:パミチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の冒頭で著者は「日本の政治は、もはや家業と化してしまったのか」という疑いについて、世襲議員の比率を示して現状を指摘している。
政治家である祖父、安倍寛、父、安倍晋太郎について、丹念な取材によって、関係者から発言を引き出し、政治家としての非凡な人物像を浮かび上がらせている。
しかしながら安倍晋三本人については、地元の支持者、元学友、成蹊大学の恩師、神戸製鋼所の元上司等といった関係者にいくら取材しても、返ってくるのは「凡庸で真面目で可もなく不可もなく、優しく人がよく要領もいいお坊ちゃん」の姿しかなかった。そういった安倍晋三の人物像を聞かされると、現在の安倍内閣の実態(内政・外交・国会運営等)に不思議と合点がいく。
いたって凡庸な世襲政治家を総理大臣に頂いた我々国民の将来は果たして吉なのか凶なのか? 祈るような気持ちにならざるを得ない。
唯一救われるのは安倍晋三本人が運のよい人間であることである。
投稿元:
レビューを見る
なんともはや、安倍晋三にこれほどすごい祖父が(岸信介のことではない)いたのかと、驚いた。著者がいう晋三が空疎であるという点は全く同感。ある種のニヒリズムさえ感じることもある。政治的なニヒリズムは大変怖い。
投稿元:
レビューを見る
著者も書いているように、なぜ安倍晋三氏が2回も内閣総理大臣まで上り詰めたのかわからないと記述しているのですが、読者にとってはそれが一番知りたいわけで。
祭り上げられるには、それなりに人間的な魅力がないと神輿に乗ることができないと思うので、単に取材不足のように感じる。現在進行形の政治家なので、よく知る知人は取材を受けないと思うので、致し方無と思う。
安倍晋三氏の祖父 安倍寛氏に対比の意味で取り上げていて、当時の社会情勢の中ではかなりリベラル思想の持ち主で選挙地盤からの信任が厚かったのがうかがえるが、安倍晋三氏とは対極のような記述が多々ある。
安倍晋三氏の父 安倍晋太郎氏が岸伸介氏の娘婿を非常に気にかけているという記述が頻繁に出てくるのと、林家との確執が始まった部分は面白い。在日コリアンを支持基盤の一部にしているのは既知の事実ですが、取材に応じてくれるたのは、安倍晋三氏が離れて行ってしまったと感じているからか。
安倍晋三氏の教育は祖父 岸伸介氏の影響が働いているという記述があり、素直で凡庸というのが繰り返し出てくるが、実はそれってすごいことなんじゃないかな。周りの環境が特異な中で素直で凡庸なふりをしているように見えて、かえって怖くなった。
一国の宰相が日本減の本質としてなにもなく空虚・空疎ではないかと書かれているが、そういう人間であれば、反対に何か残そうとするものなので、指摘は微妙。繰り返し学歴は~と出てきて断じるものではないという文章は、かえって断じているのでそこは見苦しい文章。
安倍晋三氏が政治に興味を示したのは、大学時代で父親の選挙活動を手伝ううちに適性が分かったというのが、真相のよう。
もう少し引いた視点で書けば良書になったと思う。 新書で700円だったら十分に満足できる内容ではある。
個人的には、当地に住む知人の話と比較すると、情報の取捨選択に角度がついているようなので、ちょっともにょる。
結局地元の人の意見の大半は、安倍晋三氏が地元で育ってないから愛着がないってところに尽きるところに落ち着いている感じ。
よくある話ですが、人はそのポジションになった時には、それらしい振る舞いをするようになるので、それを確認した本。
(眠いので、推敲なしw)
投稿元:
レビューを見る
やや雑多な内容ではあるが、安倍首相の祖父に当たる安倍寛や晋太郎、そして現首相の周りにいた人々に接触し、インタビューの記録をまとめたのが本書。
安倍寛が抱いていたのは、政治劣化と軍部台頭により矛盾に満ちていた日本社会を是正することだった。地元の日置村にて村長を務めた経験から、民の苦しみをよく知っており、矛盾に立ち向かおうとする姿勢があった。その姿を見ていた晋太郎もまた、戦後日本における在日等の意見をよく聴き、外務大臣として現実的な対話を重ねる、実にバランス感覚溢れる政治家であったという。
それに対し現首相はというと、何度にもわたり強行採決を繰り返してきたことから先代、先々代の政治的姿勢とは一線を画す。学生時代は凡庸なおぼっちゃん、それが政治の世界で戦争を知らないタカ派政治家と関わっているうち、現在のような姿になってしまった。成蹊大の恩師、加藤節や宇野重昭の声が実に生々しい。
投稿元:
レビューを見る
安倍晋三の祖父といえば、誰もが母方の岸信介を思い浮かべるだろうが、本書はあえて父方の祖父、安倍寛(かん)に焦点を当てる。岸の孫としての安倍晋三の評価は、「岸の孫だから」となるだろうが、安倍寛の孫として見ると、間違いなく、「あの寛の孫なのに、なぜ?」となる。詳しくは是非本書を読んでほしいが、安倍寛は、現在の政治家には見いだせない「政治魂」を持つ、傑出した政治家であった。
1940年、戦争遂行のため一国一党制を築こうとした軍部に応えて政府は大政翼賛会を組織し、各政党は解散して全てこれに合流した。選挙においては、翼賛推薦候補は選挙資金が充当されるなど手厚く支援される一方、非推薦候補には苛烈な弾圧や嫌がらせが繰り返された。特高警察や憲兵は候補者を尾行し、演説の一言一句をとらえて「弁士注意!」と叫んだ。
投票率が83.16%にのぼる1942年の選挙では、、翼賛推薦候補の当選率が8割を超える一方で、非推薦候補は立候補者613名中、当選者は85人にとどまった。こうした逆風の中で、大政翼賛会にも東条英機にも反対した安倍寛は、地元の熱烈な支持を受け、当選を果たしている。地元の翼賛壮年団までが応援していた。病床に伏していたときですら、布団に寝たままでいいからと請われて、村長を務めたほどであった。
その父の背中を見て育った息子晋太郎も、父に恥じない政治家になろうと努力した。
そして3代目、安倍晋三は……….
本書を読みながら、どうしてこんなことになってしまったのだろうと何度も思わずにはいられなかった。成蹊大学で晋三を教え、後に成蹊大学長を務めた宇野重昭へのインタビューが印象的だった。著名になったもう一人の教え子、作家の桐野夏生については、少し自慢げに微笑んで語る宇野だが、安倍晋三については、
「正直言いますと、忠告したい気持ちもあったんです。成蹊大に長く勤めた人間として、忠告した方がいいという声もいただきました。よっぽど、手紙を書こうかと思ったんですが…..」
そう述べる宇野は、泣いていた。
成蹊大学名誉教授加藤節は、安倍政権は2つの意味で「ムチ」だと言う。「無知(ignorant)と「無恥(shameless)である。祖父にも父にも遠く及ばない凡庸な3代目を、それでも何かが突き動かしている。世襲について、人間について、考える機会を与えてくれる本である。是非多くの人に読んでもらいたい。
投稿元:
レビューを見る
面白い。朝日新聞出版というのを差し引いても文句なく面白い。三代各々のコントラストと最後に桐野夏生まで出して、現首相の空疎さを炙りだす。本当に現首相には映画監督になって貰いたかった。
しかし、政治の貧困と一言で政治家を断罪しても全く無意味で、要はこの国の民度の低さ・劣化度の表出そのものだと思う。改善するには将来の子供たちへの教育しか無いと思うが、こんな現世代がまともに教育を考えられるのか。悲観的になる一方です。どこから改善すればいいんですかね?
安倍寛については全く知識が無かったのでとても興味深かったです。
著書には今後も上質なルポルタージュを期待しています。テレビのくだらないワイドショーでコメンテータなんかしないで。
投稿元:
レビューを見る
安倍晋三の男系ルーツを掘り起こしながら
世襲政治の是非、安倍晋三の今のあり方を問う本。
AERA連載で版元は朝日新聞出版。
非常に面白いんだけど、
安倍寛、安倍晋太郎を反戦政治家として
絶賛気味に持ち上げながら
ただし晋三、てめーはダメだ!という
結論ありきな感じが強いのが難点。
安倍晋三に関して、語るべきエピソードが
どれだけ探してもなかったという書き手としての
恨み節がすごい。
投稿元:
レビューを見る
安倍晋三首相と父親である安倍晋太郎、おじいさんである安倍寛の安倍三代を描いたドキュエンタリー。とは言え、面白いのは安倍2代までで、現首相である晋三氏の伝記は至ってつまらない。
よく言えば、項羽と劉邦の、ちょっと劉邦に似たところがある点か?
先代2代の強烈な個性はないものの、空気のような敵を作らないおぼっちゃまなのが、現首相。強烈な個性でリーダーシップを発揮するのではなく、強烈な無個性でリーダーシップを発揮するタイプ。
こんな首相がいてもいいとは思うのですが、青木氏は批判的です。
投稿元:
レビューを見る
安倍晋三のルーツは山口県大津郡日置村蔵小田、現在の山口県
長門市油谷蔵小田にある。しかし、安倍晋三自身が口にするのは
母方の祖父・岸信介に関することが多い。
「私は安倍晋太郎の息子だが、岸信介のDNAを受け継いだ」
「昭和の妖怪」と呼ばれる政治家については没して以降も研究が
続けられている。それだけ政治家としてのスケールも、存在感も
大きい。
では、「安倍家のDNA」はどこへ行ったのか。本書は安倍晋三の
父方の祖父である安倍寛(「ひろし」ではなく「かん」)からの安倍家
のルーツを辿る。雑誌「AERA」連載の記事に加筆した作品だ。
この寛氏が途轍もなく凄い。寒村の素封家に生まれ東京帝国大学
を卒業し、政治家を志し、その資金を稼ごうと起業するものの関東
大震災によって打撃を受け、故郷の村に戻る。
肺結核から脊椎カリエスを発症しながらも、村民の強い要望により
病床に就きながらも村長に就任。そして、村長を兼務しながら国政
に打って出る。
特に戦中の1942年に行われた選挙が圧巻。既に日本の政治は軍
部に独占され、大政翼賛会が幅を利かせていた時代だ。選挙自体も
翼賛選挙と言われ、翼賛協議会の推薦候補以外には憲兵や特高が
目を光らせていた。
その選挙に非推薦で立候補し、当選した数少ない議員のひとりが
寛氏である。この時、やはり非推薦で当選しているのが三木武夫
がいる。
金権腐敗を糾弾し、軍閥のやりたい放題を批判し、戦争に反対し、
早期の戦争終結を主張した人である。満州国を「私が設計した」
と豪語し、敗戦が色濃くなると戦争責任回避の為に東条英機に
反旗を翻した岸信介とは正反対に位置する政治家だった。
なのに、安倍晋三には岸信介のDNAを受け継いでいるらしいのだ。
それは、寛氏が晋三誕生の遥か前に亡くなっており、地元での活動
に忙しい両親に替わり、母方の祖父である岸信介が遊び相手になっ
てくれたのもあるのかもしれない。
だが、安倍晋三の父である晋太郎氏は「俺の親父はエライ人で」や
「俺は岸信介の女婿ではない。安倍寛の息子だ」と言っていたの
だけれど、そこは安倍晋三のなかでは「なかったこと」になっている
のだろうか。
晋太郎氏には戦争体験があり、終戦が遅れていれば特攻で命を
落としていた可能性もあったという。だからこそ、平和主義者であっ
たのだろう。この父方のDNAを受け継いでいたのなら、今の政権
はどうなっていたかを考えてしまう。
本書は祖父・寛、父・晋太郎、息子・晋三の生い立ちを章を分けて
書かれており、晋三の章を描く筆はかなり辛辣でもある。著者では
ないが、大学卒業後、社会人になってからも政治的な思想は抱えて
いなかった晋三が、何故、岸信介に依存するようになったのかは
大いなる疑問である。
やはり政治家になってから岸信介を知る先輩政治家から「岸先生
はすごかった」と刷り込まれたのかな。
尚、父・晋太郎氏の章で彼の異父弟であり日本興業銀行の頭取を
務めた西村正雄氏が亡くなる前に雑誌に発表した論文が掲載され
ているのだが、この内容が甥である晋三への貴重な警告になって
いるのに驚く。読んだかな?晋三は。
「寛さんも晋太郎さんも立派な人だった。だが、晋三は…」
地元の人々の多くがそう口にしたという。地元にも三代目に関しては
危惧を抱く人がいるんだね。おまけに大学で晋三を教えた教授陣も
かなり辛辣な評価を下している。
安倍晋三を評して「安倍首相は岸信介教の熱狂的信徒」と言ったの
は、なかにし礼だった。しかし、いかに心酔してもうわべをなぞった
だけで、非常に薄っぺらい劣化コピーでしかないと思う。
思い出してくれないだろうか。安倍寛のDNAを。
投稿元:
レビューを見る
「3代」の評伝を書く場合、間に挟まれた「2代目」をうまく描けるかどうかが鍵を握ると思うが、本書の「2代目」安倍晋太郎については、子息安倍晋三の凡庸さを強調するためにやや過大な評価を与えているとの印象を受けた。タカ派派閥の清和会にあって、それに背反する「バランス感覚」を称える証言を多く採用しているが、これは取り巻く状況によっては確乎たる識見がないとも言え、「平和主義者」「リベラル」という形容も1980年代までの思想構図の中では疑問が残る。1980年代にポスト中曽根を競ったいわゆる「ニューリーダー」のうち、実務派の教養人だった宮澤喜一や老獪な世話人タイプの竹下登に比べ、晋太郎はひ弱な「坊ちゃん」とみなされ(その点は現在の安倍晋三に通じる)、「所詮は岸信介の娘婿だからな」とよく周りの大人たちが談義していた記憶が個人的にはあるので、余計その感が募る(本書によれば岸を引き合いに出される度にムキになって反駁したというが、そのこと自体が性格的な脆弱さを示している)。
安倍晋三に対しては、政界入り前は、小器用だがおとなしく目立たない腰の軽いボンボンで、岸信介を敬慕している以外は右翼色の片鱗さえなかったことを明らかにしているが、これはある意味極めて現代的・普遍的で、著者は意外に思っているようだが、私がこれまで実際に見てきた「右翼学生」「右翼青年」「ネット右翼」などにはむしろこのタイプが多かったので、安倍をそうした傾向の先駆と位置付けられると思った。「所与の秩序」に「良い子」として積極的に順応しているからこそ、それを乱す「異分子」に対する被害意識が肥大化する点に、現在の「右傾化」の本質の1つがあると考えられ、安倍を含め政界における「ナイーヴなタカ派」の増大を単に「政治の劣化」「民度の低下」と切り捨てるのではなく、現代社会の構造的変化の反映として分析する必要を痛感した。
投稿元:
レビューを見る
現内閣総理大臣・安倍晋三を含めさかのぼること三代の評伝ルポ。
晋三の祖父に当たる安倍寛という人物を私は知らなかったのだけど、大政翼賛会などが跋扈する昭和十年代にあって翼賛会の推薦なしで様々な妨害を受けながらも当選した人。平和や人々の生活を重視するような考えをもちながらも、志半ばで病に倒れた傑人。正直なところその理由がいまいちよくわからないのだけど地元の人々の信望厚い人物だったとか。
母を知らず幼いうちに父・寛を亡くしながら昭和後期の政界の立役者の一人だった安倍晋太郎のことは大きな眼鏡の人というイメージで私も記憶している。人物像や政治的活動をよく知っているわけではなかったけど、本書で書かれていた人望の厚さとか性格の穏やかさ、選挙地盤との関係もあってのことだろうけど下関の在日朝鮮韓国人との腹を割ったつき合いのこととかも「ああ、あの風貌の人ならさもありなん」と思えた。
晋太郎の息子に当たる晋三(以下、安倍くん)は、期待されながらも国会議員としての活躍がそれほどできなかった寛や、総理の座を射程におさめながらもがんで亡くなった晋太郎がなし得なかった総理大臣をやることができている人物。
でも著者はとっても辛らつにいい子だけど凡庸で空虚なお坊ちゃま気質の人物として安倍くんを描く。だから、安倍くんいけすかんと思っている私には気持ちよく読める本。寛、晋太郎に対するものとは正反対の安倍くん評で、著者は取材した人物の言葉も借りながらかなりの強さで安倍くんを批判している。確かに安倍くんはその批判に値する人物だと私も思っているのだけど、ちょっと露骨すぎてバランスの悪さが気になるところ。
そこで、ちょっとだけ安倍くんを好意的にとらえるとすると、そこはやはり彼が1回目の総理大臣をおなかが痛いからってやめてから返り咲くまでのところ。それまでになく地元の会合などにも顔を見せていたというのは別の記事かなんかでも読んだことがあるし、安倍くんが復活したことで日本は本格的におかしな方向に向かおうとしているわけだけど、その傲慢なまでの強さを身につけたのはすごいなあと思う。あの頃に何があったのだろう。
とはいえ、私が見た目で感じていたように空虚な安倍くん。著者が恣意的に取り上げているにしても、縁のある人々からこれほど批判的や疑問を呈されるってどういうことなのだろう。彼の母校である成蹊大の、またそれ以上に日本の政治学の最高碩学ともいえる宇野重昭氏などは、目に涙を浮かべながら安倍くんが進む道のおかしなことを憂い、2つのムチ(無知と無恥)を指摘した師(といっても安倍くんは彼らから学べていないのだが)もいた。
妻・昭恵さんがいみじくも、夫は映画が好きで運命の役割として総理を演じているような気がするといったことを述べているのだけど、まさにそんな感じで国会を、政界を、日本を舞台に安芝居が演じられているのが現状。しかもなぜかそこに拍手を送る少なからぬ国民たちがいる。私にとってはわけわからん歌手が人気を集めたり「アーティスト」を名乗っていられるのと同じようなことが、政界でも普通に起こっていてそれが現代ということなのだろう。明日を生きていく子や孫がいる人たちが喜んで安倍くんに拍手しているのがわけわからん。
投稿元:
レビューを見る
日頃、国益とか、国家機密とかいいながら、みんなで集まって酒を飲んでいるということを、世界中に発信している。 飲むのはかまわないが、それを平気で発信する。大災害の夜ということで非難されたが、それ以上にそんな隙だらけの人たちの集まりで良いのか?官邸という所は。
安部四代にならないことが、唯一の救いかと思いたい。
投稿元:
レビューを見る
★4.5(4.00)2017年1月発行。祖父安倍寛(カン)、父晋太郎、そして現首相の晋三の3代にわたる政治家について記したルポルタージュ。安倍首相は岸伸介の孫であるという事は有名だが、この母方の祖父に負けず劣らす優れた政治家であった父方の祖父寛氏がいたというのは地元くらいにしか知られていないのでは。それにしてもここまで祖父、父のことを調べあげ、安倍首相自身についても調べ上げたルポはなかなか素晴らしいですね。安倍首相の生い立ちが分かって面白かったです。安倍晋太郎氏と西村正雄氏が異父兄弟というのも驚きですね。
投稿元:
レビューを見る
『安倍三代』(青木理)【レビュー】
私も安倍晋三氏の表情や発言から、首相としてはあって欲しくない軽薄さを多々感じることがある。だから、個人的には好きではない。
そんな私がどうやって安倍晋三が造られてきたのかを知ろうと考えるきっかけになればと、メディアでよく目にし、耳にしてきた青木理氏の著作を初めて手にしたわけだが、青木理氏の安倍晋三批判の姿勢が前面に出ているために、ちょっとひいて読むことになったのが残念でならない。
時代的にも、環境的にも、安倍晋三が育った道程は豊かさというところを除けば、多くの戦後世代の育った道程の典型だった様にも思える。もちろんそれが、政治家を目指し、一国の首相になった結果に照らし合わせると、そんな奴に国の運営を任せなくても、いくらでももう少しマシな適任者がいるということには私も同意する。
安倍晋三の肩を持とうなんて気持ちは毛頭ないが、あの家庭環境に生まれて、凡庸なまでに、そのまま『敷かれている線路を進んできただけのボクの何処が悪いんだ!。もっとまともな奴がいるなら、そいつを首相に選べばいいじゃないか、ボクが首相に選ばれたんだから、ボクのお祖父さんの理想をボクなりに解釈して実現するのが僕の使命だ』と彼は思って決意しているように見える。
私も、安倍晋三氏みたいには豊かな家庭環境ではないが、それなりに大学を卒業して企業に勤めているが、学生時代の自分の周囲に青木氏の語るような、政治的信念を持っている奴はいなかったし、理想社会への熱意を語る奴もいなかった。いなかったけど、社会に出てから、現実に触れ考え方を新たにする者、仕事をしながら猛烈に勉強してそれを補って地域に貢献している者はいる。
学生時代の姿で全てを決めようとする本書のスタンスは、安倍晋三の軽さに劣らず好ましくない。
そんなスタンスの著書だが、意外だったのは安倍晋三の妻昭恵の夫を見つめる視線とそこに映し出されている姿を語っている部分。
青木氏は「天のはかり」、「天命」「使命」とスピリチュアル、オカルト的と片付けているが、これは妻としてもっとも身近にいる人の意見を求めているのだから、そういった視点でいいのだと思う。そんな昭恵の言葉に『主人は安倍晋三という日本国の総理大臣を、ある意味では演じているところがあるのかなと思っています』
というのがあって、そうやってテレビ画面に映し出される安倍晋三をしばらく眺めていたら、その感覚が見事に伝わってきた。
この感覚は、私にもある。あるからわかるのどけれど、脚本がしっかりしていないと演じきれないのだ。安倍晋三が軽く見えるのは、その脚本を自分で書いていないところにあるのではないだろうか。頼りになるお祖父さんや、周囲を支えてくれる仲間たちが書いた脚本に縋っているところが、その演技の台詞に観客(国民)を魅了する力がないのだ。ーーだがそれはある意味最悪な結果を招いていないともいえる。ヒットラーの様に人の心を鷲掴みにする安倍晋三だったら青木氏を含め日本国民を陥れることはもっと容易かもしれないから。
そしてもうひとつ良かったのが、安倍晋三と同じ成蹊大学の法学部出身、宇野重昭ゼミの3年先輩の桐野夏生の言葉、これは本書の主旨とは少し外れているが、桐野と安倍晋三の見つめているものの深さを対比するには良い材料だと思うのであえて書いておくことにする『個がなければ公への認識が生まれない。公への奉仕が強制的に求められるとしたら、ファシズムです。日本の現状ではむしろ、もっと個を強くしていくべきじゃないですか。どんどん「私」を主張すればいい。しっかりした個の土台の上に、ほんものの公共は生まれていくと思います』
投稿元:
レビューを見る
自民党、つまり現在の日本政治について理解するためにKindleにて読了。地に足のつかない、戦争経験もない三代目が、空理空論で政治を動かしてしまう。それが日本の政治制度(精神)のある種の必然的な帰結である、ということを、多くのインタビュー取材を踏まえて描いており、非常に勉強になった。それは日本社会の他の場面でも通用する気がする。次は同じ著者の『日本会議の正体』を読んでいる最中。また安倍晋三のもう一人の祖父・岸信介についても、一冊読みたい。