投稿元:
レビューを見る
狂気の列車ブレインとの闘いを終えた旅の仲間たちは、〈中間世界〉から離れたアメリカはカンザス(ただしローランド以外の仲間が知るそれとは別次元世界!?)に辿り着きます。
そこに広がる〈希薄〉からの連想により、ローランドは自身のガスリンガーとしての初の任務とその際の自身の初恋(同時に彼の生涯唯一の恋愛)を思い起こし、〈希薄〉の中で過ごす夜に彼の〈カ・テット〉にその物語を語るのです。
時にローランドが14歳。
ガンスリンガーになるための試練に勝った直後、偉大なガンスリンガーである父の命により、不穏な空気が漂うギリアドの宮殿から逃れるように、二人の友と共に〈男爵領内世界〉の外にあるメジスを訪れ、彼は運命の恋の相手である16歳の美少女スーザンと出会います。彼女はとある事情からローランドが恋してはならぬ相手でしたが…
友情、嫉妬、恋愛、セックスといった要素が絡みあう少年ローランドの青春小説、恋愛小説であると同時に、若き〈カ・テット〉たちが大人たちの手を頼れない中で、力を合わせて大きな陰謀に立ち向かう冒険小説でもあります。
男性読者はローランドに、女性読者はおそらくスーザンに感情移入して胸を焦がす苦しさや喜びを彼らと共有できると思います。
まあ、僕自身は14歳の時にこんな生涯一度とも思えるような恋も性も経験はしてませんが(笑)
一見のどかに見える辺境の町の裏で暗躍する敵との戦いも、我慢比べのような様子の探り合いを経て、一気に表面化し、その目まぐるしく戦況が入れ替わる様には、文字どおり息詰まり手に汗握りました(カバーしてなかったら表紙がふやけそうです)。
そしてクライマックスでのスーザンの言葉には、誰もが涙を流さずにはおれないでしょう。
アメリカ本国では〈ダークタワー〉サイクルの中で、最も人気のあるエピソードというのも頷けます。僕自身、新潮文庫版に続く再読でありながら、先に述べたようなすばらしい読書体験ができました。
このエピソードを読むためだけに、「Ⅰ ガンスリンガー」から読むのもありですよ(^-^)