投稿元:
レビューを見る
皆さんは地球温暖化が進む現代を異常な時代だと考えるだろうか?人間の寿命が長くて8,90年だということを考えて、つい20数年前から騒がれ始めた地球温暖化のことを異常だと多くの人が考えるだろう。しかし果たしてそれは長い地球の歴史から見たら異常なことなのだろうか。現在進行している地球温暖化が良いか悪いかという人間社会的な観念は一旦置いておいて考えると、過去の気候変動を紐解いてみると現代からは想像もできない壮絶な時代があったのだ。この本はそのような古気候を人間が変化を感じ取りやすい数年スケールで復元した著者によって気候に関して全く知らない人でもわかりやすい例えを交えて理解しやすく書かれた名著である。
福井県にある水月湖には「年縞」と呼ばれる、現在から7万年前までの気候情報が詰まった宝箱のようなものが1年単位で、最高の状態で保存されている。それを分析する際、著者は専門である花粉分析を用いるのだが、花粉の化石から古気候が復元できるというから驚きである。さらに驚くべきことに花粉化石には古気候だけでなく、水月湖周辺に何の木がどのくらい、どの時代に生えていたのかが記録されていて、さらにそれがもっと壮大な話とリンクしていく。刑事物の物語で例えれば、小さな事件を追っていたら初回から伏線が張られていた巨大組織へと繋がる、というような感覚である。花粉という身近なもの、人によっては忌み嫌われているものが壮大な古気候復元物語の主役になっているというのはロマンを感じられるだろう。本著ではこの花粉以外にも一般には知られていない事柄がわかり易く説明されており、また話の流れは一貫していて明瞭なので、楽しく読みすすめることができる。ぜひこの本を読み新たな知見を広げてみてはどうだろうか。 (地球惑星科学コース 3年)
投稿元:
レビューを見る
温暖化現象を否定する本を読んだこともあり、世の中で言われているような単純なものではないと知っていましたが、ここまで複雑なことだとは思っていませんでした。
気候の変動が単純なシミュレーションで予測できるものではないことがよくわかります。
湖の地層(年縞)から当時の気候を測る作業について詳しく書かれていますが、読んでいるだけで気が遠くなるような緻密な作業です^^;
最終章の人類の狩猟生活と農耕生活における、耐性の違いをシミュレーションした話がおもしろかったです。
農耕生活は急激に気候が変化する時代には不向きで、それが寒冷期に多くの地域で農耕が始まらなかった理由ではないかというのが、著者による考察でした。
投稿元:
レビューを見る
現代とはまるで似ていない気候激変の時代を生き延びてきた人類。福井県の水月湖に堆積する「年縞」。何万年も前の出来事を年輪のように1年刻みで記録し、現在、年代測定の世界標準となっている。その年縞が明らかにしたのが、現代の温暖化を遙かにしのぐ「激変する気候」だった。過去の精密な記録から気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで現代を見つめなおす。
投稿元:
レビューを見る
水月湖年縞研究の苦労と、それがもたらした成果の偉大さに胸が熱くなった。
当然のように語られている研究結果は、本当に丁寧で地道な一つ一つの作業の積み重ねで得られている。研究者にはつくづく頭が下がる。
昨今言われる気候変動、特に温室効果ガスによる温暖化はもはや経済的・政治的にも重大なトピックだが、地球レベルで見ればごくごく最近のちっぽけな話に思われた。
それ以上に、過去の氷期の時代には数十年単位で東京がモスクワになったり奄美大島になったりするような気候変動がザラにあったわけで…
(ごくごく最近、といっても、通例言われるような産業革命以降の直近100年間での化石燃料の大量消費によるものではなく、8000年前からのアジアでの農耕・ヨーロッパでの森林伐採が原因ではないかとする説もあることに驚いた。現代人は自責的と同時に自意識過剰?)
とはいえ、周期上は再び氷期に入っているはずの地球をいまだに穏やかで温暖な間氷期に留めているのは人間の活動によるところが大きそう。今後100年間で徐々に気温が上がっていく予想は、様々な課題をはらみつつもかなり"マシ"なシナリオであって、気候が予測すらも不可能なレベルで暴れる時代に突入する可能性もある。
先進国が"進んでいる"ように見えるのは、帰納的な予測が成り立つ穏やかな環境の中においてだけ。先の氷期の終わり頃の狩猟採集民と農耕民の比較は示唆に富んでいた。
劇的な環境変化の中では、多様性が生存にとって大きな意味を持つ。
多様性、包摂、持続可能性がキーワードになっているこの時代において、学ぶことの多い良書だと思った。
投稿元:
レビューを見る
何億年という長い縮尺で地球の気温変化を見たとき、今は寧ろ寒冷な時代にいる。何万年というスケールまで落としてみると、温暖な時代と寒冷な時代を約10万年ごとのサイクルで繰り返しており、今は温暖な気候「間氷期」にいる。長いサイクルで見ると、いま騒いでいる地球温暖化も大したことがないことだと思えるかもしれないが、困ったのは、今いる間氷期は安定して気候にあるが、氷期は気候の不安定さが増すということだ。すなわち今の農耕を基本とした生活スタイルでは安定した食料供給が難しくなる。かと言って気候に対して柔軟性のある狩猟採集スタイルも、温暖な気候で爆発して人口を賄うことは不可能。。
これからの気候変動では、人間の大脳をフル活用して、知恵で生き延びていくしかない。
投稿元:
レビューを見る
地球の浪漫を感じられる本。全く想像のつかない世界観に引き込まれる。三方五湖にある水月湖は世界有数の良質な湖底堆積物が…とかビックリな内容が沢山で、地質を調べる方は本当にロマンチストなんやろなーって感じました。
未知の世界、普段縁のない話は、最初は入ってこなかったけど、最後には、この水月湖に是非一度行ってみたくなった❗️
投稿元:
レビューを見る
人類の不自然な行動が地球の寒冷期を遅らせているのかもしれないといった考察が面白かった
最近のよくある地球温暖化問題をメインに扱う書籍かと思いきや、タイトル通りでこれまでの地球の気候やその研究について書かれていた
無知な分野であったため大変勉強になった
また難しい用語などもなく説明も丁寧でストレスなく読めた
水月湖の研究について詳しく書かれていて興味が沸いた
機会があれば水月湖を観光し、再びこの本を読んでみたいと思った
投稿元:
レビューを見る
地質学に無知な私でも置いてきぼりにしない読みやすい構成になっている。まるで壮大な物語を読んでいるようだった。
重要な学説と著者らの研究について豊富な図・データを用いて解説しているため、得られる知識も多い。読者の関心が高いであろう地球温暖化と氷期についても色々と考えさせられた。「世界標準ものさし」水月湖、いつか行ってみたい。
投稿元:
レビューを見る
科学的な話もストーリーが織り交ぜられ、読みやすく、すんなり読み終わった。
農耕と狩猟採集に関する考察は面白かった。たしかに、毎年のように変化が激しい世界では、農耕では太刀打ちできないだろう。
これからの世界がどう変わっていくか、カオス的な見地から予測は難しいということだった。人為的な温暖化は進むらしいが。
人類が発展してきた最近は安定で温暖な期間だったということだが、これからは全く異なる世界になるかもしれない。これまでの常識にとらわれないで、臨機応変に対応していくことが必要になるんだろう。
不安定な世界になったとき、人類は科学技術で乗り切ることができるだろうか。
投稿元:
レビューを見る
今、気候変動と言われていることはなんなのか、これからどのようになるのか。
その疑問に応えるために、過去の地球の気候が研究されてきた。
どんな証拠を人類が手にしており、そこからどんな技術で何がわかるのか。気候研究の携わる多くの研究者が必死で研究した結果、分かったのは「今起きていることは、これまでの歴史の中にはなかったことだが、今後何が起こるのかわからない」ということ。
その、わからなさについて丁寧に説明されており、とてもわかりやすい。
わからないからどうでもいいのではなく、わからないからこそ、いろいろ考えて暮らさないといけないと感じる。
投稿元:
レビューを見る
気候変動や気温の上昇は、人間の活動によるところが大きいという点が現在クローズアップされています。本書では、地球規模の気候変動のより長期のサイクルが存在し、それが10万年単位で楕円と円に変形する地球の公転軌道であったり(ミランコビッチ理論)、2万3千年ごとに変わる地軸の傾きの変化(歳差運動)によることが説明されています。加えて、火山活動、大陸の移動、人類の活動によるメタンや二酸化炭素の排出など、複数の要因が関連しあって気候や気温に変化を与えているわけですが、こうした複数要因の関連性により、二重振子運動の軌道を予測することが不可能であるように、初期条件のわずかな違いが増幅されてカオスを発生させるような状態にあるため、気候や気温の変化を予測することが不可能であることが説明されている点に蒙を啓かれた思いがしました。
また南氷床のボーリング試料に含まれる空気を分析することにより、メタンや二酸化炭素の大気の含有量の変遷を分析することが行われた結果、人類の経済活動が活発化した近年では、ミランコビッチ理論で予測される含有量を超えてメタンや二酸化炭素が増加しており、これがアジアの水田耕作やヨーロッパの森林破壊によるところが大きいと分析されていることが紹介されています。長期サイクルでは、現代の間氷期は既に終わり、むしろ氷河期を迎えつつ局面にあるも、大気中のメタンや二酸化炭素が増加していることにより、気温の低下が抑制されている可能性に関する件を読んだ時には、現在議論されている気候変動に別の視点を与えてくれている思いがしました。
そして記憶に新しい1993年の日本のコメ不足。その2年前のピナツボ火山の大噴火によって引き起こされた記録的な冷夏による米不作によるものでしたが、気候変動が大きい際には農耕より寧ろ狩猟の方が生存に有効と説明しています。それは実に狩猟が多様な自然環境から食料を得ることによるのですが、これも昨今良く耳にするダイバーシティに通じる考え方と感じました。
本書で一番感銘を受けたのは、著者である中川毅氏の研究グループにより福井県の水月湖から採取された年縞が、7万年もの長きにわたる気候変動の証跡を含んでいるという件です。年縞に途切れがないため、炭素14を用いた放射性炭素年代測定のグローバルなものさしとして採用されている、といいます。是非一度現地を訪れて年縞博物館を見学してみたいものだ、と思いました。
投稿元:
レビューを見る
何千年、何十万年という過去の気候変動についてどのような研究で理解が進んできたのか、そこに日本が重要な役割を果たしてきたことなど、エピソードを交えて丁寧に書かれてる。たいへん興味深く面白く読んだ。将来的な気候変動を冷静に論じるためにも理解しておきたい。
投稿元:
レビューを見る
なかなか1000年前という過去ですら実感を持った想像が難しい人類からみて、万年、億年、という単位の地球の歴史は、なかなか自分ごととして想像できない。
そんなスケールの話を、「1度の気温があがっても大したことがないように感じる。けれど、平均1度あがるということはすごい。例えば1週間のうち6日平年並の気温なら、7日目は7度あがること」など、なるほど、それはすごい、といちいち実感させてくれる例をあげて語るので、「お勉強」ではなく、趣味の読書として楽しく読めた。
過去の寒冷期と生態系の多様性。狩猟生活と農耕生活。何万年という単位の変遷を地質で見るということは、どこでも見れるものではない、ということ。
最初から最後まですべて興味深く、わかりやすく読める本。
投稿元:
レビューを見る
2021年のノーベル物理学賞を真鍋氏が受賞したことで、二酸化炭素の温室効果による地球温高にあらためて注目が集まっています。
ですが、地球の気候変動を考えると、現在の「地球温暖化」問題が実は産業革命のはるか前、8000年前から起こっていたとも言え、さらにはその「人類による地球気候の影響(温暖化)」によって、本来であれば到来するはずであった氷期(人類文明の危機)を回避しすることができたとも言えるのです。
さらに、この後の世界で「地球温暖化」が進むのか、あるいは「氷期」が再来するのか、その分析を過去の地球の天候の歴史を紐解くことで分析しよう、というのが本書の内容です。
未来を予測することは難しく、想定することも対策を考えることも困難を極めますが、それでも私たちは生きてゆかねばなりません。
結論としてはいささか物足りないところもありますが、個人レベル・社会レベルでどのような姿勢でこれからの気候変動を考え、臨むべきなのかを考えるきっかけになりました。
投稿元:
レビューを見る
数万年という過去を探りだすという気が遠くなる作業。エジプトやシリアなどに砂漠があるのも、ヨーロッパが平野になったのも森林を焼き尽くしたからだし、この100程度のエネルギー革命が気候の変動も起こしている。
しかし地球の歴史からいえばほんの刹那。
日々の営みを見返すことから始めよう。