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おそらく、筆者は、新興宗教組織の内実というより、悪そのものを描きたかったのだろう。この毀誉褒貶の激しい小説は、悪とは何かを追及できたかどうかで評価が決まるような気がする。
物語のナビゲーターである楢原は失踪した恋人を追って思索家松尾の存在を知り、その先にカルトの教祖沢渡を知る。そして過去の暗い体験から深いダークネスを培った高原は、沢渡の教団でナンバー2に登りつめている。「四人の男女」というより、この三人を使って悪を解き明かそうとするところに筆者の主眼があるのでないか。高原の恋人であるリナも不倫相手で想像妊娠する峰野も、高原の暗い部分を語るための触媒に過ぎない。
松尾の思索世界を語るのに原始仏教や素粒子論に踏み込む必要があるのかはわからない。悪を客観視するための小道具のようなものかもしれないのだが、筆者の筆は止まらず、ストーリーの一部になっている。長い語りの末に、カルトの信者もテロ行為も結局のところ素粒子の集まりに過ぎないし、人間の思念に主体がないとすれば悪を相対化することも可能、と悪を語る道具建てが準備される。
やがて彼らの姿が過去も含めて見えてきたところで、本当の悪は・・・という話に展開していく。カルトの教祖は素粒子の塊に過ぎないが、国家の悪はより本源的で、断罪可能と言えるのか。筆者の筆は北朝鮮情勢や自衛隊にも波及するが、ここに至り論の進め方が雑になる。平和主義やリベラルシンパシーは一つの論陣であり、国家の絶対悪を証明する論拠にはならない、と読者が感じてしまえば、ここまで積み上げてきたものが無駄になる危険を孕む。この本の毀誉褒貶が分かれるポイントの一つでもある。
ともあれ、荒削りは多々あれど、読み応えのある長編であることは間違いない。今回も英訳されて世界で読まれることを期待したい。
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教祖の奇妙な話(ラスト)には感じ入るものがあった。大きなものに取り込まれる気持ち良さ、それに抗うこと。暴力によらない平和 を希求するのはとても強い意志が必要だということか。読んだことないけれど、遠藤周作の沈黙をふと思い出した…どれだけ虐げられても神に祈り続けるっていうのと、すこし結びつく気がする。
気になるところは、立花さんと峰野さんはどうしてそんなに高原に執着したのか。かつて恋人同士だったとしても、どうしてそこまで執着するのか…もうすこし深く掘り下げてほしかったなぁ。楢崎も、どうして危険を顧みずに立花さんを探したのか。見落としなのかな?なんかその辺の描写があまりなくて、うーんと思った。
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この作者の本は読んだことがなかったのだが、ただ文庫版の発売日に地下鉄のなかに張られた広告を見て、その足で本屋に行ったのだ。それでもまだ読むかどうか迷っていたのだが、ペラペラとめくってベンジャミン・リベットの実験への言及があったのを見て決断した。
いや、そもそも単行本が出た時点で気にはなっていたのだ。小説のタイトルに「教団」とあったら、いい教団のわけがない。悪い教団の話に違いない。しかも教団X、怪しいったらない。
でも又吉直樹がこの小説をテレビ番組で絶賛し、それを見た人が読んで失望してamazonのサイトに酷評をたくさん書いているなんてことは知らなかった。そんな難解な純文学なのか? 否!
楢崎は恋人ともまだいえないような関係の立花涼子の行方を追って、2つの新興宗教団体に遭遇する。最初のは実は新興宗教ともいえないし、団体ともいえないようなもの。松尾という自称アマチュア思想家の変な老人が妻と暮らす家にすぎないのだが、彼の講話を聞きに自然発生的に生じたサークルだ。
他方、名前のない教団、仮に教団Xと呼ばれる教団はしっかりした組織を持つセックス教団だ。そしてその教祖・沢渡は松尾と因縁があるらしい。
楢崎が主人公なのではない。群像劇、といっていいだろう。高原は以前、松尾のもとにいたが、実は教団Xのナンバー2である。しかし教祖を裏切りつつ、大それたテロを計画しているらしい。松尾の下にいながら高原を愛する峰野。立花も高原と強いつながりがある。他の登場人物もそれぞれに苦い人生がある。いずれも人生から、世間から「弾かれた」人たちといえようか。
松尾は第二次世界大戦で肉体的にも精神的にもひどく傷ついたのだが、今は宇宙論的・原子論的・機械論的運命論を基底にした人生肯定主義を説いている。沢渡がどのような人物かは終盤まで明かされない。帯に「絶対的な悪」とあり、それが沢渡のことだと思うが、誤読だろう。沢渡が執着するのは善と悪との絶対的なコントラストなのではないか。そしてそれがカリスマ性の源泉なのだ。また帯には「圧倒的な光」とあるが、それが松尾のことかといえば、まったくそんなことはない。「光」があるとすれば、それはわれわれひとりひとりの中に宿った圧倒的に小さな光のことである。松尾の人望はそうした小さな光を見出す能力か。
松尾が病に倒れ、教祖に感づかれたかも知れない高原のテロ計画が見切り発進し、話は後半大きく動いていく。
そしてこの小説は現政権、あるいは右傾化する社会情勢への批判ともなっている。「特攻隊の人たちの手記は涙なしにはとても読めない。だが彼らの魂の純粋さを、あの戦争が正しかったような印象操作に利用するのは死者に対して失礼だろ? あの魂をそのように利用しかつ金儲けの手段にしてる奴までいる始末だ」って誰のことだろうねえ。
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まさに中村文則、という暗い魅力に溢れた100点満点の序章から一転、いったい何なんだこの小説は。
多くのエントリー読者を振るい落としたに違いない京極夏彦的蘊蓄の羅列に始まり、1Q84/愛と幻想のファシズム/半島を出よ/ジェノサイド、行き過ぎない誉田哲也とかジメジメの少ないクローネンバーグとか、とにかく「中村文則じゃない人」が頭をよぎる中村文則作品。最高傑作ではなくて最大の問題作、と呼べばここまで毀誉褒貶はなかったのでは。
とにかく不思議だ。とてもクローズドな世界と、それを取り巻く謎の論理(読者には提示されないがとにかくそれが存在することはわかる)、のバランス具合が満足度の決め手だった作家なのに、この作品に限ってはめっちゃオープン。これはインディバンドの姑息なセルアウトという類のものではなく、何かすこんと抜けて作風どころかジャンルを変えました、に近い印象を受けた。ただし、盛り上がってまいりましたよ!ってところで「面倒になっちゃった」的に読み手の梯子を外してただのエンターテイメント超大作で終わらせないあたり、完全に吹っ切れたわけでもなさそうなのが興味深い。
なお、電車で読むのはまったく薦めません。突如ただのエロ小説になるし、妙なタイミングでえらく盛り上がったりするので。おうちで時間に余裕をもって読みましょう。
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本屋さんで「話題の本」とあったので読んでみたのですが、、
ダメですね。
私は仕事関係で気功の話や怪しげな宗教の話などの内容には、かなり免疫があるのですが、ただそういった本から抜粋しただけなような教祖の言葉とか、長ったらしい独り言などが多すぎて、読み飛ばすべき箇所が多すぎです。
話の流れとしても小説としても評価できる点はないと思います。
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宗教観、性、テロリズム、量子学。
色々詰まっていて、深い内容とは思いましたが、前評判が高かっただけに・・・。
読み応えはありました。
次は同じく前評判高く、本屋大賞を取った「鹿の王」
超大作との事で期待一杯です。
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長過ぎて読み終わるまでにかなりの時間を費やしてしまいました。
基本は宗教的な事が母体となって話が進んで行くので、宗教物に拒絶感がある自分にはどうしても物語に入り込む事ができなかったのも原因の1つかと思われますが、じゃあなんで読んだんだよ?
って事になりますが、それは単純に話題になってたのが文庫化されたから…
その中で、唯一、心に残った一説がありますので、以下に記します。
読んでない人は飛ばして下さいね。
国民などどうにでもできる。
右傾化させようと思えば、あっさり右傾化できる。
この国の連中の一部はありがたい事に、保守の政府の下にいる事を欲している。
我々が何をしても中国、韓国という敵さえ与えておけば我々を擁護してくれる。
彼らは強い権力の側に身を置き、何かの思想の中に入って他を攻撃することが好きなのだ。
自分達が優れているという快感を得る事が出来るからだ。
一度信じたら何を聞いても何を読んでも絶対に否定はしない。
何故なら我々を否定する事は自分の否定につながるから。
一度信じたものから距離を置き、これまでの自分を疑い新しく生まれ変わる勇気を持つ事ができる人間など多くない。
それは大変な苦痛だから。
これ、現実の日本かも‼️
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なんとも不思議な小説でした。理解するにはわたしにはまだ力不足。決して悪い小説ではないのだと思う。
長々と心や脳のことが語られたり、アフリカのテロ組織や戦争のことが生々しく語られたと思うと、突然エロ小説になったり(笑)状況がコロコロと変わるので、頭がついて行かず、途中は流し読みしてしまう部分も。唯一、松尾さんやよっちゃんさんの言葉だけは理解しやすかったけれど。
途中、篠原がテレビ中継を使ってテロを行なっている場面の言葉は、今の日本社会や政治をそことなく批判しているのかなーと感じたりもした。
暗くて不思議で、だけど結末は割と受け入れやすいものになっていて少し安心。
中村文則さんも、最後に、この小説から少しでも何かを感じ取ってくれればそれで良い、と書いていたし、いろんな感じ方があって◎なんだろうなぁ。
多様性を認めることだったり、よっちゃんさんの共に生きましょう!という言葉が全てなのかも。
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エンターテイメント性もあり、かつ思想の問題も描かれている。命や意識とは何か?という科学的疑問から、善と悪に関する哲学的な問題まで、様々な内容が詰め込まれている。
多様性、というのが一つのキーワードのように感じられる。
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性の描写がやたら多い。こんなに多いんだから結末にものすごい意味を伴ってくるのかと思いきや、そうでもない。読むのにやたら時間がかかってしまい、「時間を返せ」と思った作品は久しぶり。そういう意味では記憶に残りそう。
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教祖、高原以外の登場人物の個性が弱い為、名前が覚えられず何度も前に戻って確認。宗教の信者だから仕方ない?性格が形成された生い立ちもありふれた物語でドラマチック過ぎて興ざめ。
松尾の話しは面白い。
それ以外は官能小説?
小林は続編で活躍するのかな?
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ずーっと気になっていた中村文則さん。
そして各メディアで「この本はすごい!」と取り上げられていた「教団X」。
社会人になってからビジネス本ばかり読んでいて、
10年ぶりに「読んでみよう!」と思って手に取り、
おもしろくてとまらなくて1週間の通勤電車の中で読みきって、
学生以来の小説熱再来!
宗教、性、戦争と貧困、政治、テロ、全部入り!601ページ!
これだけ重々しいテーマがうまくからみあって、
ストーリーが成立しているので圧巻。
そりゃあそのはず、参考文献の多さにびっくり、
「書くのに2年半かかった」と仰っていたのを思い出して、
小説家とはなんとストイックな職業…と思いました。
同じ師の下で思想を学んだ、頭のキレる、でもタイプの全く違う2人が、それぞれ、
性の解放を掲げるカルト宗教(オウム真理教ぽい)、
宗教っぽいけど宗教じゃない人を惹きつける不思議な団体の代表を務めている。
その2つの宗教と、それに関わる人物の視点から、
上にあげたような様々なテーマを描いていく。
「人間の欲」について考えさせられるシーンが多かった気がします。
特に強烈なのは、カルト宗教の教祖。
頭のキレる、全てを見通しているようなカリスマ性のある人物ゆえに、
あらゆるものを超えちゃって、
もう世の中に希望を持ってなくて、
最終的に自己顕示欲の塊となって、
人をコマのように動かし、テロを企てるんだけど、
全てをネガティブに諦めてしまった人間の最終形態はこれなのかなと思いました。
それが実際にあった(オウム真理教)わけだから、
恐ろしいな。
ストーリーが重いし、小難しい話もあるし、性描写も多いので、
好き嫌いは分かれるかもしれません。
私は星5つ⭐️⭐️⭐️⭐︎⭐︎!
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良くなかった。
タイトルからして、面白さを重視したライトノベル(グイグイ読めてしまう系)かと思って読み始めたのだが、その類の小説ではなかった。
作者のメッセージをストーリーに込めているようなのだが、ではそこに深みがあるかというとそうでもない。
面白くもなければ深みもない作者の独りよがりの小説だった、というのが感想である。
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2017.07.22読了
政治や歴史を語りたいなら、ジャーナリストとして本でも出せばいいのに。物語に必要とは思えない長々とした演説(著者の考え)がくどい。
ただやはり、精神の沼というか闇の部分を描くのが上手い作家だと思う。教祖がなぜあの様な教祖になり得たのか、最後には納得いくものがあった。
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アメトークの読書芸人かなんかで紹介されていて購入。話としては重厚な感じがしたけれども、ちょっと今の気分とは違うかなぁ、と