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巷に溢れる断捨離マニュアルよりもずっと心に響く本。
片づけ方を指南するのではなく、その人の生活の根底に流れる、本人が努めて見ないようにしている問題を白日のもとに晒して突きつける、カウンセラーのような主人公。
シリーズ化されたら追いかけてしまうだろうと思わされる内容だった。
私の部屋は、散らかりすぎているわけでも片づきすぎているわけでもない(と自分では思っている)けれど、十萬里さんが見たらどう分析するだろう。
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本書で溜め込まれているのは、何もゴミだけではない。妻の遺品、いつか使うかもしれないもの、思い出…。
片づけ屋の十萬里さんが、片付けられない原因を自分で気がつくよう宿題を出してくれる。そうして、家や部屋ばかりでなく心も整えられていく。
読み終わったときに前向きになれる本。
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初めて読んだ、「お片付け小説」というジャンル(?)。片付けを手伝う訳ではなく、片付け方を指導する。指導は数ヶ月続く…。
効果ありそうだな、と思った。そして文章で読むだけでも、部屋が片付いていく様子ってスッキリするものだ。確かに心が不安定な時って、知らない間に部屋も散らかる。はっと気付いて片付けると、気持ちもスッキリするものなんだなー。そういう事に、最終的に気付けるようになればいいと思う。そして、片付けられない理由をきちんと突き止める十萬里さん、やるな。
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サクサク読みやすくて、あっという間に読んでしまった。とても面白かった。
片付け屋の大庭十萬里さんが魅力的。物の片付けより何故片付けられないのかという心理状況を見出して少しづつ本人に気付かせる。
4話の連作短編集で全て読後感が良い。特に4話、これだけ大庭さんの目線で書かれていて、息子を事故で失った母親と家族の話が胸を打つ。
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片づけの実用的な本は何冊か読みましたが、「お片付け小説」は初めて。
というか、なかなかないジャンルですね。
ケース1:大手企業に勤めて収入もそこそこ多いアラサーOL。
外面はパリっと身ぎれいで仕事もできるのに家は足の踏み場もない無残な状態……。
十萬里さんの指摘によって、この主人公がテンプレどおりとも言える社内不倫にはまっている事が少しずつ明らかになっていく、その過程が楽しかった。
ケース2:妻に先立たれた木魚職人。
家の事は妻に任せきりだったので……と、こちらも高齢男性にありがちなケース。
十萬里さんの介入によって娘や孫の問題も前向きに変わっていく結末が爽快。
ケース3:一人暮らしの資産家高齢女性。
ひどく散らかったり汚れたりしているわけではないが、大きな家の中には不要なモノがたくさん……。
この女性ほどの土地屋敷持ちではなくても、こういう家はこれからの時代どんどん増えていくと思った。
値打ち品(だったはずのモノ)が売れるどころか引き取ってもらうための代金が発生したのが印象的です。
ケース4:汚屋敷と化したエリート官僚の家。一部屋だけは綺麗に片づいて掃除もされているのは…?
十萬里さんの視点から彼女の叔母のエピソードも交えつつ、この家の奥さんの悲しみに向き合っていく。
少し切なくも心温まるお話でした。
タイトルで「あなたの人生、片づけます」と言われるとおり、4人の主人公たちの家の片づけだけでなく人生にも「カタ」をつける手助けをしてくれた十萬里さんは、まさに「片づけの魔法使い」ですね。
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2016/12/29
タイトルに惹かれ、読み始めた。
オムニバス形式で物語は進み、その回毎の主人公は心に歪みや空洞のある人たち。
共依存の女性、全時代的初老男性、井の中の蛙で能天気な初老未亡人、亡霊に振り回され崩壊している家庭、それぞれの典型的なタイプを語り、最後は一筋の希望。
読後感は爽やか。
シリーズ物に出来そう。
なんで私がこの本(タイトル)が気になったのか、読了後、よくわかった。
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ケース1〜3はふーんという感じだった。
最後のケース4で、交通事故で子どもを亡くした親の家を片付けることを通して、不慮の事故と向き合い、止まっていた時間を今に進めた。
他人には決して理解できない被害者の心情を、事故の被害者同士を合わせることにより、お互いに心情を吐露し、氷を溶かすように自分の気持ちを溶かしていく様は、見事だった。
辛い時に、わかったような事を他人に言われることが一番辛い。共感とは本当に同じ体験をした人としか結べないのかもしれない。
自分にできることは、わかってあげるのではなく、繋ぐことだと感じた。
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垣谷美雨さんの本を読むのは2冊目なのだけど(前回は「リセット」を読んだ)、自分の人生を見つめ直したり、認めたり、時に軌道修正したり…2冊とも、そういう考えに至るきっかけをくれるような内容だった。
「部屋を片づけられない人間は、心に問題がある」と考えている片づけ屋の大庭十萬里は、問題を抱える人たちの部屋を訪れ、その原因を探りながら汚部屋をきれいな部屋に甦らせる。
ターゲットは、社内不倫に疲れた30代OL、妻に先立たれた老人、子どもに見捨てられた資産家老女、一部屋だけが謎に片づいている家に住む主婦。それぞれの問題に、十萬里は立ち向かう。
部屋を片づけられない人、というのはテレビなんかでもたまに目にする。単純に汚いのが平気なパターンもあるのかもしれないし、それをテレビで誇らしげに言うのはどうかと思うけど、実際本当に心に問題を抱えているケースもあるのだと思う。
この小説に出てくる“片づけられない”4人の人たちは、それぞれに問題を抱えているからこそ片づけることが出来なくて、しかも程度や中身にも違いがある。
プライドのために着飾るものを買い込んでは溜めてしまうケースもあれば、妻が死んでしまったために家の中のことが出来ず散らかってしまったケース、戦争を知っているだけに勿体ない精神が強くて不要な物でも捨てられないケース、そして悲しい経験から無気力になってしまい家事が疎かになってしまったケース。
理由はそれぞれあれど、共通してあるのは、心にぽっかりと空いてしまった穴のようなものの存在。空虚を感じているから物を溜め込む、というのは理屈としては当たり前のようにも思えてくる。
溜まったストレスを買い物で発散する、というのは女性ならば経験したことがある人も多くいると思う。虚しいから物で満たす。それで本当に満たされるわけではなくても。
見た目は普通のおばさんである片づけ屋の十萬里は、問題のある人たちに根気よく付き合い、時にするっと心の隙間に入り込み、彼らの問題を解決していく。
依頼者は片づけられない本人ではなく周りにいる身内で、本人は最初十萬里の存在を疎ましがるのだけど、いつの間にか少しずつ問題が解決していく状況に身を委ねる。
本当は助けを求めていたのだ、ということ。
その人の意識内にあるとは限らない問題を、本人に意識させ、そして少しのきっかけを与えることで問題に向き合わせる。
人はみんな淋しくて、心の繋がりのようなものをどこかで求めている。そして要らない人間関係をリセットさせることも時には求めている。
要るものと要らないものの選別を自らするのは、思いのほか難しいのかもしれない。
私は時々ごっそり物を捨てることにしているので慣れてしまったし、要らない人間関係を増やさないために意識していることもけっこうあるのだけど、それでも知らずに物や関係が増えていることがある。
やはり時々意識して捨てることは必要だ、と思う。自分の心のために。
十萬里さんみたいな人、近くにいたらいいのにな、と思う、そんな優しい物語。
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ストーリーの中の他人を通じて自分を見つめ直すことができたような気がする。
凝り固まったしこりがほぐれたような、自分を許せるような、デトックスしたような気分になれる。
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片づけをテーマにした小説です。片づけに関するノウハウ本は世の中にたくさんあります。しかし、片づけをテーマに、それなりに実績のある小説家が書いた、本格的な「小説」という例は、少ないのではないでしょうか。劇的に面白いとか、泣けるとか、そういった大袈裟なところはありません。だけど、しっかりと地に足のついた人間、またはそのように生きたいという願いをもつ普通の人間をしっかり描いている良作でした。
主人公は50代の女性片づけコンサルタントの十満里さん。彼女が片づけに関して問題を抱えた家を訪問して、物の片付けと同時に心の片づけに関してアドバイスする、という内容。雰囲気的には、以前、こんまりさんをモデルにしたテレビドラマがありましたが、形としては近いですね。
面白いと思ったのは、4つの短編のうちの最初の3編が、十満里さんの訪問を受けるお客さん側から描かれているところですね。そして3人が3人とも、自分が望んで、片づけコンサルタントを呼んだわけではなく、離れて暮らす家族(息子や娘または親)が勝手に依頼したというパターンです。お客さん本人は片づけコンサルタントの必要性なんてないと思っている。そこに片づけコンサルタントがやってくる。「なんか、愛想のない、うるさそうな、オバさんがやってきた」みたいな雰囲気で物語は始まる。十満里さんは常に「招かれざる客」からのスタートなんですね。
で、そうなると当然、摩擦が起こるわけで、その摩擦、つまり葛藤がドラマの元になるわけです。そのあたりが小説的にも面白い。なぜなら小説の面白みというのは、人と人との葛藤ですからね。これがもし「十満里先生!お待ちしておりました!!」という雰囲気では、実地のノウハウ集にはなるかもしれないけど、面白いドラマはたぶん生まれない。
そして、よく言われることですが、片づけというのは、やはり心の問題なんだろうな、ということです。片づけという当たり前であるべき行動の流れが、どこかで滞っているということは、なにか問題がある。大抵は心の問題ということが多い。で、十満里さんという存在は、この小説の中では、その心の問題のありかを解き明かす探偵的な存在でもあるわけですね。
で、小説というのは、心を細やかに描くことこそが、他の表現に比べての優位点です。なのでこの片づけを小説で描くというのはすごくいいと思いました。なぜなら先ほど書いたように問題を抱えている人の視点と心情から描かれていますので、その問題の発見と解決が心理的にとても詳しく描かれているんですね。その意味で片づけを小説のモチーフにしたというのは大正解だったのではないかと思います。
印象に残った場面は、田舎の豪商の家に一人で住む、なんでもかんでも取っておく、おばあさんが、老人ホームに入ったお友達を訪ねた際に、そのお友達が言った言葉。
↓
「捨てがたいと思ったもんは写真に撮っておいた。ときどき見るけん寂しいことなか。人間はみんな裸で生まれて裸で死んでいく。そいを実感するようになったばい」
↑
この部分を文字だけで読んでみてもよく使われる言い回しですが、これ、実際この言葉を自然に言えるようになるって、多分かんたんではないですよね。そう考えると、片付けというか、ものとの、付き合い方、そして、別れ方、っていうのは、人生にとって本当に重要なことだよな、とこの本を読んで感じました。
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社内不倫に疲れたOL,
いっそのこと、
全部捨ててしまったら?
何もかも捨てて、いちから買い直せばいい。
もっと丁寧に生活しよう。
生活そのものを楽しもう。
誰のためでもない、自分のために。
妻に先立たれた老人。
妻が生前、周りの人に良くしていたので、周りの人から恩返しをもらう。
妻から目に見えない財産を遺してもらった。
とっておきの魔法の言葉。
その言葉が生涯の心の支えとなることがある。
人生に希望を見た気がする。
もっと周りの人に甘えなさい。
もっと自分の負担を減らしなさい。
名言がたくさん。
主人公。
片付け屋。
大庭十萬里さんは、凄い人だ!
私も家を片付けよう!!と、
決意しました。
この本。
おススメです。
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片づけ屋の大庭十萬里が様々な人の依頼を受ける。
社内不倫をしながらも汚部屋で生活しているOLや妻を亡くして一人暮らしとなったが何も出来ず、余所に住む娘の手を煩わせている父親。
亡くなった息子の部屋しか片づけることの出来ない母親など。
部屋だけではなく、それぞれに人生がある。
そして、部屋だけでなくその人生も片づけていく十萬里。
読むと心までスッキリするようだった。
2018.8.12
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少し前に「断捨離」が、流行った。
今は、物が安く、そして豊富で、何もかもが、容易に手に入るようになった。
そして、昔の物は、機能的でもないのに、高価な物ばかり。
何かの本で、物が捨てれない人は、幼い時に、自分の大事な物を捨てられたから、、、大人になっても、物が捨てれないと、書かれてあった。
この作者 垣谷美雨氏は、その精神的な部分を理解している。
登場人物の主人公 大庭十萬里さんの取り扱ったケース4人に、3人までは、家の片づけをするのでなく、どのようにして、このような状態になったのか?と、、、、
十人十色、皆、自分の世界があり、気持ち的に、どうすればいいのか?指示されたこともない。
主人公は、そっと、後ろから、前に進むのに後押ししてくれている。
自分から、片づけるという意志が無いと、何も解決法にならないのだと、、、
ケース4のように、もう、自分の手元に戻らないものへの執着で、結果的に、片づける事を放棄してしまった時に、主人公はどのようにしていくのだろうと、期待した。
片付け魔の主人公は、部屋の片づけに見て見ぬふりは出来ず、片づけ始めるのだが、、、、
愛する者の死の悲しみは、自分が死ぬまで癒えないとの思いを十萬里さんに言われて、皆、周りからのただの気休めの言葉でなく、心に響いたのであろうと、推測された。
何か、これまで、色んな断捨離やお片付けの本を読んだが、ピーンと、心に響くものが無かった。
この小説を読んでいて、台所の引き出し、食器の多さ、箪笥の中の肥やしである着物、小袖ダンスの中の風呂敷や和装小物、、、
自分なりに、整理したつもりでいたのだが、まだまだ不要な物が、一杯あることに気付かされた。
差し上げた人が、転売したり、私の目の前で、自分の物として、人にあげているのをみて、気分が、落ち込んだこともあるので、捨てるのが、一番かもしれないと。
そうそう、「なんでも、不要な物 買います」という業者も、来てもらった事があるが、皮のコート100円、洋服段ボール1箱100円!、最後は、貴金属はないのか?、、、になってしまった。
途上国への寄付もしたけど、クリーニングに出したものや未開封の物でないと、今は受け取らないこともあった。
この本を読んで、少しづつでも、不用品を廃品回収にでも出していこうと、片づけの参考にしたい本であった。
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数時間で一気に読んじゃった。
自分の部屋もきれいとは言えない。
きれいな部屋が好きなのに、重い腰が上がらない。
もったいない、まだ使える、思い出があるから捨てられない。
最初の4話は客目線、最後の1話は十満里さん目線なのも面白い構成だと思った。
十満里さんに共感できる気持ちと、客に共感できる気持ちと半々。
片付けてあげるんじゃなくて、片付けのしかたを教えてくれる。
その中で心も綺麗にするお手伝いをしてくれる。
読了後、部屋の掃除しよう、いらないものは捨てよう、と思わせてくれた。
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「部屋を片付けられない人間は、心に問題がある」片づけ屋、大庭十萬里が汚れた部屋だけでなく、心の問題まで解決してくれるという4つの話。
ケース4きれいすぎる部屋は、とても切ない話。息子を亡くした母親の切なさもだけど、残された娘たちの辛さも切ない。
全て読み終えて、あれもこれも捨てたくなってきた(笑)