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チェック項目3箇所。エルサレムは聖地としてこれほどまでに重要視されるのか。ユダヤ教は、聖書にある唯一絶対の神に従い戒律を実践する宗教だ。ユダヤ人とは誰か? イスラエルは、母親がユダヤ人で、他宗教に改宗していない人、およびユダヤ教に改宗した人をユダヤ人と定義、帰還法で移住を認める。「神を信じる」のみならず、「神が命じた掟を守り、実践する」ことがユダヤ教では一貫して意識されているのだ。なぜユダヤ人は差別されてきたのか、なぜナチスはユダヤ人を絶滅させようと決めたのか、これらの根源的な問いに、博物館は答えてはくれない、恐るべき殺戮の証拠、そのおびただしい数の資料を、ただただ並べることで、訪れる人々を圧倒する。
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イスラムの本のつもりで開いたらユダヤの本だったため、自分はイスラムもユダヤも、あまりにも理解できていないのだと実感し、愕然としました。
ユダヤ教にしろ、ユダヤ人にしろ、日本にいる限りではあまり身近なものではありません。
ユダヤのルーツを引く人は欧米中におり、かなり大勢の有名人がユダヤ系だとは知っていますが、なんとなく遠い存在です。
キリスト教徒とユダヤ教徒ではどれだけの差があるものなのか。
ユダヤ人はどのような文化風土を持っているのか。
penシリーズでは、美しい写真とともに紹介してくれます。
まず、シナゴーグという言葉が出てきました。
言葉としては知っていても、それが何を意味するものか説明できません。
ユダヤの集会所、礼拝所だそうです。
ただそこは、教会ではないのだとのこと。
シナゴーグで人々を導く役目のラビは、聖職者ではなく、法学者なのだそうです。
この段階で、宗教の繊細な違いに若干挫けそうになります。
ユダヤ人の迫害というと、ナチスドイツがまず連想されますが、それよりも以前からずっとユダヤ人は迫害されてきました。
その理由は、彼らが救世主イエスを認めないからだそうです。
キリスト教徒から見ると、ユダヤ教徒は救われず、永遠にさまよえる者になるのだとか。
さらにユダヤ人は、かつてキリスト処刑に関わったため、埋められぬ溝があるのだそうです。
ユダヤ教徒は旧約聖書、キリスト教徒は新約聖書と、かなり近いものがあると思うのですが、細かく見ると相当違う教義だとわかりました。
たとえば、モーゼの十戒が有名ですが、ユダヤ教には613戒があるのだとか。
ユダヤ教は、その戒律を守らねばなりませんが、キリスト教では守る義務はないとのこと。
そういった違いが逆に対立を生むのかもしれません。
また、ユダヤ人は金勘定がうまいというイメージがあります。
シェイクスピアの『ヴェニスの商人』に登場する悪徳高利貸しのシャイロックがその例です。
もともと中世ヨーロッパでは、ユダヤ人はギルドへの加入などあらゆる職業が禁じられたため、キリスト教徒が忌避していた金銭賃貸業につかざるを得ず、金融業を発展させて金持ちになっていったとのこと。
個人的には、ユダヤ人にノーベル賞受賞者が多いことが印象的ですが、古代より教育を徹底重視する宗教生活で、ユダヤ人の識字率の高さは際立っていたのだそうです。
ユダヤ教について、あまり雑誌などで目にすることはありませんが、それは一般に伝道をしない宗教だから。
それで、他宗教の人には理解されにくいのでしょう。
なんとなく抵抗を感じる、「選民思想」は、ユダヤ民族中心主義というものではなく、ユダヤ人自らが進んで世界中の民族の光として慈愛を行う務めに参加するという思想なのだと解説されていました。
だとしたら、かなりバイアスをかけてとらえていたことになります。
知性の塊のような人物だと思っていたモーセですが、彼がシナイ山にいる間に民が十戒を破って偶像を崇拝したため、彼���激怒して首謀者たちを剣で殺害したことを知りました。
血生臭さにビックリ。
また、ソロモンは外国出身の異教徒の女性を700人も娶ったそうです。
古代にしてインターナショナルですね。
ピアニストのウラジーミル・アシュケナージがユダヤ系だというのは知っていましたが、アシュケナジとはヘブライ語でドイツの意味だそうです。
アシュケナジ姓の人は、はっきりとユダヤ系なのだとわかります。
人間の長い歴史において、かなり迫害を受けてきたユダヤ人。
その記憶を継承させるための世界各地のユダヤ系の施設が巻末紹介されていました。
いろいろとありますが、私が訪れたことがあるのは、オランダのアンネ・フランクの家だけ。
2013末にオープンたばかりのポーランドのユダヤ人歴史博物館が気になります。
日本には、関西ユダヤ教団が一番大きな団体になるそうです。
1868年、明治維新と開国でユダヤ人貿易商が長崎や神戸にコミュニティを形成したのがはじまりだとか。
日本でもきちんと活動が行われているということですし、「遠いからわからない」「知らない」で済ませていいことではないと、この本を読んで感じました。
これまでは、独特の民族として歴史的な位置から捉えていたユダヤ人ですが、もっと現代の位置から知っていかないと、妙な誤解と苦手意識を抱えたままになりそう。
このような、初心者にも入っていきやすいイントロ的な本があるのは、ありがたいことです。
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ユダヤとは、ユダヤ教とはどういうものか、歴史的地理的に、また現代の具体的な例を交えて説明してくれます。ユダヤ人がディアスポラとなった理由、ヨーロッパやアメリカでの捉えられ方、日本で暮らしていると意識することのない感覚です。一度は勉強してみると、教養として折々に役立ってくるでしょう。
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メモ↓
食べてよいもの→牛、羊、山羊、鹿などの蹄(ひづめ)があって反芻するもの、鳥などの翼のあるもの、魚などの鱗や鰭(ひれ)のあるもの
食べていけないもの→反芻しないから豚NG、イカやタコも。肉類と乳製品を一緒にしたのもダメ。昆虫などの地を這うものもダメ。
ヘブライ語は1900年離散の地でも聖書の言葉や祈祷の言葉としては生き続けていたが、話し言葉としては廃れていた。→19c後半シオニズムを受けてエリエゼル・ベン・イェフダがアラム語、アラビア語を含む多言語からの借用も含め現代生活に対応できる言語としてヘブライ語を復活させた。
イベリア半島に居住した者→スファラディ系
ドイツ→アシュケナジ系
それ以外のアジア、北アフリカ→ミズラヒ系
アシュケナジ系ユダヤ人は、14世紀の黒死病流行のユダヤ人大虐殺を機にポーランドなどの東欧やウクライナなどへ移住して繁栄したが17世紀半ばのカザークの反乱などで迫害された。
ユダヤ人独自の言語はヘブライ語だけでなく、イディッシュ語やラディノ語などもある。
聖地を守る騎士団→アクサー・モスクを拠点とするテンプル騎士団
イエスが十字架を背負わされゴルゴダほ丘まで歩く時の道行を「ヴィア・ドロローサ」という。
ロシュ・ハシャナー
→新年祭
西暦の9月初旬から10月初旬のうち2日間
ヨム・キプール
→贖罪の日
9月半ばから10月半ば
1973年贖罪の日で静まり返るイスラエルにエジプトが奇襲攻撃を仕掛けた第四次中東戦争は、ヘブライ語ではヨム・キプール戦争と呼ばれている。
スコート
→仮庵祭かりいお
9月から10月
出エジプト後荒野で仮庵をたてて40年暮らしたことにちなみ、家の外に質素な庵を建て、七日間そこで過ごす。
ペサハ
→過越祭すぎこし
3~4月の8日間
民がエジプトを出る時に急いでいて酵母でパンが膨らむまで待てなかったことから、期間中は家から酵母の入った食品を除き酵母を入れないパンを食べる。出エジプトを思いおこして祝う。
シャブオート
→七週祭
5月から6月の約2日間
モーセの出エジプトから50日目、つまり七週間を経過した翌日にシナイ山で律法が授けられたことを記念する祭り。
バル・ミツヴァー
→成人式
男子の13歳を成人とみなす
シナゴーグでトーラーを読む
女子の成人12歳バト・ミツヴァーを祝う儀式をする人もいる。
ユダヤ教徒にとって帽子は神への経緯を示すためのもの。
女性は結婚すると女性的要素を捨てるために毛髪を剃る場合が多い。
ホロコーストは近年ヘブライ語で「破壊」を意味するショアーという呼称も使われることが多い。
1868年明治維新とともにユダヤ人貿易商が長崎神戸にコミュニティを形成
日露戦争の頃はロシア、中東、ドイツからさらに来日。神戸のコミュニティは約3万人にもなり、ユダヤ人学校や三つのシナゴーグを持つまでの規模となった。
神戸市中央区に関西ユダヤ教団がある。
テル���ビブの誕生→1909年
19世紀が終わりを告げる頃、パレスチナへの移民が来る。当時パレスチナの地中海沿岸は世界で最も古い都市のひとつと言われるヤッフォが中心。アラブ人が多く住んでいたヤッフォの北側に広がる砂丘を埋め立てて、ユダヤ人達がテルアビブをつくった。
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Pen BOOKSは、CCCメディアハウスが発行する男性向けライフスタイル誌「Pen」の中で、好評を博した特集を書籍化したもので、数々の面白いテーマを取り上げている。本書は2012年12月の発刊。
私は本書を、最近、行きつけの書店のPen BOOKS特設コーナーで目にし、即座に購入した。というのは、私は本年1月にエルサレムとパレスチナ(ベツレヘム、マサダなど)を一週間ほど一人で旅してきたばかりで、本書を手に取って開いた瞬間、私が見、聞き、感じ、考えたこと、及びもっと知りたいと思っていたことが、多数の鮮やかな写真とともに目に飛び込んできたからだ。
旅に際しては、『地球の歩き方』のほか、エルサレムの歴史、パレスチナ問題、現代イスラエルなどに関する複数の書籍を参考にしたので、本書に記載されている情報の多くは既に有していたが、本書の「ユダヤ教徒の日常生活」などの部分は、非常に興味深く感じられた。なぜなら、私は滞在中に、本書に取り上げられている、超正統派ユダヤ人のみが住むメア・シェアリームの街も訪れたし、そこで暮らすユダヤ人がどのような人生観を持ち、どのような日常生活を送っているのか、現地の人に聞く機会はあったのだが、それらがとても詳しく、リアルに示されているのだ。
その他の部分を含めて、ユダヤ人、ユダヤ教、聖地エルサレムという視点からは(パレスチナ問題については触れられていない)、概ね必要十分な情報がカバーされているし、何より鮮明な写真が多数掲載されており、それらのテーマの入門書としては良書と言えるだろう。
(2017年5月了)
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本屋で「ユダヤ人の起源」を手に取った時、PEN BOOKSの棚にあったので、一緒に購入。
「ユダヤ人の起源」「聖書考古学」を読んだ後としては、四千年の歴史は、壮大な嘘と云わざるを得ない。
でも、たとえ二千年の嘘であっても、信じ込んでいるユダヤの人々を否定はできない。
しかし、追放と放浪の神話が、武力によるパレスチナの占領、迫害、人権無視を正統化するのは、無茶だと思う。
そういうイスラエルとユダヤ人への疑問が一つもないのはどうなんだろう。
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【要約】
・
【ノート】
・イスラエルは、母親がユダヤ人で、他宗教に改宗していない人、およびユダヤ教に改宗した人をユダヤ人と定義、帰還法で移住を認める。ユダヤ人とは宗教、かつ生まれでも定義される。一方、北米ユダヤ・データバンクの統計は、自らをユダヤ人と認める人か、家族にユダヤ人と認められ、他の一神教ではない人を「コア」のユダヤ人とする。2010年の世界のコア・ユダヤ人は約1342万人だ。(P8)
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ユダヤとは何か。
仕事柄、マンハッタンにはユダヤ教の人が多い。Juishホリデーもしっかり休むし、一定の距離感以上になると非常に近寄りがたい雰囲気を醸し出す。根本的なところで言うと、ユダヤ教の特徴は、神を信じると言うことのみならず、神が命じた掟を守り、実践することに重きを置いている点であろう。トーラー(LAW)の学習に励み、その伝承や理念を現代にしっかり伝え、神の意志を具現化することが全てと言っても良い。安息日が絶対であり、613戒の中でも重要な制度の一つ。金曜日の日没前から土曜の日没後までを仕事を制し、自らの生き方を反省する人する。
天地創造から、楽園を追放されるユダとエヴァ、ここで初めて神に背く行為に手を染めたと言うことになる。そこから、イサクの犠牲と言われる神の試練を超えて認められたことによって、イスラエルができた。かつての神殿の象徴として嘆きの壁で祈るのがユダヤ教にとって最も神聖な行為でもある。一方で、イスラム教の岩のドームもここイスラエル。複雑な歴史がある。
ユダヤ教の1日。シナゴークは、キリスト教でいう教会にあたる。
なぜユダヤは迫害され続けるのか、ドイツのナチスに600万人が殺されなくてはならなかったのか。ホロコースト(人間が人間を大量殺戮すること)はなぜ止められなかったのか。
もう一つの発見は、アートの世界でマルクシャガールがユダヤ教だったことだ。彼が描く聖書のシーンは、ユダヤの精神が生きているはず。
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大好きなpen booksの宗教シリーズ、イスラムに続き2冊目として「ユダヤとは何か」。
重厚な内容でした。歴史・聖書の解説とそこにまつわるユダヤ人の苦難を詳細に書いているため、現代ユダヤの価値観・生活習慣がよく理解できます。