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苅部直氏(1965年~)は、日本政治思想史を専門とする政治学者。
本書は、2014年に朝日カルチャーセンターで行われた講義「日本思想史への招待」をベースに書籍化されたもの。
本書のアプローチは、著者が「まえがき」で記しているように、多くの思想についてその要点を書き並べた「概観」や「通史」でも、思想史学という学問を身に付けるための「入門」でもなく、日本思想史の上で重要なテーマを時代順に並べ、それぞれに関して複数の読み方を提示して「道案内」をするもので、主に、二十世紀の高名な思想家である和辻哲郎、丸山眞男の二人の解釈を参考としている。
取り上げられたテーマは以下である。
◆日本神話(『古事記』、『日本書紀』)
◆北畠親房『神皇正統記』
◆武士の倫理・・・新渡戸稲造『武士道』、山本常朝『葉隠』
◆戦国時代のキリシタン
◆儒学(朱子学・陽明学)
◆古学・・・伊藤仁斎、荻生徂徠
◆国学思想・・・本居宣長・平田篤胤
◆明治維新と福沢諭吉
ボーダーレス化が進む現在、「日本の思想」を強く意識する機会は少なくなっているとはいえ、我々現代日本人の思考・行動様式の根底(の一部)に「日本の思想」があることは間違いなく、また、現在の日本の在り方に決定的な影響を与えている太平洋戦争に突き進んだ当時の日本社会において、「日本の思想」の解釈が戦争の是非を論じる上で極めて重要であったことも疑いようがないだろう。
予備知識の少ない私にとっては読み進みにくい部分もあったが、通読することによって、過去の日本思想の主なテーマと、近代になってそれらがどのように解釈されてきたのか(そして、それが近現代日本史にどのような影響を与えたのか)のイメージは掴めたように思う。
(2018年5月了)