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そろそろ慣れた。
設定はいいものの、それを活かしきれていないというよくあるタイプの作品。
どの登場人物も掘り下げが浅い。
主人公のアサは父親の死を気にしなさすぎ。
ユーユが忘れさせてくれていたってことなのだと思うが、もう少しその描写があっていいと思う。
シオとウミの抱えている悩みがどちらもスポーツでの挫折なのでエピソードが似すぎ。
それにそもそもの悩みが定番すぎてひねりがない。
そしてこういう問題の解決には、ユーユの人間とは違う視点が役に立ったりするものだが、あまりユーユの存在が必要なさそうな解決を見せる。
その方法もずいぶんあっさりしている。
そしてこの二人のエピソードでは、それぞれの一人称視点も描かれて物語が進むが、一人称視点でこれしかキャラクターの内面を描くことができないのははっきり言って実力不足。
そもそも二人のエピソードは人魚の物語上あまり重要性が高くないので、二人の視点をバッサリ削って、アサの視点から問題の解決を目指せばよかった。
ユーユは人魚としてのアイデンティティがあまり伝わってこなかった。
シオとウミの一人称視点を書くくらいなら、ユーユの一人称視点が読みたかった。
それに「忘れない夏」にするには、お祭りとか夏のイベントがあっさりしすぎ。
それどころか、回想で花火大会とかスイカ割りをしたと書いてあるが、そのエピソードの描写が全くない。
これでは全く感情移入できない。
「楽しかった夏の思い出」の描写をしないのはさすがにセンスがない。
ラストの船のシーンはよかった。
せっかくのファンタジーなのだから、これくらいロマンチックでいい。
ただ、別れシーンに関しては、もっと盛り上げるべきだとも、あっさりしているからいいのだとも思う。
しかし、クラゲの正体を知った瞬間にアサが走り出して台無し。
少しくらい別れの余韻に浸ってほしい。
エピローグもちょっと節操ないというか陳腐。
なんでもハッピーエンドにすればいいってものじゃない。
蛇足。
「人魚に嘘はつけない」のタイトル回収もてっきり泣き所で来ると思っていたのに、使いどころを間違っている。
文章はたまに日本語がおかしい。
誤りではないのだが、わかりづらいというかリズム感が悪いというか。
人魚の髪の描写はよかった。
繰り返しが多く、紙以外の描写は大したことなかったが、「宝石を溶かして塗ったよう」という表現は奇麗だと思った。
登場人物たちの会話は、おそらく「軽快なやり取り」を狙っているのだと思うが、ただの暴言の応酬でちっともおもしろくない。