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若さゆえの幼い捜査。真犯人が分かりはしたけれど、めでたしめでたしの状態には届かない。取り組む意欲はそのままに組織としての手法と個人としての熟練が欲しい気がします。今活躍している名探偵や名刑事さん達にも"名"が付かない時期があったんだね。
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面白かった。上巻からグイグイ読まされた。
軍艦島という、外界から閉ざされた特殊な環境の中で起こった、事件とも確信が持てぬ事件を捜査する若手警察官の奮闘。
職員、鉱員、組夫から成る階級格差が細かく描かれていて、そこにはまり込んだせいで、真犯人に疑いを持たなかった…。
なんというか全体に、読んだ後に読み疲れするような重たさだった。でもそれが満足。
唯一、主人公荒巻が島民の忍に好意を抱くところに「学生をそんな目で見ていいのか…?」というツッコミを入れずにはいられなかった。
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若き警察官、荒巻は許されざる捜査で全島一家族を標榜する島に波紋を広げながらも犯人を追い詰めていく。
上巻に続き、荒巻の孤独な戦いが描かれ、「新宿鮫」を彷彿させる主人公に夢中になって一気に読み進めてしまいました。
犯人と思われていた人物が真犯人ではなく、別にいることが分かり、真犯人が誰なのかというミステリーとしても読みごたえがありました。
真犯人のヒントが巧妙に伏線として描かれていて見事にやられた感じがしました。
自分を信じて信念を貫き通す男の強さに改めて魅力を感じました。
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炭鉱という常に危険と隣り合わせの職場で、小さな島という閉鎖された環境、採炭のため作り上げられたシステム、そこに生活した人々の思いや葛藤が感じられる。
やはり、炭鉱という特殊な環境は、一種の極限状態なのだろうと思う。なかなか実感できないものなのだろうと思う。
そんな特殊な環境の中、状況に反発し、孤立する中、ひとりで事実を明らかにしようと行動する若い警官。その苦しさは分かる気がする。
そして、警察学校長が若いときの苦い記憶を回想するとうい形で始まった、この話は、回想が終わって、最後に本人がそのときの行動について、反省を後輩に聞かせるという形で、主人公に気持ちを合わせた読者を、軽く裏切る。
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5000人を超える人々が暮らす軍艦島。本土と隔絶されたその島では他人を疑うことはタブーとされていました。その状況下で発生した少女殺人事件。真相を究明しようとする新任巡査の荒巻。その行動は島の行動規範から外れ、島の秩序を乱すものとして一層孤立します。
次々と浮かぶ犯行への動機をもつ人物。その一人一人の可能性を限られた捜査環境のもと調査し、そしてついに一人の男に行き着きます。更なる犠牲者が生まれようとしていた時、ついに荒巻は真犯人と対峙します。そしてその結末は…。
上巻の初めの方に張られていた伏線が真犯人の決め手となるなど、作者の手の内でいい意味で弄ばれた読後感でした。
さすが、吉川英治文学賞受賞作品。
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新宿鮫を昔読んで、好きになれなかつたので以来大沢さんの本から遠ざかっていたが、これは面白い。ドラマがある物語
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島内に潜んでいる犯人をどんどん絞り込んでいく。私的には、犯人を特定してからがアッサリし過ぎてた。これをハードボイルドというジャンルに入れていいのか謎。
でも、人との会話のやり取り描写はやっぱり好き。
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限られた空間、特別な人間関係のもと、若き主人公が犯人を追う物語。最後は少々あっさり。もう少し余韻があってもよかったかも。
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正義感、というか真っ当な価値観で事件捜査を進める荒巻の行動は、閉鎖的な島のルールを乱すものとして四面楚歌に会うが、情報が増えるにつれて各グループから協力者が出てきて最後は一致団結する。
積年の執念、恩人をかばうため、両親の呵責、純粋な正義感など、手助けをする人の動機はそれぞれであるものの、どれもが人としての良心によるところが物語の悲惨さを和らげて、ハードボイルドテイストを強化しているように感じました。
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少しテイストが違う大沢在昌。出張の際に読もうと購入。軍艦島で炭鉱が盛んだった頃の物語、そこにある特殊な社会が興味深い。あとがきには、警察小説という紹介もあるが、島には二人の警察官が派出所に勤務しているだけで、小さな揉め事には出番もない。
アマゾンの内容紹介より
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昭和34年。海に閉ざされた炭坑の島で満月の夜に一人の少女が不審死を遂げた。?
殺人事件を疑う若き警察官・荒巻の“許されざる捜査""は、しきたりや掟に支配された島に波紋を広げていく。?
暴かれていく人びとの過去、突きつけられる「警察官不適格」の烙印。?
いま警察の正義は守られるのか。?
次の満月、殺人者はふたたび動き出す――。?
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炭鉱の島に赴任となった若い警察官『荒巻』が少女殺害を独自に捜査し、島の住人・先輩警察官に疎まれながらも事件解決に奮闘する。大沢さんの作品?て思う程、語りが違いました。最後まで犯人が読めなかった。吉川英治文学賞受賞作品。もう一度、言うけど(笑)これ、大沢在昌??て作品です。
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人をどの時点から信用したり疑ったりしたりするかと言う場面を見るたびに、正しい行いというのは何なのかを考えさせられる内容でもあった。
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最後
フィクションなのかーい!!と叫んだ
もちろん殺人事件はフィクションだろうけど、他の様々な設定は本当にあったんだと信じ込んでいて…
そのくらい自分の中で軍艦島の生活の様子、建物、人間関係や上下関係、全てがリアルに目に浮かんだ小説だったからすごい
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吉川英治文学賞
単行本の後、講談社ノベルスで一度出版された後、文庫化。
ノベルスっぽいストーリー展開だが、熟練の文章で一気読み。久しぶりのミステリー面白かった。舞台が軍艦島というのも、好奇心をくすぐる。
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「昭和30年代…24歳の荒巻巡査…」という回顧談の内容が物語本編である。
荒巻巡査が赴任したH島は、実に独特な環境の、高層住宅が入組んだ迷路のような場所だった。炭鉱を営む会社の職員、会社との契約で働く炭鉱に入る鉱員、下請け業務に携わる組夫、そういう人達の家族、商店や飲食店に携わる人達、医療機関の仕事に携わる人達、公務員や一部の家族という5千人余りが密集して住んで居る場所でもある。荒巻巡査は、赴任して以来、少しでも早く馴染んで行こうとしながら、先任の岩本巡査と共に勤務を続けていた。
或る日の夕方、鉱員の娘である女子中学生が帰宅しないという騒ぎが起こった。島での様々な出来事に際しては、働く人達のトラブルを収める鉱山会社の総務課の下に在る外勤係が色々と動き回っていた。その外勤係も警察―荒巻、岩本の両巡査―も動いたが、中学生の少女は見付からない。
そして一夜明ければ、中学生の少女は遺体で発見された。事故という見立てとなった。その死を巡って波紋が広がる。ここで話題になったのは、8年前にも女子中学生の死亡事故が発生していたということである。そして「不思議な共通項?」ということになる。荒巻巡査は密かに調べようとするのだ。
荒巻巡査の周囲では、この事故死に纏わる調査の他にも、幾つかの波紋が起こるのだが、それでも荒巻巡査はこの「禁断の捜査」に取組むことになる。その行方は如何に、というのが本作の物語の肝である。
二転三転し、意外な事の真相が少しずつ解き明かされる。その様が非常に興味深い。これは一寸夢中になれる作品だ…