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水月湖の年縞から導き出した素晴らしい成果を分かりやすく解説している好著だ.著者の前作「時を刻む湖」は既読だったので,状況は知っていたが,本書では花粉の化石の分析から水月湖周辺の15万年の植生の変遷を示している(p128).その図から杉が周期的に繁茂と枯渇を繰り返していることなどを指摘し,この現象がミランコビッチ理論と合致していることを示している.素晴らしい.氷期の終わり,11600年前,人類が農耕を始めなかった理由付け(p185)は非常に説得力があった.
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年縞から気候を読み解く話の恐ろしく誠実な積み上げと後半のかなり荒っぽくも感じられる推論のギャップが面白い。
安定相と周期相と乱雑相のある周期的な展開、という気候論はなかなか直観にフィットする。乱雑相には狩猟採集経済のほうが強いのもおそらくそうだろう。今更狩猟採集はできにくいが乱雑相の対応が問題というのもおそらく正しい。多様性を取っておこうよ、が最後に来るのが肩透かし感がある。でも、今何かあるというわけでもないのだから仕方ないか。
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研究者による一般人向けの古気候学解説。水月湖から採取された極めて良質な年功堆積物の調査を通してここ 10万年の気象を解明するとともに、近年の科学研究成果をもとに気候に関する「新常識」を紹介する。人類活動の気候の関係について新たな考察を提起して刺激に満ちた一冊。
池谷裕二に続いて中川毅を発掘したブルーバックス編集部も評価したい。一時期は Word / Excel の解説書を出したり、かなり迷走していた気がするが、中高生がサイエンスに興味を持つのはやはりブルーバックスからという気がするので、今後もこういう良書を期待したい。
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読了。
途轍もなく長い時間軸で話が進み、10万年などあっと言う間の出来事として語られるのは何とも刺激的。
寒期と間氷期が凡そ10万年のサイクルで交互に繰り返している事が、最新の古気候学/地質年代学から明らかになっており、 地球の公転軌道のサイクルによって気象現象の変化が起きるというミランコビッチ理論が、実データで証明されつつある。
人類の歴史は僅か25万年であり(諸説あり)、前回の氷河期で僅かに生き残ったホモ・サピエンスの子孫が、現在”たまたま”暖かい時代に暮らしているということになる。
我々人類が、必ず訪れるであろう次の氷河期を生き残れる保証はない。
壮大な地球の歴史の中では、生物の栄枯盛衰など一瞬の出来事に過ぎないことが分かる。
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福井県水月湖湖底のボーリングにより、十万年分の気候データを入手し研究したという話
地球の公転軌道と自転軸が何万年もかけて周期的に変化することが気候を周期的にするミランコビッチ理論
それでは説明できないカオス的な振る舞い
苦労話と情緒的な表現多め
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過去の気候変動はどのようだったのか?10万年ごとに繰り返す氷期。ミランコビッチ理論は地球の公転周期が変動するためという。楕円から真円へ、そしてまた楕円に。しかし線形予測はいつも正しいとはいえない。グリーンランドの地中をボーリングして採取した氷の層から気候変動を調べる。また、福井県の三方五湖の水月湖から貴重な「年縞」を取り出して、過去15万年の気候変動を推定する。これから人類が向かうのは、地球温暖化か、それとも次の氷期か。すでに氷期に入る年数は過ぎているという。
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??冬休みに読みたい三冊??
「読まなくてもいい本」の読書案内知の最前線を5日間で探検する(橘 玲 著 筑摩書店 1600円税別 2015年11月刊行)
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています。査定歴20年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。
今年(2017年)最後のブックガイドになりました。気楽な本を選んでいるとはいえ、医学がからんでいるものばかり。でも保険って社会的側面も大きいですよね。そこで今回は年末スペシャル、医学から離れました。・・・ここ半年の間に読んだ医学系ではない本の中から、一見保険とは無関係に見えますが意外に仕事に役立ちそうという3冊を選んでみました。
まずは橘玲「「読まなくてもいい本」の読書案内」。これはおすすめです。複雑系・進化論・ゲーム理論・脳科学・功利主義の分野で読むべき入門書を示しつつ、トンデモ本を一刀両断。ネット社会以前の学問、とくにポストモダンとか精神分析とか・・・ほとんど陳腐化してしまいました。ネット社会以降の日本の文系学問(大学でやっている法学・経済学・文学・教育学 etc.)はすべからく古いパラダイムから脱出できず、文系大学の廃止は当然・・・。まあ痛快ではあります。アンダーライティング部門で科学的な思考をしても、保険会社って、ま、古い文系パラダイムが主流だからな〜というグチをいいがちですが、そんな人も溜飲がさがるという一冊。因みにドクター・ホンタナのブックガイドは、読まなくてもいい本は「まあまあ」とか「〜には役立つ」程度の表現を使っています。読むべき本は絶賛していますので、ご参考に。
2冊目は中川毅「人類と気候の10万年史」。気候と保険・・はかなり離れていそうですが・・・。成長トレンドにせよ下向トレンドにせよ、普段の日常は(保険業にせよ、人生にせよ)ゆっくりと変動するトレンドを前提にしていますよね。ところが、予測できない激変があってガラガラポンになり、またそこからトレンドになる。このガラガラポンをPhase change(相転移)と呼びます。特に、気候学では、温暖化・寒冷化のPhase changeのしくみがかなり詳しく明らかになっています。われわれのアンダーライティング環境もいつPhase changeに見舞われるかわかりません。トレンドを追うだけではなくPhase changeに備える、そんな視点の重要性を教えてくれる、これも絶賛の一冊です。
最後はちょっとタイトルは微妙ですが、片山杜秀「国の死に方」。この本が保険と関係あるとは思わずに読んでいたのですが、関東大震災の時の保険金不払問題(地震免責)が詳しく書かれていて驚きでした。このときのさまざまの出来事が保険金不払い問題とからんでいたらしいです。地震による火災ではなく放火だという強弁などなど。結局政治主導で約款を超えた支払を強要されたらしいです・・・いやあ、勉強になりますよ。「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として(マルクス)」ですね。
年末年始は5連休以上の会社が多いのではないでしょうか。この3冊、こたつでぜひ読ん���みてください。それではみなさんよいお年を。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2017年12月)
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ふと気になって買ってみたら、年縞という初めて聞く言葉と、そこから見える、過去の気候、植生の変化。
花粉研究から古気候研究。
花粉がものすごく硬い物質でできてるのにも驚いた。
続けて、年縞調べの科学者の物語の本も買ってしまった。楽しみ。
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水月湖から話は始まる。
ボーリング調査自体は知っていたし、とても地道で時間がかかるが大事な作業もあるということも認識していたが、そこから何が、どこまでわかるのかという点は、読んで知るものがとても多かった。炭素ではなく、花粉での分析もそれだ。
こういった派手ではない多くの調査が、今の科学を支えているということを改めて実感した。
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今言われている温暖化などを含め、20万年前の地球はどうだったのか、氷期と間氷期の繰り返しに起きていたこと、温暖化・寒冷化などなど、20年前ぐらいからメディアで取り上げられている地球温暖化を、根拠のある情報で説明してあり、自分の持っていた価値観の変化を気づかせてくれる内容でした。
とくにこの本が注目している「年縞」という、堆積物を時間軸の基準として過去のことを調べ、未来を考察していく流れは、なるほどなーと思いました。しかも、ここ日本にある、福井県水月湖の年縞が世界的に観ても最高レベルの標準時計になっているとは!まったく知識がなかったけど、とても面白いなと感じました。もっと年縞について知りたいと思いました。また、水月湖が世界的にも最高レベルというのが日本人として、誇りを持てるなと感じました。
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事象の分析では無い、
地球の、人々の営みの姿を気象から読み取ろうとする試みは素敵だなと思った。
その裏にあるのはあたりに地味な作業とイノベーション。
ライフワークってこういうことかなと羨ましい。
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水月湖に行ってきました。宿泊は湖畔の水月花という旅館です。水月湖は静かな神秘的な湖で、夜になると周りにほとんど明かりが見えません。満月の時には、美しい月が湖面に映ります。もちろん、年縞博物館にも行きましたよ。たまたま中川毅氏がいて、雑誌の取材を受けていました。ぜひ、読んでください、感動します。世界基準ですよ。中川氏の写真は、インスタに載せました。
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北京から蘇州へ向かう高速鉄道の車内で読み始める。
著者は古気候学という分野の専門家。
初めて読む人だなあ、と思っていたら、福井県の水月湖のボーリング調査をしたチームの一人。
堆積物の中に含まれる花粉の化石の分析を専門とする。
師匠が安田喜憲さんと知って、おおっ、と思い出した。
安田さんの文章は、たしか中学の教科書に載っている。
今、花粉分析は少し下火になりつつある研究方法だとのことだが、放射性炭素年代測定(アメリカには分析の専門会社がある!)の限界について、初めて知った。
炭素14の最初の存在量からの減少で測るのに、最初の存在量がわからないため、千年単位の誤差が出るという。
地球温暖化にかかわる議論に、新しい視座を与えてくれる。
既に氷期に入っていておかしくない地球が未だに暖かい時期にあるのは、農業開始による二酸化炭素増加という説がある。
かなり今の温暖化の議論の布置が変わってしまいそうな話だ。
現在、大局的には気候変動はマイルドだが、突然予想外の大きな変化をする。
複雑な系には、安定相と周期相、そして乱雑な相があることによるのだそうで、そういわれると納得だ。
天候の変動での災害は、あの東日本大震災の人的被害と比べても桁違いの被害をもたらすが、今の人類の力でそれに対策することは難しい。
古代文明でも一年程度の気候災害に対応する備えはあったが、では現在ではといえば、大きく水準は変わっていないらしい。
人口が少ない時代には、狩猟採集生活のほうが、予想外の気象変動にうまく対応できるという話も驚く。
結局、社会としてどこまでのコスト負担に耐えられ、どのような在り方をしたいのかを問い直す必要がありそうだ。
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◆壮大で緻密な地球のはなし◆
世界中を悩ませている「地球温暖化」。しかし、降り積もった堆積物を読み解くと、人類は過去にもっと激しい気候変動を体験していた。
本書では、古気候学者である著者が過去の研究データ等を用いて気候のメカニズム、人類と気候の関わりについて解説しています。いかにも難しそうなテーマに思えますが、わかりやすい工夫がされています(研究の手法をプリンとストローに例えてみたり…)。ぜひ、自然の壮大さと科学の面白さを感じてみてください。
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福井県・水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録した地層で、現在、年代測定の世界標準となっている。その年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遥かにしのぐ「激変する気候」だった。人類は誕生から20万年、そのほとんどを現代とはまるで似ていない、気候激変の時代を生き延びてきたのだった。過去の詳細な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめ直します。