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この作者の作品は好きでよく読んでいるが、好評に期待感が募ったものの、序盤だけ読んだ限りではやや薄い印象。
コンクールに入ったら盛り上がるのだろうか…。
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正に傑作。恩田作品としてかどうかは分からないけれど、私には傑作で、読書で最高の贅沢を味わった気分です。「さあ、音楽を始めよう」に涙。こんなにも膨大なイメージの羅列で音楽をここまで鮮やかにうかびあがらせる事ができるなんて。音符を譜面通りに鳴らせば楽曲は弾ける。でも肉付けするのは奏者の音楽性…つまり想像力、イメージ、物語の創作性。恩田さんがピアニストなら相当の実力者だったんじゃないかしら。コンテスタント達が塵の存在で大きく覚醒し変化し、音楽への愛を深める課程は素晴らしいの一言。ラストの順位はもはやオマケ。
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文句なし。面白い!一気読み。
恩田陸さんの、瑞々しさとスピード感はいつもながら。
国際ピアノコンクールの一次予選から最終選考までの物語。
この手の物語だと、選考が進むにつれて描写が長〜くなってきがちだと思うけれど、この作品ではむしろ逆。
コンクールを誰が勝ち抜くのかということより、コンクールという特別な日々の中で、4人のピアニストたちが、お互いの音楽にふれあい、急激に、鮮やかに花開いてゆく過程の物語だから。
亜夜。
マサル。
明石。
そして、塵。
亜夜は、自然も人の営みも全てを楽しむ鳥のよう。
マサルは、山の頂にあって、力強く揺るぎない。
明石は、地上の普通の人々の隣に。
塵は、まさに神の視点から。
世界は音楽に満ちている、と作中にあるけれど、世界から音楽を引き出し、楽譜に表現し、奏でるという、関わったひとそれぞれの在り方によって、また音楽は無限に広がっていくんだと、4人が教えてくれる。
凡人の身では、彼らのようには音楽を受け取る事は出来ないとしても、音楽は特別な力を持つ、素晴らしいもの。
クラシック音楽の知識がないことが、こんなに残念だった事はないかも。
巻末のオマケにでも、4人の選んだ曲のリストがあったら、曲を聴きながらもう一度味わいたいと思う。
もちろん、できることならぜひ、恩田さんの脳内イメージで選んだ演奏で!
それにしても不思議なタイトル。
私は、塵が、地上にあって人の間で音楽を奏でて生きていくためにある両極のもの、と感じた。
人のささやかな営みに愛を感じさせる「蜜蜂」と、神が自然を通して無慈悲な運命を告げる「遠雷」。
どちらにもふれているから、塵の演奏は天上と人の間をつなぐことができるのではないかなぁ。
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ピアノコンクール。文字だけれど、音楽をやっていてぞくぞくするあの感情をきちんと表現してくれてて嬉しかった。そうそう、あの瞬間のために止められないんだよね。
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ピアノコンクールを舞台にした群像劇。若干漫画風味なところもあったものの、登場するコンテスタント達が個性的な上に、演奏の描写がとても多彩で音楽をしっかり文章にしているので、想像力がかきたてられた。おかげで、映像や音楽が脳内に浮かび、実際にその場にいるかのような臨場感を味わい、ゾクゾク、ワクワクと興奮しました。小説に出て来る聴衆と同じように、私も芳ヶ江国際ピアノコンクールの世界にたっぷりと浸ることができ、お話っていいなあと素直に思えた。
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眠くても読むのをやめられないくらい面白い本だった。
もし音楽の神様がいるなら〜ではなく、音楽の神様は確実にいることを前提で登場人物が悩むのが好き。
『春と修羅』がモチーフとして作中に出て来るのも、とてもいい。
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(事故で)結果発表のページをチラ見してしまったり、読書メーターでネタバレを覗いてしまったりして、一位を亜夜と勘違いしていたので、「亜夜が一位はできすぎだしなんか嫌だな~」と沈んだ気持ちで読んでいた。
だから、そっちが一位か!と分かったときは本当に感動して結果発表のページを開いたまま呆然としてしまった。
この一位には凄い説得力がある。恩田さんの狙いにまんまと翻弄された気分だ。
また、途中で何度か読むのを中断したのだが、戻って来る度簡単に世界に引き込んでくれる文章は本当にさすがだ。リズム感とイメージ喚起力が半端ではなく、プロの仕事だ、と思わされる。後述する残念な点もあるが、この文章と下調べが入念な点を合わせて★4をつけた。
気になったのは「泣きたいような気持ち」の多用。こればかりはかなりしつこい感じがして、もっと他に表現はなかったのだろうか?と疑問に思った。
残念な点は、人物描写に深みがなさすぎるということだ。正直これは終盤まで頭から離れない問題で、もっと生活感があり生きている感じがあり苦悩も挫折も真に迫っている感じならば、ずっと入りこめたのではないか、と思わずにはいられない。勿体ないのだ。
明石は恩田作品にはよくいるふんわりした不思議な魅力のある男性で、うーんまたこのタイプか……とガッカリ。亜夜も塵も天真爛漫系天才と、恩田陸にとっては書きやすいのかもしれないが毒にも薬にもならないような性格。特に亜夜の苦悩はまったく響いてこない。恩田陸の考える挫折ってこんなもん?と残念な気持ちになった。もっと自罰的だったり深い情動のある人を書いてもいいんじゃなかろうか、その方が物語も盛り上がるのでは、と思ってしまう。
まあ確かに、苦悩や挫折を書くのは他の作家でもできることだから、恩田陸がやらなくてもいいのかもしれないが……。才能を書くにあたって、もっと深い人間描写は必要だと思うし、恩田陸の登場人物にももっと心を揺さぶられたいと思ってしまうのだ。エンタメの人である恩田陸に望むのは筋違いだろうか?
だが、もう一つ高みに登るためには必要なことだとも感じる。
恩田陸の「世界の秘密を教えてくれる」姿勢は健在で嬉しい。音楽とは、と深いところまで思索する部分は面白く読める。世界を俯瞰してくれる恩田陸はとても好きだ。
色々書いたが、今まで興味の範疇になかった音楽に対して、少なからず興味が湧いてくるのは確かだ。この本の冒頭ページのプログラムから、何曲か聞いてみたいと思う。
この本を読んで音楽が聞こえたという方はピアノ曲をもともとよく聞いているのではないか。
私にも聞こえそうになった瞬間は確かにあったが、曲の形はなさなかった。
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あるピアノコンクールを舞台にした演奏者たちの群像物語。登場人物が各々刺激しあい成長しながらコンクールが進行する展開は面白かった。音楽を言葉にするとこは詩的で美しい文章で心に響くも残らない。不思議な感覚。素敵なエンタメだった。
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読んだ直後に感じていたことは、
この作品で著者が書きたかったことを
私は本当に好きだ
ということだった。
読んでいるまは、もう、貪るように
言葉を取り込んだ。
コンテスタントのそぎおとされた
純度の高い感覚に少しでも近づけるように
集中して見守った。
音楽は自分の中にある。
それを世界に連れ出す。
音楽に音楽を返す。
感謝する。
高い次元で音楽する人々を
羨望と尊敬で見つめています。
また読みます。
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まだ出版されて間もないこともあるが、悪評の少ない本だ。初期の投稿者にはコアな恩田ファンが多いのかもしれないけど、この本に触れた人の多くは文章から音楽を感じ、コンクールの盛り上がりを実感している。クラッシックの造詣が余りない私としては文章で楽しむだけでは物足りず、読みながらYouTubeで楽曲を検索したりもしたが、将来的には映画化に期待したいところである。
それにしても、音楽家というのは大変な職業だ。幼いころから情熱を傾けて高みに登り詰めたとしても、音楽で食える人はごくわずか。そのわずかな人々は多分に若い人たちの情熱にその職を支えられていて、その次世代が巣立つ場がコンクールなのだろう。この物語も、塵マサル、亜夜子といった次世代と、三枝子、ナサニエル、ホフマンなど育てた側の両方の視点から描かれている。
とはいえ、音楽を主題とする群像劇なので人物の彫りには乏しく、書評の中にもその点を指摘する向きもあった。コンクールのコンテスタントたちはそもそも人生経験の少ない層であるし、更に言えば、ミュージカルに人物造形を期待するのかといえば必ずしもそうではない。短期間のコンクールの盛り上がりの中で何ができるのかと言えば、大人の側も、コンテスタントの側も、恋愛の結末が記されずすべてを音楽に昇華させている点が不満と言えばそうかもしれない。
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ピアノコンクール×恩田陸は面白くないはずがない。ページ数は最初ぎょっとするほど多いけど、夢中で一気に読ませる物語のドライヴ力は流石。コンクールでの出会いやもたらさせる刺激によって若者たちがが自分を見つめ直し成長する、その過程の描写が丁寧で良かった。ピアノの表現も視覚的、映像的な描き方でとても綺麗。読了後も心の中にあたたかな光のようなものが残るようなお話でした。
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始めのうちはおもしろかったし共感もでき、曲の説明も分かりやすかった。
けど、だんだん演奏中の各コンテスタントの描写や説明の長さに飽き飽きして、途中から字面だけ読んでた。
もっとピリピリした感じや押し潰されそうな感じ、音楽界の厳しさなんかをコンテスタントたちを通して感じられたらよかったな。
みんな仲良しなんて違和感がある。
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おもしろかったので、ほぼ1日で読了。でも途中で続きが気になるけど、一回読んだら読み返すことはないだろうなって思いながら読んでた。読み終わってなんでだろうって考えてたんだけど、自分にとって魅力的なキャラクターがいなかったんだと思う。共感できる、憧れるような。あやもジンもマサルも天才すぎて考えにさっぱり共感できなかった。唯一明石だけが共感できたけど、段々共感できなくなっていってしまった。
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納得のW受賞。ピアノコンクールというマニアな世界をリアルに書き上げたのは素晴らしい!もっと読み続けたい、知らない楽曲を実際に聴いてみたい、という欲が増します。Wikipediaで、登場したコンテスタント達の曲リストを見られるので、早速色々聴いて余韻を楽しみます。
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読みきった。この本を手にした時に、この厚み、文字の多さにたじろいだ。まさにクラシックのコンサートを最後まで聴ききった感じかな?クラシックのコンサートに行った事ないけど(笑)恩田陸さんの作品を初めて読みました。あまのじゃくなので大きな賞をとった作品はあまり読まないのだけれども、この本は読んで正解でした。私にとってこの本は恩田さんからの『ギフト』でした。