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大雪山で幻のオオカミを探す男と山岳写真家との出会いから、この物語が始まる。
彼の父とも交流があった男は、殺人罪の刑を終え刑務所を仮出所したばかり。しかし、彼の容疑には冤罪の疑いがあり、その謎の解明と幻のオオカミ探しが同時に進行する。
山岳小説に、警察小説、それに動物小説が融合した贅沢な作品。
オオカミを探し求めての中盤までは、冗長な部分も無きにしも非ずだが、後半は冤罪を画策した犯人との攻防、雪山での遭難と、一転緊迫感を増して一気に読ませる。
ここでオオカミは、自然破壊を繰り返す罪深き人間と対極をなすものとして描かれる。昔は、オオカミがいて豊かな自然が保たれていたのに、文明に毒された人間はその大事なことを忘れていると。
「オオカミは大自然が人間社会に派遣した親善大使のような存在」と、登場人物に言わせる。
山岳小説の泰斗ともいうべき著者の自然観が、如実に表されている作品でもある。
また、写真家の父親の言葉として「奈落の上の綱渡り」が再三語られる。人生を例え、その綱とは何かを信じること、そして信じて渡るか臆して逃げるか、と。
「信じて渡る」爽やかな男たちの物語である。
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北海道を舞台にオオカミをめぐってお話が進みます。
現代の山岳小説作家としてはぴか一ですね。
ぐいぐい引き込まれていきます。
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内容(「BOOK」データベースより)
急逝した父の遺志を継ぎ、山岳写真家として生きることを誓う風間健介。父の愛した厳冬の大雪山で撮影中、絶滅したはずのオオカミに命を救われたという田沢保と出会う。風間は、田沢が亡き父と交流のあったこと、殺人罪で服役していたことを知るが、極寒の中、田沢と共にオオカミを探すにつれ、彼の人間性に惹かれていく。やがて、二人の真摯な魂が奇跡を呼ぶ―。
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解説と帯にあるように、確かに至福の読書体験だった。最終章で一気にそれを感じ、読後感がとても満足を得られるのだが、やはりそれまでの長い長いプロセスが大事だ。一見相容れない二人の男の情が通いあうまでと、仲上をはじめ周りが田沢を受け入れていく流れが少しずつ丁寧に描かれていて良い。友情を超えた人のつながりだ。分水嶺というタイトルに惹かれ、何が何処が分水嶺なのか?と考えながら読んでいた。
あまりこの手の小説は手に取らないのだが、もう少し挑戦してみようと思う。
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山岳カメラマンが主人公で 北海道を舞台とする物語
私が好きな作家「笹本稜平」の著書です ^_^
この作品を読むだけで 冬山の厳しさと景色の素晴らしさが 目に浮かんでくる
最後には 宮崎駿のアニメ映画を観ているような感覚も覚えた ^_^
悔しい想いもしながらも 面白く読ませてもらえた ^_^
これからも 笹本稜平の山岳小説は たくさん 読みたい ^_^v
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父の遺志を継ぎ山岳写真家となった主人公の風間と、絶滅したとされるオオカミを追う田沢。
亡くなった父も友人のペンション経営者の仲上も、みな漢気溢れる人物で読んでいて気持ちが良い。
久しぶりの山岳小説で、しかもオオカミが登場、中身も大満足の作品でした。
そして自分自身も地球上の自然の中で、原罪ともいえる罪を背負っているように感じる。
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笹本さんの小説は五作目となりますが、間違いなく今までで一番感情移入した作品でした。
もちろんフィクションなのは重々承知の上ですが、あまりに感情移入し過ぎて、最終章では涙をぼろぼろ流しながら読んでました(^^;
自然の素晴らしさに目を向け、その恩恵を頂くことで人間は発展してきたのに、自分達の身勝手によりオオカミの住みかを奪ってしまった。
ドキリとする言葉が節々に出てきます。
『自然や動物は人間がいなくともずっと上手くやってきた。人間がずかずかと入り込んできて自然を壊しておきながら、今度は自然保護だなんだと思い上がる』
私には私の生活があるから自然保護活動などには参加したり出来ませんが、それでも山に登らせて頂く際にはゴミ拾いなど、自分に出来ることをひとつでも多く実行していこうと改めて思いました。
一人でも多くの方に読んで頂きたい名作です
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主人公のお父さんの山へ対する気持ちがとても共感できるものと思った。ただ物語の中で事件性的な話が散りばめられていて、そんなもんはいらん、純粋に山と狼の話しだけで良いのにと勝手ながら思ってしまった。