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防衛に関する知識を得る上で恐らく避けて通れない学問だと思い、まずはマンガから入ってみるかということで購入。地政学とは、「地理的条件が国際関係にどう影響するかを理解する学問」とのこと。
思い浮かべるのが、ジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』。アレは、ヨーロッパが世界をリードすることになったことについて、「ユーラシア大陸が横長、アメリカ大陸は縦長」であることを理由の根底に置いている(と思う)。
米国を島とみる視点、英国の「オフショア・バランシング」政策、シーパワーを拡充せんとする中・露、そして勢力の揺らぎの中で地政学的に考えた日本の未来……と、世界各国の歴史と現在を地政学的視点で解説する。 一般的な歴史と比べ、地図をざっくり見ることになるので、例えば西欧を大きな半島と見る等、普段は気が付かない視点がある。映画とかで権力者の部屋にでかい地球儀がある意味が何となく分かった気がした。
一方で、上述した『銃・病原菌・鉄』で抱いたのと同じく、演繹的ではあるが情報の選択に恣意的なものが含まれていないか?といった疑念を抱いてしまう。地政学という学問に対する批判は本書の中では言及されていないため、この点は次の本で。
一応、日本で地政学的思考が育たなかった理由については、終盤で解説されている。日本ではドイツ地政学を取り入れたが、大東亜共栄圏の正当性の根拠として用いられ、GHQにより禁止され、以降学問の分野でタブー視されていたことが一因であるという。
確かに、「国際関係では、他国どうしの紛争は大歓迎!」(p.117)とあるように、各国は勢力を拡大することは前提として語られており、まるで二度の対戦前のヨーロッパ列強について勉強しているような気分にはなる。こうした学問が、戦後の日本で疎まれるのは分からんでもない。
だが、それだけに、本書では今こそ地政学が学ばれるべきだとの考えを強調する。
今までは米国の保護国だったために自主防衛や独自外交の必要性が相対的に低く、戦略的なものの考え方が育たなかった。一方、米国の国力衰退とトランプ政権によるモンロー主義の復活、中国の海洋進出等の事情から外交の岐路に立たされており、地政学は非常に重視されているとのことだ。
特に、中国については踏み込んで書かれている。ゆるいイラストのマンガと思わせておきながら、解説役の家庭教師のお姉さんは、女子高生相手に「日本国内で反米運動反基地運動が高まって米軍が徹底すれば 誰の利益になるのかな?」「すでに中国は日本からの沖縄分離工作を始めているわ」とセンター試験には出ないことを、よりにもよって本の最後の最後のコマで教えている。その発言をする家庭教師はなぜか後ろ姿であり、表情は読めない。その後、外交が国の存続に関わることであることを最後に、この本は締めくくられている。
以上から、地政学の重要性は当然のこと、その学問が持つ、使用方法を誤ったときの危険性も感じることができた。次以降の本を読み、世界情勢・政治や防衛政策を読み解く視点としてより理解を深められたらよいと思う。
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地政学という言葉を最近耳にするようになったが、私が学生だった30年ほど前には聞いたことがなかった。
それもそのはず、太平洋戦争の元となったスローガン?「大東亜共栄圏」構想は、この地政学に基づいたモノだったらしく、敗戦と同時に地政学は日陰へと追いやられてしまったようだ。
それが近年また注目されるようになったのは、同盟国アメリカの弱体化と自国最優先主義、膨張する中国の脅威といった日本を取り巻く不安定要素から、地政学の必要性が再認識されたからだろう。
地理と近・現代史が合わさった内容。
シーパワーとランドパワーなる言葉は、恥ずかしながら初めて知った。
島国日本人にはピンと来ない、それぞれのパワーの特徴や、半島国家の苦悩、民族・宗教と国境問題など、様々な国、地域の視点から検証している。
導入はマンガだが、分析などは図表や文章が多く使われている資料的な本である。
中国大陸を下に日本列島を上にして見た地図は、中国が海洋進出を試みる際に、日本がフタとなっていることがよく分かり、ほーっ!と唸った。
日本のこれからは、
①これからもアメリカの従属国
②ロシアや中国などの従属国
③独立国として自主防衛しながら世界各国との関係構築
の三択だろうと書かれており、「独自外交」と「集団的自衛権」を掲げる現首相の安倍氏は③路線だろうが、それは容易なことではなく、ともすると孤立を招くとも書かれていた。
世界を読み解くのに、この一冊はとてもよい足掛かりになると思う。学校でもこういったことを教えてほしいなぁ。2020.1.25
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シーパワー、ランドパワーを中心とした地政学について学べる書籍。敵の敵は味方になり得るし、隣国同士は必ず対立する。
日本は島国であるがゆえ、あまり地政学で物事を捉えることはなかったが陸続きであったり、海峡が狭い箇所(チョークポイント)を通らなくては貿易ができないところではさまざまな国家の思惑が紛争に繫がる。
さまざまな国におけるさまざまな国による地政学について簡易に学べる入門書としてわかりやすい。
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私のように地政学の地の字も知らない人間にはとてもわかりやすい入門書。これ一冊で、現在世界で起きている紛争や各国の思惑等の世界情勢への理解度がかなり深まった。アラブ人は国の概念が希薄で宗派と部族への帰属意識が強いことや、外交とは昨日の味方は今日の敵、永遠の友も、永遠の敵もない、あるのは永遠の利益のみというイギリスの格言。外交に無知すぎる自分が恥ずかしくなった。外交とはあくまで国対国で、決して個人対個人ではない。そこを見誤ると政治に翻弄されて本質を見誤ってしまう、とも感じた。
今までニュースの薄っぺらな情報に翻弄されていた自分が恥ずかしい。改めてワイドショーの害悪性、日本メディアの衰退にも危機感を持った。
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私にとって地政学にはまる足掛かりとなった本。
研究室に何気なく転がっていたものを、活字嫌い漫画好きの私が手をとった。とてもわかりやすく、地政学への興味をもつためには最適といえる。
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地形によって国が取る行動が定義され、その国のそれぞれの行動が関係し合う事で歴史が作られて来た事が分かる地政学の入門書。国の行動の裏には地政学の考えがあり、地政学を理解する事で歴史や政治の理解の一助になる。ちなみにマンガは殆ど無くて文章メインです。
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文章がわかりやすくてすごくいい。
むしろ、マンガでわかるとは銘打ってるけど漫画の説明文の方がわかりにくかったかも。そっちのふきだしにそのセリフ入れたら意味がちょっと変わってくるでしょ…みたいな。もう少し漫画の方に手間をかけてはもらえなかったものか…(笑)
それでもイラストがついててわかりやすいので満足。情勢は変わっていくから、このジャンルは定期的に最新のを買った方がいいのかな〜
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借りたもの。
ランドパワー、シーパワー、それに基づく近現代史の動向などをわかりやすく解説している。
秋元千明『戦略の地政学 ランドパワーVSシーパワー』( https://booklog.jp/item/1/4863101864 )よりも簡潔に書いていてわかりやすいと思った。
正距方位図法で主要国家や紛争地域を中心にした視点から、何故争いが起きるのかがわかりやすい。
イギリスの地政学的優位性、ロシア包囲網といったヨーロッパ諸国の問題。
ドイツの姿がとにかく興味深かった。
先の世界大戦の引き金とも言えるドイツの政策・戦略に、ハウスホーファーの「パン・リージョン理論」が大きな影響を与えてた事…それはヒトラーの暴走で夢破れ、ドイツは敗戦するのだが……
そして現在。ドイツ包囲網という側面があるユーロだが、したたかに存在感を増している姿は、エマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』( https://booklog.jp/item/1/4166610244 )にも言及されていたが、フランスのドイツ警戒があることが理解できた。
かつてのシーパワー&ランドパワー大国だったフランス、半島の付け根国家であるポーランドの悲劇…(朝鮮半島もそうなのでは?)
シーパワー獲得を狙う中国。
現在の状況は、「北虜南倭」の弱体化する、地政学的に見たら理にかなった好機であることは理解できた。
そこにはやはり、欧州諸国の植民地として切り刻まれた屈辱の歴史に大きく関係があると思うが、だからと言って現代の拡張路線による周辺国の主権侵害の方法はやはりお門違いだと思うのは私だけだろうか?
朝鮮半島は強いものに靡く国だという事は歴史を見てもその通りだと思う。日本とは国境を接する国だし、同盟国ではなく単なる友好国(笑)だし。「日本が自立した大国になれば日韓関係も劇的に変わるはず(p.91)」としてるが、現状の日本の国力では土台無理な話。
アメリカを地政学的に紐解き、スパイクマンのリムランド論の先見性などを紹介。
トランプ大統領の事を「地政学的思考(現実主義)の持ち主」と言っているが、伝統的にアメリカは自国第一(中心)主義なので、まぁ、それは言わずもがな。
ちょっと著者の言っていることにモノ申す……
世界のパワーバランスの変化――アメリカの国力衰退による――を指摘している訳だが、その理由を移民問題――人種比率が、勤勉なプロテスタント文化の白人系比率が減少し、享楽的なライフスタイルのスパニッシュ系が増えている事――は、お門違いに思えた。
寧ろ2000年に入ってから「テロとの戦い」でアフガニスタン出兵が20年にもわたって戦争をしていたことが、アメリカの国力衰退?の原因ではないか?
他、インドやベトナム、イスラエルやイラン、サウジアラビアなど地政学的に争いが絶えないチョークポイント近隣の問題を解説。
最終章に日本を取り巻く問題を取り上げている。
好条件(自然環境)に恵まれた、超ラッキーな国であったが故に、長年諸外国(他民族)国家に侵略されずすんだこと。
16世紀の日本の鉄砲保有数が世界最高水準(実は軍事大国)だったこと。
シーパワー薩摩藩vsランドパワー長州藩と���う解釈が興味深い。
旧日本海軍の軍人・秋山真之がアメリカの近代海軍の父・マハンに直接師事していたとは……
シーパワー国家・米英を仮想敵国にする海軍とランドパワー国家・ソ連を仮想敵国にする陸軍の対立という、内紛状態(予算の奪い合い)の馬鹿馬鹿しさは、薩長連合の以来の思想対立が原因との事……
先の大戦で「ランドパワー国家になる」悪夢をようやく捨てられたことは言わずもがな。
「地理的条件は変わらない しかし時の政権によってその意味は変わる」
日本は中国の海外進出を阻む防波堤なんだな…としみじみ思う。
沖縄の事で「すでに中国は日本からの沖縄分離工作を始めているわ」「反戦平和運動も誰の利益になっているのか…難しい問題ですね」(p.187)と明言している点には驚いた!
もし仮に、沖縄が中国に従属したとして、独立と経済発展をするとは思えないのだが。むしろ軍事拠点として禿山にされる気がしてならない。
‘アメリカの「保護国」同然の日本は、これまで自主防衛は独自外交をする必要がなかった(p.200)’、それ故の日本の反戦思想や教育はもう破綻している。反戦と国防は別問題だ。
「軍事に力を入れること」=「戦争になる」という理論、「戦争をして庶民生活では惨めな思いをしていたから戦争反対」という視点ではもう何も解決しないことが明白だ。
この本では
1.アメリカの従属国としてこのままの関係を維持する
2.ロシア・中国といったランドパワーの従属国となる
3.独立国としての自主防衛
を挙げている。
1.に関しては(今まで恩恵を受けてもいるのに何故か)しょっちゅう批判の声が上がっている。この本はトランプさんが就任して1年経った時に出た本なので、急な方針転換で今後破綻する可能性を念頭に置いている。でも直近でさえ現実的ではない。
2.は歴史的大事件だが、シーパワーの日本がそこに依存してもメリットが少ない気がする……
3.に関しては日本の経済発展の現状を見て無理だ。何より佐藤正久『高校生にも読んでほしい安全保障の授業』( https://booklog.jp/item/1/4847093690 )で指摘されているように、一国だけでは強国にあっという間に潰される。
色々考えさせられる。
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第1章
地政学のダイナミズムがわかる
3つの国から見た世界
第2章
強硬外交の理由がわかる
日本の近隣4国から見た世界
第3章
国の歴史と思想を知る
さまざまな国から見た世界
第4章
歷史と未来を考える
日本から見た世界
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著者の政治観が端々にあり、客観的とは言いがたい。そのためその他の解説も適切なのか不明に感じる。漫画もキャラクターに解説のセリフをつけただけ。