投稿元:
レビューを見る
古気候学の専門家である中川毅氏の著書、福井県にある水月湖を通じて日本や世界中で起こった気候変動について解説する作品。
中川氏は水月湖の湖底に堆積する、約15万年分の「年縞」を研究しているのだが、他の湖と比較するととても綺麗な縞模様をしている。なぜなら水月湖は年間の水温が安定して対流が少ない事、また深部の酸素濃度が低いため湖底をかき回す生物がいない事、そしてプレート活動の影響によって、堆積のスピード以上に地盤が下がっており、決して干上がらない事が要因らしい。
地球は太陽の周りを公転しているのだが、他の天体からの重力の影響により、軌道が真円になったり楕円になったりするそうだ。また地軸の傾き自体も数万年のサイクルで変化しており、これらはミランコビッチ理論と呼ばれ氷河期到来の原因と考えられてきた。今までは理論上の結果だったものが、水月湖の年縞を分析することによって、物理的な証拠との因果が証明される様子は非常に興味深い。
実は現代は氷河期と氷河期の間の「間氷期」と呼ばれる安定した時代なのだが、そろそろ間氷期も終わり次の氷河期に向う時期らしい。人類が生んだ温暖化が氷河期への進行を遅らせているという説もあるのだが、いつかそのツケが急激に回ってくると考えたら…チョット恐ろしい気がする。
投稿元:
レビューを見る
地道に日本の小さな湖の堆積物を調査した結果、10万年分の気候の変動の歴史からいえば、地球は寒冷期に向かっており、文明による温暖化がなければ、もっと寒くなっていたらしい。
自然の力は、人間の力をはるかに超え、大きな寒暖を繰り返している。学者さんの根気強い作業に頭が下がります。
投稿元:
レビューを見る
湖底の堆積物の年縞を詳しく調べることで、過去10万年もの気候の変動が明らかに。天文学的な気候の周期変動のメカニズムが分かりやすく紹介されており、人類による温暖化を理解する上でも重要な知見。
投稿元:
レビューを見る
メディアや世間で騒がれている異常気象や温暖化というワードに対して、認識にいつも違和感を感じていて、その背景をしっかり学びたく手に取った。素人にわかりやすく、例えなどをふまえながら解説されていて好感をもった。現代の気温変化は氷期に比べると安定していること、それゆえに農耕が繁栄したこと、水月湖が偶然の産物で年稿蓄積されていること、植生は気候を反映していることが興味深かった。
投稿元:
レビューを見る
「地球温暖化防止」に関わる報道を見聞きすると頻繁に違和感を感じる。
いわく「歴史的責任」「共通だが差異ある責任」「将来世代への倫理的責任」などの他者への責任追及。
化石賞授与など、誰かを糾弾し晒しあげるやりくち。
しかし、追い求める理想の世界の姿は、運動の先にあるのかどうか。
相当程度確からしさに欠けることを根拠に過激に運動する。
騒いでいる人たちは、本当に地球温暖化防止を追い求めて運動しているのか。
そう信じるのはナイーブな見方ではないか。
地球温暖化防止は、二酸化炭素排出抑制・防止の別名と言ってよいだろう。
つまり、化石燃料を利用し、経済活動を行う権利の分捕り合戦ともいえるもの。
国家間の経済戦争という表現を使う人もいる。
しかし、化石燃料の浪費や枯渇、結果として生み出される二酸化炭素の濃度上昇は、不可逆的な変化であることは間違いないので、慎重な態度で臨むことが必要であることは間違いないと思う。
「地球温暖化防止」「化石燃料の有効活用」は大切な論点を含むものだけに、その議論の際には、感情的な、扇情的なものいいは差し控えるべきではないか。
日本の世論の形成に大きな影響力を持つメディアの皆さんにも、冷静な評価軸を持ってもらうため、環境省やWWFのプレスリリースを見るだけでなく、こうした、学術的な考察を分かり易く紹介した本を読んでもらいたいもの、と思った。
投稿元:
レビューを見る
水月湖の年縞から導き出した素晴らしい成果を分かりやすく解説している好著だ.著者の前作「時を刻む湖」は既読だったので,状況は知っていたが,本書では花粉の化石の分析から水月湖周辺の15万年の植生の変遷を示している(p128).その図から杉が周期的に繁茂と枯渇を繰り返していることなどを指摘し,この現象がミランコビッチ理論と合致していることを示している.素晴らしい.氷期の終わり,11600年前,人類が農耕を始めなかった理由付け(p185)は非常に説得力があった.
投稿元:
レビューを見る
年縞から気候を読み解く話の恐ろしく誠実な積み上げと後半のかなり荒っぽくも感じられる推論のギャップが面白い。
安定相と周期相と乱雑相のある周期的な展開、という気候論はなかなか直観にフィットする。乱雑相には狩猟採集経済のほうが強いのもおそらくそうだろう。今更狩猟採集はできにくいが乱雑相の対応が問題というのもおそらく正しい。多様性を取っておこうよ、が最後に来るのが肩透かし感がある。でも、今何かあるというわけでもないのだから仕方ないか。
投稿元:
レビューを見る
研究者による一般人向けの古気候学解説。水月湖から採取された極めて良質な年功堆積物の調査を通してここ 10万年の気象を解明するとともに、近年の科学研究成果をもとに気候に関する「新常識」を紹介する。人類活動の気候の関係について新たな考察を提起して刺激に満ちた一冊。
池谷裕二に続いて中川毅を発掘したブルーバックス編集部も評価したい。一時期は Word / Excel の解説書を出したり、かなり迷走していた気がするが、中高生がサイエンスに興味を持つのはやはりブルーバックスからという気がするので、今後もこういう良書を期待したい。
投稿元:
レビューを見る
読了。
途轍もなく長い時間軸で話が進み、10万年などあっと言う間の出来事として語られるのは何とも刺激的。
寒期と間氷期が凡そ10万年のサイクルで交互に繰り返している事が、最新の古気候学/地質年代学から明らかになっており、 地球の公転軌道のサイクルによって気象現象の変化が起きるというミランコビッチ理論が、実データで証明されつつある。
人類の歴史は僅か25万年であり(諸説あり)、前回の氷河期で僅かに生き残ったホモ・サピエンスの子孫が、現在”たまたま”暖かい時代に暮らしているということになる。
我々人類が、必ず訪れるであろう次の氷河期を生き残れる保証はない。
壮大な地球の歴史の中では、生物の栄枯盛衰など一瞬の出来事に過ぎないことが分かる。
投稿元:
レビューを見る
福井県水月湖湖底のボーリングにより、十万年分の気候データを入手し研究したという話
地球の公転軌道と自転軸が何万年もかけて周期的に変化することが気候を周期的にするミランコビッチ理論
それでは説明できないカオス的な振る舞い
苦労話と情緒的な表現多め
投稿元:
レビューを見る
過去の気候変動はどのようだったのか?10万年ごとに繰り返す氷期。ミランコビッチ理論は地球の公転周期が変動するためという。楕円から真円へ、そしてまた楕円に。しかし線形予測はいつも正しいとはいえない。グリーンランドの地中をボーリングして採取した氷の層から気候変動を調べる。また、福井県の三方五湖の水月湖から貴重な「年縞」を取り出して、過去15万年の気候変動を推定する。これから人類が向かうのは、地球温暖化か、それとも次の氷期か。すでに氷期に入る年数は過ぎているという。
投稿元:
レビューを見る
??冬休みに読みたい三冊??
「読まなくてもいい本」の読書案内知の最前線を5日間で探検する(橘 玲 著 筑摩書店 1600円税別 2015年11月刊行)
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています。査定歴20年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。
今年(2017年)最後のブックガイドになりました。気楽な本を選んでいるとはいえ、医学がからんでいるものばかり。でも保険って社会的側面も大きいですよね。そこで今回は年末スペシャル、医学から離れました。・・・ここ半年の間に読んだ医学系ではない本の中から、一見保険とは無関係に見えますが意外に仕事に役立ちそうという3冊を選んでみました。
まずは橘玲「「読まなくてもいい本」の読書案内」。これはおすすめです。複雑系・進化論・ゲーム理論・脳科学・功利主義の分野で読むべき入門書を示しつつ、トンデモ本を一刀両断。ネット社会以前の学問、とくにポストモダンとか精神分析とか・・・ほとんど陳腐化してしまいました。ネット社会以降の日本の文系学問(大学でやっている法学・経済学・文学・教育学 etc.)はすべからく古いパラダイムから脱出できず、文系大学の廃止は当然・・・。まあ痛快ではあります。アンダーライティング部門で科学的な思考をしても、保険会社って、ま、古い文系パラダイムが主流だからな〜というグチをいいがちですが、そんな人も溜飲がさがるという一冊。因みにドクター・ホンタナのブックガイドは、読まなくてもいい本は「まあまあ」とか「〜には役立つ」程度の表現を使っています。読むべき本は絶賛していますので、ご参考に。
2冊目は中川毅「人類と気候の10万年史」。気候と保険・・はかなり離れていそうですが・・・。成長トレンドにせよ下向トレンドにせよ、普段の日常は(保険業にせよ、人生にせよ)ゆっくりと変動するトレンドを前提にしていますよね。ところが、予測できない激変があってガラガラポンになり、またそこからトレンドになる。このガラガラポンをPhase change(相転移)と呼びます。特に、気候学では、温暖化・寒冷化のPhase changeのしくみがかなり詳しく明らかになっています。われわれのアンダーライティング環境もいつPhase changeに見舞われるかわかりません。トレンドを追うだけではなくPhase changeに備える、そんな視点の重要性を教えてくれる、これも絶賛の一冊です。
最後はちょっとタイトルは微妙ですが、片山杜秀「国の死に方」。この本が保険と関係あるとは思わずに読んでいたのですが、関東大震災の時の保険金不払問題(地震免責)が詳しく書かれていて驚きでした。このときのさまざまの出来事が保険金不払い問題とからんでいたらしいです。地震による火災ではなく放火だという強弁などなど。結局政治主導で約款を超えた支払を強要されたらしいです・・・いやあ、勉強になりますよ。「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として(マルクス)」ですね。
年末年始は5連休以上の会社が多いのではないでしょうか。この3冊、こたつでぜひ読ん���みてください。それではみなさんよいお年を。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2017年12月)
投稿元:
レビューを見る
ふと気になって買ってみたら、年縞という初めて聞く言葉と、そこから見える、過去の気候、植生の変化。
花粉研究から古気候研究。
花粉がものすごく硬い物質でできてるのにも驚いた。
続けて、年縞調べの科学者の物語の本も買ってしまった。楽しみ。
投稿元:
レビューを見る
水月湖から話は始まる。
ボーリング調査自体は知っていたし、とても地道で時間がかかるが大事な作業もあるということも認識していたが、そこから何が、どこまでわかるのかという点は、読んで知るものがとても多かった。炭素ではなく、花粉での分析もそれだ。
こういった派手ではない多くの調査が、今の科学を支えているということを改めて実感した。
投稿元:
レビューを見る
今言われている温暖化などを含め、20万年前の地球はどうだったのか、氷期と間氷期の繰り返しに起きていたこと、温暖化・寒冷化などなど、20年前ぐらいからメディアで取り上げられている地球温暖化を、根拠のある情報で説明してあり、自分の持っていた価値観の変化を気づかせてくれる内容でした。
とくにこの本が注目している「年縞」という、堆積物を時間軸の基準として過去のことを調べ、未来を考察していく流れは、なるほどなーと思いました。しかも、ここ日本にある、福井県水月湖の年縞が世界的に観ても最高レベルの標準時計になっているとは!まったく知識がなかったけど、とても面白いなと感じました。もっと年縞について知りたいと思いました。また、水月湖が世界的にも最高レベルというのが日本人として、誇りを持てるなと感じました。