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日本はGDP総額では世界3位の経済大国である。
しかし「人口一人当たり」で見てみると実は世界27位。その他、一人当たり輸出額は世界44位、一人当たり製造業生産額はG7の平均以下。
つまり、生産性がとても低い。
経済大国だなんて言って安穏としてはいられない。なぜならもう「総額では3位」を支えてきた「人口」が減り始めているのだから。
本書は日本経済が本来の力を発揮できていないという、日本人が案外直視したがらない事実を、国際比較で突きつけ、その原因を分析し、なぜ改革が進まないかも分析したうえで、処方箋を示すものである。
様々な国際比較のデータは興味深い。本当に「(生産)人口一人当たり」に置き換えると日本は悉く先進国での順位が低い。
なぜそうなったかと言えば、戦後~高度経済成長期にかけての爆発的な人口増加を背景にした「日本型資本主義」に固執しており、この20年の社会情勢の変化に全く適応できていないからと言う。
正直このあたりの指摘はなかなか面白い。
客観的なデータと、著者自身イギリス人という外部の目から見た日本文化の特異性という人間の目で見た分析がうまくかみ合い、説得力があるし読ませる。
それだけに、解決策の提示があまりに薄いのが残念。
曰く、年金機構を通じて、政府が企業に時価総額の向上というプレッシャーをかけるのが効果的と言う。
これについて、具体的にどの程度の企業に対し、どの程度の影響力(すなわち議決権)をもって行うのか?等の具体的ステップの解説がない。
ただ、海外でもこの方法で、大企業の効率が向上し、GDP向上に効果があったとさらりと述べるにとどまる。
このあたり、先行事例の具体的な制度紹介や日本への適応方法についての提案があれば、より良い一冊だったのだが、少し肩透かしで終わる。
とは言え、教養として一読しても損はないような一冊。
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観光立国論に続いて、こちらも面白い。人口ボーナスという考え方をあまり知らなかったので勉強になった。このままだとどんどん不幸せな国になるが、どうやってとめたらいいのか。
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日本のGDPは世界第3位、ノーベル賞は世界第6位と一見レベルの高い国のように見えるが、一人当たりに換算するとそれぞれ27位、39位とかなり落ち込んでいると切り込み、返す刀で日本の1990年までの高度成長は人口ボーナス(人口が増加している)のおかげだったと看破する。すなわち一定以上の技術力はあったもののビジネスモデルはさして優れたものではなかったが、たまたま上手くいった結果だとし、「失われた20年」とは日本が20年間自らの成長を振り返ってこなかったからであり、また、ワーキングプア比率もメキシコ、イスラエル、トルコ、チリ、アメリカに続く第6位(国家が破綻しているギリシャより高い)など問題は多くなっていると指摘する。日本は労働人口に占める高スキル労働者の比率が世界一高く(ここはいまいち根拠が見えなかった)潜在能力はあると持ち上げ、問題は変化を拒みリスクを取らない経営者だと、糾弾する。思い当たる節もあり、いちいちもっともなだけに耳が痛い。
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日本の経済状況を「人口ボーナス」の軸にデータをつかって解説。経済力は人口✕生産性であり、日本の高度経済成長は人口が伸び続けた恩恵だった反面、生産性の向上がなかった。結果、現在の長い停滞に踏み込んでいる。慣例を重んじ、効率をもとめない日本人の特性が生産性の向上を阻んでいるという。完全に同意。総論賛成、各論反対が多すぎる。より苦境に陥って、明治維新や、太平洋戦争のようにリセットしないとダメな国民性なのだろうか。
著者の問題意識は的確だが、対策を企業の経営努力にもとめるのは実効性としては時間がかかりそうで、諦め感が強い。国家に期待するのではなく、自分の身は自分で守る必要がある。
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マクロ視点で記載されている部分が多かったが、今後どのように考えて働いたら良いかヒントになる本だった。
労働人口が減少する中でどのように生産性を向上させるかは常に企業の課題になると思う。経営者の問題と書いてるが、労働者も生産性、利益を意識しないと意味がない。
政府は生産性向上を企業に求めているが、労働時間を減らす施策は見切り発射感が否めない。欧州の良い部分を見習うのであればそれなりの改革(教育、既得権益排除、解雇規制緩和、税金引き上げ)も必要になるのではないかと思う。
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絶対数値でしか判断できない日本人。
そこに「1人あたり」で見るとどうなるか、為替レートではなく「購買力調整後データ」でみるとどうか等、データサイエンティストの視点で切り込んだ良作。
・日本は「GDP世界第3位」の経済大国
→1人あたりGDPは世界第27位
・日本は「輸出額世界第4位」の輸出大国
→1人あたり輸出額は世界第44位
・日本は「研究開発費世界第3位」の科学技術大国
→1人あたり研究開発費は世界第10位
・日本は「ノーベル賞受賞者数世界第7位」の文化大国
→1人あたりノーベル賞受賞者数は世界第39位
まず筆者は読者に動執生疑を起こさせる。曰く
「皆さんが学校でこんなに熱心に勉強して、塾にも通って、就職してからも毎日長い時間を会社で過ごし、有給休暇もほとんど消化せず、一所懸命働いているのに、「生産性は世界第27位」と言われて、悔しくないですか。
先進国最下位の生産性と言われて、悔しくないですか。
こんなにも教育水準が高い国で、世界の科学技術を牽引するだけの潜在能力がありながら、1人あたりのノーベル賞受賞数が世界で第39位というのは、悔しくないですか。
「ものづくり大国」を名乗りながら、1人あたり輸出額は世界第44位と言われて、悔しくないですか。
私は、悔しいです。日本は、この程度の国ではありません」と。
そして「はじめに」で要旨が明確に述べられている。
「日本は先進国でもっとも生産性が低く、もっとも貧困率が高いが、なぜ生産性がこれほど低いのか。
経営者の意識を変えれば問題は解決する。政府が経営者に「時価総額向上」のプレッシャーをかける。そうすればGDPは1.5倍の770兆円になり、平均所得は倍増する」と。
本文では章ごとに日本経済の分析、検証がなされてゆく。
第1章 日本はほとんど「潜在能力」を発揮できていない
第2章 「追いつき追い越せ幻想」にとらわれてしまった日本経済
第3章 「失われた20年」の恐ろしさ
第4章 戦後の成長要因は「生産性」か「人口」か
第5章 日本人の生産性が低いのはなぜか
第6章 日本字は「自信」をなくしたのか
第7章 日本型資本主義は人口激増時代の「副産物」に過ぎない
第8章 日本型資本主義の大転換期
最後の第9章「日本の「潜在能力」をフルに活用するには」で具体的な処方箋が示される。
アベノミクスの足を引っ張っているのは「経営者」
日本の潜在能力にふさわしい一人当たりの目標を計算する
輸出は今の3倍に増やせる
農産物輸出は今の8倍に増やせる
もはやアメリカの背中を見るのをやめるべき
GDPは770兆円まで増やせる
やればできることを、「観光業」が証明した
生産性を上げるには首都・東京がカギ
地方の格差問題を考える
政策目標は「上場企業の時価総額」
株価と設備投資の関係を示す4つの理論
日本政府は「株式市場プレッシャー仮説」を採用すべき
安倍総理は、日本を脅かす「外圧」たれ
もっとも大切なのは経営者の意識を変えること
このやり方���、女性の収入問題も解決できる
女性ももっと国に貢献すべき
お役所の生産性改革
「デフレ」は本質的な問題ではない
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日本の繁栄は人口増加によるもの。
とても納得できる言葉でした。すでに頑張って仕事してればいい時代ではない。乗り遅れない為に成長し続けなければならないと改めて気づかされた。
ここに書いてあったのかな?人間の本質はヒマである。子供を産むのも、仕事するのも極論ヒマだから。であれば、ヒマを思いっきり楽しむ様にしていこう。
幸い今の日本は一部の優秀な人間は優遇され、所得も多くなる。そこに入る門戸は開いている。行かない必要あるかい?
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イギリス人アナリストによる日本分析の4冊目。本書では以前までの著書と同様に分析をしており、如何に日本人の所得が低いかを示しているが、解決策が弱い。そして、その弱い解決策で完結としてしまっている。初学者向けの本としては非常に読みやすいが、問題提起をした張本人としては更に詳細に分析した結果を基に明確な解決策を提示しなければ言いっぱなしだ。
恐らく、どうしようもない、というのが本音なんだろうが。本書でも筆者が語っているように日本人の気質としてどうしようもない段階まで落ち込み、そこからドラスティックに変革するのが日本人の気質なのだとしたならば、未だそこまで落ち込んではいない。この状況で変革は難しい。
農地改革、中小企業対策、消費税増税、数々の政策は考えつくだろう、しかしそれを支持する民衆がどれだけいるか、そこまでを考えている政治家が出来ないのだ。日本のような斜陽の社会では全てのものが恩恵を受ける事などもはやない。不幸の再分配を容易く出来るはずはないのだ。
筆者には再度筆を取り、日本全体の改革という問題ではなく、観光業改革の提言をしてくれることを期待する。
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的を射た指摘。
最近は日本の良さを紹介して自画自賛するテレビ番組も多いが、自らを劣等生だと認識した上でお互いに傷を舐め合っているだけなのだと感じる。
世界トップクラスの〇〇は実は人口が多いが故に達成出来ているのであって、一人あたりに換算すれば中の下である、とのこと。
統計の嘘をみやぶる、という視点は必要です。
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分析の数値や用語はマクロ経済のものだが、本書の主張は「意識を変えれば」とか「潜在能力を発揮すれば」日本は蘇るというもので、皆が物価が上がると信じ込めばデフレは脱却できると言っていた多くのエコノミストと同じ誤りの論議に思える。
意識も潜在能力も国民文化や幅広い社会システムにより醸成されるものである以上、もっとより深い考察が必要とされるのではないか。
最近のテレビで訪日外国人がモノづくりの職人文化を絶賛し、視聴者のナショナリズムと自尊心をみたさせる番組があるが、本書にも同じ匂いを感じるように思えた。
2017年4月読了。
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人口ボーナスによって経済大国の地位を確立した日本。しかし、一人あたりの指標で他の国と比べたときに、多くの順位は急落する。
逆の見方をすれば、上位の国なみに生産性を向上させることができれば、日本はまだまだ経済成長する余地があるということである。
著者はその問題提起だけでなく、著者の考える対策までしっかりと述べているところが素晴らしい。
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日本の実力値の捉え方を、GDPの数式をもとに伝え続ける。
日本の成長は人口ボーナスによるところであった、ならば移民を受け入れて人口を増やせば良い、というのではない。
真の成長は生産性の向上であると、なんどもなんども多面的に伝え続ける。
では幸せはGDPの規模を求めるべきではないという論に対しては、世界における影響力の観点で相対的な強さ、規模の魅力が必須であると伝え、単純的な逃げ道を与えない。
経営とは一側面の改善だけではなく多面的に総合的な対策が必要であり、その目標の与え方、考えたの軸として「生産性」は非常に納得性と総合的なものさしとして良いと腹落ちした。
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相変わらず、「根拠」「数字」「客観的事実」に基づく分析や比較でぐうの音も出ない主張が展開される。日本人はこういう議論が苦手ではないかという指摘にも深く納得。国の借金がとか少子高齢化がとか、悲観的あるいは他責で考えている事柄も、真っ当な変化を起こせば改善の余地は十分にありそう。まずは女性の活躍を応援することから。
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メモ:人口が増え続けることを前提にしていまの仕組みや考え方、常識ができてる。人口が増えてるときのやり方が、人口が減るいまにはそぐわないものになってる。女性の給与が低いのは日本の女性がそういう仕事についてるから。その生産性にふさわしい仕事をしているから。そもそも付加価値の低い仕事をしてる場合が多いのでは。日本の女は甘やかされてるともいえるし日本企業において女性の能力は明らかに過小評価されている。男性と同じ仕事してて給与が低いなら企業は喜んで女性を採用するはず。女性労働者がふえたのに日本のGDPは改善してない。日本は検証をしない。前例がないことはやりたがらないだけでなく前例があったかどうかも調べることすらしない。日本が自信を取り戻せば再び輝く的なこと言うけど精神論は意味ない。GDPは人口に比例する。日本の女性はITで代用できるような仕事をしている(例えば銀行とか)
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「日本人にはまだまだ潜在能力がある!生産性を上げればもっと稼げるはず!」というアナリストさんの著書。やれ人口が、一人あたりGDPが・・・など「数字」しか見てないなあという印象。そういう「スペック」みたいなもので人間を測ろうとすることにうんざり。死んだ目をしてスマホをいじってる人であふれる通勤電車。仕事をサボっているサラリーマンでいっぱいの喫煙所、高齢者が押し寄せるパチンコ屋や場外馬券場。著者はそういった場所に行ったことあるのだろうか・・そこにいる人達を見ても「日本人にはもっと生産性がある!」と思うのかなあ・・。