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いろんな切り口で<分離>をしている社会。連結している車両の荷に問題をみつけては、切り離して置き去りに。そんな無責任な貨物列車みたいな光景が、実際に起きている。
筆者の冷静な目と筆は、感動で得るような瞬間的なのとは違うもので、対岸の火事と思っていた私の意識すらも変化させる。
居住地の分離、教育の分離、ミドル層や移民の意識のうえでの分離。
分離に拍車をかけているのが、政治、社会保障制度。
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端々で共感できる本だった。子どもの境遇とか,どんな気持ちでいるんやろとか,考えると端々で泣けた。この人の各ものは本当に好きだなと思う。
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Broken Britain という言葉は、イギリスの中の最下層。この本で描かれているのは、イギリス人の最下層と、経済的に恵まれないけど上昇志向の高いニューカマーである移民との対立構造。
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怪物みたいな暴力的幼児たちの肖像がずらりと描かれ、それがイギリスの貧困層の光景をくっきりと浮かび上がらせる。私はアリスが忘れられない。「プリティ?」きっと大きくなったらその特異な容姿でモデルにでも...そうはいかないのかもしれないが。三原順や中村明日美子あたりの絵柄で漫画化してほしいような、どこか寓話的雰囲気漂うルポタージュ。おすすめ。託児所が消えて食料配布所に変わる流れ、生殖の保証から個の生命維持へ、でじりじり余裕がなくなっていく様子があるね。これから世の中、どうなってしまうんだろうね。
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託児所や学校は社会の縮図である。日本でイジメが問題になっているのは、自分とは違う立場、容姿、弱い生命力(障害など)などを持った他人を思いやることができないからだと思うが、その原因を作っているのは明らかに大人たちである。社会の排他主義的な思想はそのまま子どもたちに受け継がれてしまう。著者はインクルージョン教育について述べているが、著者の勤務していた「底辺」託児所には、様々な人種、障害のもった子供などがたくさんいて、よいインクルージョン教育の場になっているようだ。ただ、親たちの思想まで変えられているわけではないので、卒業後はどうなるのかと危惧する。
この本では、託児所内の人間模様が非常に面白く描かれていて飽きずに読み終えられたが、その大きな理由が、著者の深い洞察力と卓越した文章力だと感じる。以下の文章は特にそれを実感する。
「決断力。クリエイティヴィティ。ディベートする力。私が日本にいた20年前から現在まで日本人に欠けていると一般に言われている事柄はちっとも変わっていないように思えるのだが、こうした能力が欠如していることが本当に民族的特徴になっているとすれば、それは人間の脳が最も成長する年齢における環境や他者とのコミュニケーションのあり方に端を発していないだろうか。少なくとも英国の幼児教育システムは、言われたことを上手にやる天使の大量製造を目的にはしていない。」
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著者はあとがきで書いていたようにリアリストだと思うのだけど、アンダークラスの人々に対して向ける視線は割とリリカルというか感傷的なところがある。感傷だけでは物事は変わらないので何かできる行動をしなければいけないというところがリアリストということだろう。リアリストとニヒリストは同義ではない。
ただの貧困レポートに終わらず、「読ませる」ものになっているのが、さすがだなと思った。
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イギリスの底辺保育園で働く保育士の著者が、地べたから見たイギリスを書く。跡取りが出来て安泰の王室の話とか、某大物司会者の息子さんがヘラヘラ電車で旅する綺麗な風景とか。そんなイギリスばかりがメディアで見て来たので、この本の地獄のような底辺の暮らしに驚いた。しかし、数年後の日本の姿でもある。
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読了。
問題提起が山積。
アンリアルなリアル、ばかり。
日本は漠然とタイキジドウだけのんきに考えているけど、
きっと日本にもある。潜在する問題。
知らなくては。
この本が、子どもを持つすべての人、子どもと関わるすべての人の手に届きますように。
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様々なマイノリティに対する差別意識には敏感なつもりだったけれど、私はアンダークラスな人に対する差別意識はあるんやと気付かされた。イングランドにおける、チャブといわれる人達、日本でいうところのDQNな人達、に対する偏見や嫌悪感をなくすチャンスは、今後訪れるだろうか。
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国が変われば教育も何もかも違うって、わかっていても知らない事だらけ。え?未就学児がこんな差別用語連発するの?ひぇぇー。
兎に角、驚き。日本でもあるのかな実際。言葉遣いとかって親が言ってると真似しますしね。
いやはや、日本国内のことも詳しくないけれど、イギリスも日本と変わらないじゃない。格差問題は、むしろイギリスの方が酷いか?どちらも言えるのは、金や食べ物だけ与えて生かされても人間って真の意味では生きていけないのだなと思った
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感想を書いていなかったとは…。
読んだ時、非常に衝撃を受けた本だった。
ミステリー小説でもないのに、ページをめくる手が止まらない、それまでのロイヤルなイギリスのイメージを一変させる内容だった。
ブレイディさんが働いていた低所得者のための底辺託児所(もちろん正式名称ではない)は、今はフードバンクの倉庫になっているそうだ。
それだけ、福祉の為の財源はカットされ格差が広がっているということだ。ミドルクラスの移民とプアホワイト、そんな現状がEU離脱にも拍車を掛けたのだろう。
この後に出版された「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」は本屋大賞ノンフィクション部門を受賞したけれど、こちらもおススメである。
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東京新聞2017521掲載 評者: 栗原裕一郎(評論家)
産経新聞201764掲載
朝日新聞2017611掲載 評者: 齋藤純一(早稲田大学教授・政治学)
posse201791掲載 POSSE(ポッセ) 36
毎日新聞20171210掲載 評者: 伊東光晴(京都大学名誉教授・経済学)
日経新聞2021814掲載 評者: 山内マリコ(作家)
読売新聞2022717掲載
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「底辺社会」の保育士という立ち位置から、人間と社会のあり方を描いてみせる。その手際は見事。実体験に即したリアルな認識と詩的な描写力を併せ持ち、どのエッセイも切ないような優しいような読後感に満たされる。西原理恵子をより知的に洗練させた感じだ。
以下、印象に残ったフレーズ。
「力のある人を世の中は放っておかない。というのは、わたしの元上司の口癖だったが、ここではものすごい能力のある人々が埃にまみれて世間の片隅で忘れ去られている。とはいえ、「力」というものの中には、きっと実際の作業をする能力というのはあまり含まれておらず、自己プロモやネットワーキングを行う手腕といった「作業換金力」が80パーセントから90パーセントなのだろう。だとすれば、前述のおばはんたちにはまったく「力」はない。ただ異様なほど「作業を行う能力」に恵まれているというだけで。」
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底辺からポリティクスを眺めるという筆者の視線は、本人が自虐的に言う以上に愛に満ち、そして疑問に満ちている。日本もいつかブライトン&ホーヴ市のようになる日がくるかもしれないが、その日が来ても私は私の立場で、彼女のように愛と手を子ども達に捧げていきたいと思った。
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「階級闘争」なぞ日本とは縁がない…とは言えない状況にもなってきたかも。アニー(・レノックス似の託児所責任者)がその後どうされたかも気になった。