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東京で離ればなれに暮らしていた三姉妹。田舎にひとり暮らしていた母が消息を絶って一年、次女のもとに突然姿を現した母は、自身を山姥になったと称し、姉妹を戸惑わせる…
山姥という言葉や、三姉妹が母に感じる違和感、三姉妹のあいだの打ち解けきれないぎしぎしとした関係性。
そういったもやもやとした不穏を含みながらも、あくまで淡々と静かに描かれていく物語は、ひとりひとりの抱えていた不安や罪悪感、悲しみを浮き上がらせていき、やがて、やさしくふわりとまとめられていきます。幼かった頃に温かな母の手に引かれていくかのように、無理やりではなく、自然と導かれていく…そんな感覚がしました。
終盤にすべてのことが明らかになると、その意外な厳しい真実にまたキリキリとさせられ、しんどいほどでしたが、三姉妹が最後にみたあの家のあの光景は、間違いなく美しいものだったはずです。
そしてその光景は、あの人の人生そのもののでもあったわけです。ひとつひとつが、人生の歩みそのものであった。その集大成が美しいものだったなら、悲劇的な側面が強かろうとも、彼女は彼女にとって良い人生を送れたのだと、そう信じたい、と思いました。
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【あらすじ】
ファッション業界で働く小峰紬(こみね・つむぎ)の前に、行方不明だった母親の文子が姿を現した。自身を「山姥になった」と言い、面影にもどこか違和感がある母に困惑する紬。母を山奥から東京に連れてきた古書店主の柳川から話を聞きつつ、年の離れた姉の麻弥と絹代に相談する。恋愛と仕事に迷いを感じている二十代半ばの紬、女である自分に悲しみを抱えている三十代の麻弥、夫との間にすれ違いが生じ始めている四十代の絹代。それぞれに悩みをいだく三姉妹は、疎遠になっていた母親と再会し、少しずつ距離が縮まる中で、自分たちの幸せの形に気づいてゆく。そんなとき、母をある事件が襲い――。
三姉妹は母との絆を結び直せるのか。心に染みるミステリー。
【感想】
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山姥をキーワードに繰り広げられるちょっとファンタジックな話でした。警察が介入してきて、失踪した母と会ってるのに、そのへんの届けなんかはどうなってるの? とか、突っ込むのは野望なんだろうな。最後はほんわかしてて優しい話でした。
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どんな縁もその瞬間よりずっとずっと後になってからその大切さに気付くんだろうな。今置かれている自分の環境を、何十年後に自分がどう感じて何を思うのかなあ。記憶も感情も人との出会いも、それぞれをつなぐ縫い方は自分次第。怖いけど楽しみ。
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なんとなく既視感があったのだけど初めて読んだ、らしい。現実と山姥の伝説が入り混じって、キルトも絡んできてちょっと不思議な感じのする話に。実はものすごくドロドロな気がするんだけど不思議とそう感じさせない。
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布や糸の名前を持つ三姉妹と、山姥になってしまった(と言う)母親の物語。
キーワードは、「山姥」と「パッチワーク」
家が嫌で故郷を出た、小峰家の三姉妹、絹代・麻弥・紬。
しかし、同じ東京に暮らしながらほとんど交流を持っていなかった。
一年半前、母が実家から行方不明になったと聞かされた時でさえ。
その母が、突然、紬の前に現れた。
母って、こんな人だった?違和感。
母・小峰文子と、中里照美。
少女時代に罪を共有する事により特別な繋がりが芽生えた。
山姥になっていく自分の存在が、故郷を出て新しい生活をしている娘たちの邪魔にならないよう、山に入る。
それは「セルフ姥捨(うばすて)」のようで哀しい。
そして、娘たちには、自分のような山姥になってほしくない、それが母の最後の願い。
なぜ、パッチワークがお守りになるのだろう?
ひと針ひと針ぬう、という行為は「祈り」に通じるからだろうか。
「大きな幸せはなかなか手に入らへんけど、小さな幸せをいっぱい集めたらええやん?」
小さな幸せをいっぱい集めた、文子さんのパッチワークが出来上がった。
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壮大な物語だった。
暗い、重い印象で始まって、なかなか読み進められなかったけど、だんだんと引き込まれて、中盤からは一気に読んでしまった。
「山姥」とかファンタジックな部分も最後には真相がわかって、衝撃的だった。
とはいえ、主人公の3姉妹は山姥の真相は知らないままなので、ハッピーエンドとは言えないかもしれない。それでも、今後の3人の日々が前向きに進んでいきそうな、優しい終わり方だった。
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めぐり逢いサンドイッチからこの本を読んだため、ギャップにとても驚いた。
家族それぞれにいろんな過去があって、歴史があって、そして今の悩みがある。それがなんだかんだパッチワークに戻ってくるところがとても良いなと感じた。
本物の文子に三姉妹が遭遇してほしいなと思ったが、あのラストはアレでとてもほっこりした。
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田舎も母親も嫌いで実家を出てからは極力かかわらないようにしていた主人公(三姉妹の三女)の元に1年半前に行方不明になったはずの母親が突然訪ねてくる。
しかも「山姥になった」と言って。
確実に母しか知らないような話をする母の顔をしたその女(自称山姥)は、けれどどうも母とは違う気がする。
それも山姥になってしまったからなのか・・・?
三姉妹に渡したいものがあって山を下りてきた。
という母は昔からの趣味で作っていた貧乏くさいキルトを渡してくる。
母を自分の家まで連れてきた古本屋の店主(なんと山姥に詳しい)に山姥の生態を聞いたり、疎遠な姉と連絡を取ったりというお話。
三女それぞれの想いの描写もあり。
読み始めた時から色々布石が散りばめられていて
「これは最後に盛大に回収にかかるタイプの小説だな」
と思いつつ明らかになっていく事実になるほどなるほどと思いながら読み進めます。
最初に感じた通り謎解きは進みますが、読み始める時間は選んだ方が良いかも。
私は夜読み始めたため寝不足になるのを覚悟で一気に読んで、翌日眠かったです(笑)
予定外に一気に読もうと勢いづく作品に出会えたのは楽しかったです。
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昔、読んだなぁと思いながらの再読。
実家が嫌で都会に憧れて上京した3姉妹と母の話。
3人も娘がいて誰も母に寄り添えなかったんだなぁと思うと母が不憫。
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一年半前に地方の田舎で行方不明になった「母」が突然東京で暮らす三姉妹の前に現れた。どこか違和感のあるその「母」の出現をきっかけにそれぞれ悩みを抱えている姉妹の人生が動き出すストーリー。また姉妹の知らない母の過去や生き方がもうひとつの物語として読者に語られて、それも更なる衝撃でした。「山姥」という言葉を都会で暮らす姉妹に何度となく語る「母」。山姥は「山」に対する土着的な信仰と、太古から女性の生き方からきた女の母性と鬼性を象徴とした民俗的な言い伝え、妖怪、神、などと、人知を超えたものというような捉え方が目から鱗でした。文子と里美の友情が胸を締め付けられます。それにしても、複雑な家族関係だったとしても姑も夫もいない今、文子と娘達は会えなくなる前に関係を修復する術は本当になかったのかと娘をもつ私としては文子の言い分を理解しつつも納得できずモヤモヤしてます。ラストの広げられたパッチワークの敷物のシーン、花見のシーンに心を掴まれました。250ページほどのわりと短い小説でしたが心に残るお話でした。面白かったです。
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装丁がかわいくて手にとった。
生まれ育った田舎も家族も母も嫌いでそれぞれ上京した3姉妹。姉妹同士連絡を取り合ったりもしない。
そんな中、一年半前に行方不明になった母が訪ねてくる。
自分は山姥になったんだと言って、、
お守りとして、パッチワークを渡したいと、、
しかも、この母親、姿も過去の記憶も母親なんだけど、本当に母親なのか何かが引っかかる。
わだかまりのある3姉妹が母親かどうかわからない母親と関わりながら、姉妹の絆を取り戻す。
キーとしてパッチワークが物語を縫っていく。
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読み終わって、母の顔を見たら涙が溢れた。
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プライドが高く自身の弱さを打ち明けることを恐れ、仕事の人員削減の話さえも妻に相談できないない夫と、年収の高い夫とその子供を手に入れることを幸せだと思っていた絹代。
「君にも申し訳なくてさ。八つ当たりなこと言ってしまうし俺は期待はずれだったろ?」
「そんなの、お互いさまじゃない。
私は相談相手には頼りない?」
『相談って、弱いところを見せることじゃないか』
〜
「わたしは、理想を勘違いしていたのかもしれない。やさしくなれる場所は、理想を積み上げた場所じゃない。」
「握り返された手を愛おしく思うと、もっと強くなれる気がする。優しさは、弱さではなかったのだろうか。」
〜
これを読んで、
SEKAI NO OWARIの「Error」という曲の歌詞
「もちろん守る誰かがいるのは時に貴方を弱くするでしょう、でも弱さを知るということは強いということなの」
を思い出した。
この歌詞、あまり意味が分からなかった。
でも、今回の本を通して私なりの解釈をもてた気がする。
自分の弱さを知ること。相手の弱さを知ること。
これらが互いに成り立って初めて、
大切な人を守れるような。或いは大切な人と一緒に戦えるような武器を手にすることが出来るのではないかなと感じた。
この曲を聞く度に、この本を、このフレーズを思い出すんだろうなぁと思った。
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また、本作では漢字表記の「優しい」ではなく、
ひらがな表記の「やさしい」が使われていた。
相手に優しくすると、周りの人に褒められるから。良い人だと思われるから。そんな思いで相手に差し出す優しさは、ここでは世間体優しい周りの評価を気にした「優れている」という意味での「優しさ」だと思う。
一方で、相手を想いやる純粋な思いから差し出すやさしさは、あたたくて相手の心に何より染みる「やさしさ」なのではないかと思った。
私は、「やさしさ」を差し出せる人間でありたい。
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失踪した母が突然訪ねてきた?その母の雰囲気は、なんだか前と違うような感じがして戸惑う三女の紬。三姉妹それぞれに実家と距離を置きたく、実家をでてそれぞれの暮らしをしていた。果たして彼女は母なのか。山姥にまつわるファンタジーなのかと思ったが、実は!
柳川さんがいいアクセントだった。
少し前に見た相棒でも山の中をさまよっていて、ちょっと重なった。