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とてもおもしろかった.
権威を背負わない少年,音楽を外へ連れ出す,とかピアノの森へのオマージュって言われたらとても納得する.
ちょっと前の恩田陸みたいに広げた風呂敷を愛でて終わるのではなく話を結んでよかった.
この路線すき.
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2016.09.30 読了
蜜蜂と遠雷
舞台は国際ピアノコンクール。
物語はコンテスタントと審査員、それぞれの視点を通して同時並行的に描かれ進む。
臨場感がすごい。
自分も会場に居合わせ登場人物たちと同じ空気を吸っている。2週間に渡るコンクール。コンテスタントの悲喜こもごもをすべて目の当たりにしている実感。
風間塵はどんな演奏をするのだろう。栄伝亜夜はコンクールの先に何を見出すのか。
そして誰がコンクールを勝ち抜くのか。
恩田陸を読むのはドミノに続き2作目。
音楽小説ということで宮下奈都の『羊と鋼の森』のような満ち足りた読後感を期待しこの本を手に取ったが、期待以上の大作だった。
人は誰しも至高体験を求めて生きている。
才能や運命に翻弄されながらも、誰よりも強くその至高の一瞬を追い求める。それが音楽を通じてなのか、スポーツ、はたまた別の何かなのかは人それぞれ。
そんなことを考えた一冊。
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読み始めてからまず思ったのが、一音一音を漏らさずに聞くような丁寧さで読みたいと思った。ざーっと読んでしまうことが多いが、この小説はそんな風には読みたくない。ちゃんと読みたい。味わいたい。
ゆっくり、焦らず読み進めていった。それでもコンクールの臨場感はたまらず、ワクワクしてページをめくる手がとまらなかった。登場人物も魅力的で、人間の豊かさに目を張った。そうだ、そういえば、人間と音楽はこんなに素敵なんだ、と、久しぶりに感じた。音楽を言葉で表現することはとても難しいのかもしれないが、この小説ではそんなことも感じず、知らない曲でも言葉によってその音楽が内に響いてくるような感じだった。
世界は音楽で溢れている。
『永遠は一瞬で、一瞬は永遠』にという言葉に痺れた。優しい音楽で満たされてとても心地よかった。一瞬のために永遠を懸けられるほどの情熱が、とても輝かしく思えた。しばらくは次の小説を読まず、この余韻を楽しみたい。そんな小説だった。
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読んでいる間ずっと音楽に包まれていて贅沢な気持ちでした。どんどん先を読み進めたいのに、終わってしまうのが惜しくてこのままずっと続けばいいのにと思っていました。
途中、何度も出てくる「音楽を連れ出す」という表現、いまいちよくわかっていなかったのですが最後の最後でそれこそ雷のように心にすとんと落ちてきました。
ピアノが好きで、音楽が好きで、この本を手にとったので入り口は音楽でしたけど、途中から恩田陸さんの文学に引き込まれていて、気がついたら目の前には世界が広がっていました。世界には文学も音楽もすべて包んでくれる優しさがあるな、って微笑んでしまうような読後感です。
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これはすごい。
そりゃ音楽の世界が奥深いってことくらいは知ってましたが、こんなにもすごいとは・・・
一曲の説明が何ページにも渡り、それが押しつけがましくなく、飽きずにどんどん読めてゆく。
最後、ページ数がどんどん減ってきて、「このペースで大丈夫なんやろか?まさかの尻切れトンボ?」と恐れていたが、まぁうまくまとめてあり安心。
こんな小説は他の人には書けないだろうなぁ・・・
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直木賞受賞。かなりの分厚さだけど面白かった。
文章を読んで音楽が頭の中に流れる。ピアノコンクールが舞台。数人のコンテスタントを軸に周りの人の視点からも描かれるコンクール。子供がコンクールに出るのでスケールは違えど共感できる部分がたくさんあった。コンクールにかかわる人が思っていることを的確に表現してびっくり。
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いつもながら装丁買い。
しかし、中身も想定外だった。寝る時間を惜しんで読んだ。続けて2回読み返した。
よい耳を持っている人がうらやましい。クラシックを聴くことは好きだけれど、音の違いには気づけない。でも、音楽を聴いて、情景や物語を想像することは少しできるかもしれない。
ブラームス、ベートーベン、ショパン、リストなどなど過去の作曲家は本当にすごいなあと思う。今でも色あせない。現代も作曲家はたくさんいるのだろう。でも、彼らの創りだす音楽はどれほど後世に引き継がれていくのだろうか。
そんなことをつらつら考えながら読んだ。読めば読むほど、深い味わいを感じられそう。
そして「春と修羅」という曲がどんな曲なのか聴いてみたい。明石さんの宮沢賢治の思想に寄り添ったカデンツァを、亜夜のすべてを包みこむ大地を想わせるカデンツァを聴いてみたい。
久しぶりに読み応えのある物語に出合った。
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恩田陸がとある国際ピアノコンクールを描く、音楽小説。
方々で好評判だが、確かによかった。傑作あるいは名作というより、力作であり、読み応えがすごい。
ピアノ弾きを主人公に据えた作品は漫画では時々目にするし、そこにある天才の描写や、挫折と成長という青春・成長ストーリーも目新しいものではない。しかし、安定と鋭さを併せ持った文章がなすこの作品は、鮮やかでとても印象深い。
また、例えば年増のお兄さんを入れるあたり、物語の幅の取り方も上手い。
音楽や芸術を表現し、読み手に響かせるのは、難しくてセンスがいると思う。バラエティに富んだ作品を一定ペースで書き続けている筆者が書くと、こんなにも安心して読めるものか、としみじみ感動した。
4
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主人公たちが予選、本戦と勝ち上がっていく様子は、三浦しをんの箱根駅伝小説「風が強く吹いている」とも通じるサクセスストーリーでわくわくしながら読めました。クラシックの代表的なピアノ曲がいっぱい散りばめられていていくつかはYoutubeで聴きながら。。。
ずばり2016年下期のベスト!
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この作家の作品を読むのは初めてだが、上手くのめりこむことが出来なかった。どうも物語の「構図」や「意図」に注意がいってしまう読書体験だった。
風間塵の天才性、存在感はともかくとしても無垢を表現するための行動と「台詞」があまりにもマンガ的というか記号的というか、ファンタジー過ぎて、ほかのキャラクター(特にアヤとマサル)もマーケティング的な意図がばっちり見え透き、想定を決して超えない流行りもののアミューズメントを書いてみましたという感じ。
作家の方のご苦労を思うと、うまく乗れずに申し訳ない気持ちである。
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本当に素敵な物語でした。
その一言で終わらせたいくらいに。
国際的なピアノコンクールをモチーフとする。
そのこと自体の難しさを想像すると気が遠くなります。
でも
そこに載せるメッセージの尊さを読者に伝えるためには
避けられないモチーフだったこともすごく理解できます。
恩田さんは 学生ジャズオケの名門
ハイ・ソサエティ・オーケストラで
サックスを吹いていらっしゃったとか。
決して音楽とは無縁ではなかった恩田さんでも
クラシック界のブラックボックスぶりには
手こずられたのではないかとお察しします。
閑話休題。ここからが全力のレビューです。
どなたかも書いていらっしゃいましたが
塵と亜夜のセッションから 物語は大きく動いた
と思います。
ホフマン先生の「ギフト」という言葉の謎が
解きほぐされていく…その過程を そうして
過去の呪縛を自らの意志と音楽への愛で
断ち切っていく亜夜の 塵の演奏に触れるごとに
大きく変化してゆくその姿を
追っていく喜びは もう…言葉になりません。
音楽を外へ…というメッセージには
おそらく多くの方がレビューで触れると思うのです。
なのでわたしは 私の琴線に触れた二つのことを
書きたいと思います。
「春と修羅」のカデンツァに対するマサル 亜夜
そして塵の解釈と演奏には目を開かされました。
宮澤賢治を愛し かつて研究していたわたしには
恩田さんの賢治への深い理解が伝わってきました。
でも。
コンテスタントたちの解釈の中でも 最もわたしの
心に響いたのは 高島明石でした。
だからこそ 二次予選で敗退した彼にかかってきた
事務局からの電話に「よしっ!よしっ!」と小躍り
せずにはいられませんでした。
物語の中で 明石の存在はとても大きい。
塵が「ギフト」ならば 明石は亜夜にとっての
「救い」であり 亜夜もまた明石にとっての「救い」
だったと思います。
そうしてもうひとつ。
この物語の素晴らしさは最後のページに尽きます。
そこには表彰者の名前が並んでいます。
1位から3位までの入賞者の序列と
奨励賞にチャンが入っているという事実は
今のクラシック界の暗い現実を強く反映しています。
そして
明石の受賞は 音楽の未来への大きな希望を感じます。
痛快なのは
1位から3位までの誰もが
このコンテスタントで過酷な予選を勝ち上がり
本選で素晴らしい音楽を作り上げた3人の誰もが
本選のステージでは
賞などよりももっと大きくて大切な
それぞれが目指す それぞれの何かを求めて
自分の演奏を そして互いの演奏を
心ゆくまで楽しんでいただけだったということ。
そうしてそれぞれが
賞ではない素敵な何かをつかんで
コンクールを終えたこと。
彼らが未来においても友人として
互いの演奏を聴き ���れを楽しむ人生を送ることは
イメージとしてあちこちに暗示されています。
そんな素敵な人生を可能にした天才ピアニストたちの
純粋無垢な友情と互いへの敬意こそ
わたしには とびきりの「ギフト」でした。
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上下段組500ページを超える作品だが、長さを全く感じないどころか、終盤は残りページが減るのが名残惜しいくらいだ。
たまに疑問作もある直木賞だが、本書は文句なしだろう。
音楽演奏を文字で表現するという本質的な不可能に挑戦し、成功している。
この本に書かれた曲や演奏を聞いてみたいと、強く思った。
数多の才能がひしめく音楽の世界で、それでも天賦の才能に恵まれた者のみが勝ち残る不条理故に生まれる人間模様が、何よりも印象に残る。
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初読。図書館。ピアノコンクールを舞台にいろんな背景をもった若き男女が栄光を目指して競い合う。OH!なんて爽快なまでの単純な物語!マンガかラノベか!。しかし恩田さんが、圧倒的なまでの筆力で音楽と音楽家を緻密にそして劇的に描き上げる。そのパワーに押し流されるように読むのがやめられない。いつもの恩田さんに特徴的な謎も不穏さも歪みも恐さもかけらもなく、どこまでも清々しいほどのまっすぐさ。かえって「こんな直球書いていいんですか?」と心配になるくらいの新境地。音楽を「読む」快感を堪能できる、今年ベストの1冊。
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ピアノコンクールって大変なんだと、痛感させられた。
普段はクラシックなんて聞かないが、彼らが音楽を通して描く世界を垣間見たくなってくる。
ただ残念なことに、1次・2次・3次と進む毎に、音楽を表現する言葉に新鮮味が薄れ、逆に哲学チックなしつこさも。
塵についてもどんな展開になるのだろう、何をしてくれるのだろうかと期待していたのに、なんか中途半端に消化不良な感も。
塵が父親と一緒に養蜂しているシーンや、ホフマン先生との話ももう少し欲しかった。
とはいえ、500頁2段組の長篇を飽きずに読ませるのは流石。直木賞も納得。
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「夜のピクニック」の恩田が帰ってきた!と言っても過言ではない珠玉の青春小説は12年ぶり(夜ピク以来)の五つ星(笑。こういうのがあるから追っかけがやめられないのです。