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子共への虐待の実情とメカニズムと対策に関する本です。第1章は虐待に関する総説で、個人的には目新しい内容はありませんでした。頭の整理にいいと思います。第2章は虐待により脳が変化するという脳画像研究内容を紹介しています。最近の形態画像や機能画像の進歩で今まで変化がないとされた精神疾患において変化が捉えられるようになっており、個人的にはさもありなんと思いますが、多くの人には衝撃的なのではないかと思います。ただこの分野は何とでも解釈できる点があります。脳が小さくなっていても虐待が原因、大きくなっていても虐待が原因、活動が低下していても虐待が原因、亢進していても虐待が原因となって、その中間にある機序が想像になってしまうのが難点のように思います。そのため、画像の知見は3章以降の対策にまだ生かされていません(療法は画像の知見があってもなくても関係ない)。今後さらにメカニズムや対策が進むことを期待したいです。個人的には叱らず、褒めるのは常識となっているように思いますが、子供が間違ったことをした時に、いつも途方に暮れてしまいますので、虐待にならないように叱らずに導く方法も書かれているともっと良かったと思います。
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お盆休暇、2冊目。やっぱり子育てをやり直したくなりました。マルトリートメント(不適切な養育)、私の子育ての中にも何度もあったと思います。自分でもエッというほどきつい言い方をしていたことがあります。特に小学校高学年から中学生の間。勉強を見ている中でです。仕事なら抑えることができますが、我が子となると我慢がきかない。アンガーマネジメントがなってない。自分はそんな風に育てられなかったのに。我慢のできる子になってほしいなんて理由をつけて、泣いているのをかなりの時間放っておいたこともあります。子育てにはふつう以上にかかわったのに、それがかえって良くなかったのか。自己肯定感のかなり低い人間に育ってしまいました。脳のどこかに傷があるやも知れません。いまからでも修復できるのではと、いろいろほめられるところを探すのですが、見つからない。子どもたちももうすぐ成人。いい人間関係を築いていきたいものです。
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明らかな児童虐待や暴力でなくても知らず知らずのうちに子供の脳を傷つける可能性がある。心無い叱責や悪口、子供の前での喧嘩や口論、ちょっとしたネグレクト、そんな些細なきっかけで子供の脳が傷つけ、鬱病や統合失調といった精神疾患、精神障害になることも。子供は思った以上に傷つきやすいことを忘れてはならないですね。
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子どもに対する不適切な関わり方が、子どもの脳そのものを変えてしまうという事実に衝撃を受けた。子どもへの不適切な関わりといえば「虐待」というキーワードがまず浮かぶが、本書では、より広い概念として「マルトリートメント」という言葉が使われている。このマルトリートメントには、言葉による脅し、威嚇、罵倒、あるいは無視する、放っておくなどの行為のほか、子どもの前で繰り広げられる激しい夫婦げんかも含まれている。本書では、それらの行為が行われたときに、子どもの脳にどのような影響があるのかを明らかにするとともに、そういったマルトリートメントを受けた子ども、そして加害者側である大人に対してどのような対処や療法が必要なのかが具体例とともに紹介されている。子どもたちを助けるとともに、親(をはじめとする養育者)を助けることが重要であるという著者の意見に強く賛成したい。
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親からの虐待=マルトリートメントで、子供の脳は萎縮するというのが、衝撃的だった。
虐待と言っても、身体的なものだけでなく、暴言により子供を傷つける心理的なものもあるので、日頃の言動に気をつけなければと思った。
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マルトリートメントという言葉はもっと知られるべきだと思う。虐待は自分に関係ないと思っている親も、日常の言葉遣いや夫婦関係など、暴言や悪行に思い当たることが、きっと隠れている。それらが子供の脳の発達に影響していることを、夫婦で感じ取ってほしい。より多くの人にこの本を通じてマルトリートメントの理解を期待したい。
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読みやすい新書。
「子どもへの虐待」が私たちの目に触れるのは、主に「身体的な虐待」がニュースになったときである。
がしかし、目に触れない、そこらじゅうに吐いて捨てるほど転がっているであろう「言葉による虐待」のほうが、子どもの脳を傷つけるという筆者の科学的根拠に基づく主張は、一読する価値がある。
筆者自身も子育て経験があり、時に自分の体験(マイナスなものも含め)を引き合いに出すため、大上段から語られている感じがないのがよいと思う。
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著者は、福井大学子どものこころの発達研究センター教授をされており、現在日米科学技術協力事業「脳研究」分野グループの共同研究日本側代表を務めておられるとのこと。
脳と心の関係性について、研究からわかってきた最新の情報を、心の問題で悩む人々のために書き下ろされたものだ。
本書のキーワードである「マルトリートメント」という言葉は、本書を読んで初めて知った。この言葉自体は初めて聞いたが、その意味するところは、よーく理解できた。つまりは、自分自身を振り返った時に、すでに体験済であると感じたからだ。
そもそも「子どもの脳を傷つける親たち」というタイトルに惹かれて、この本を手に取ったこと自体、自分自身の身に覚えがあるからに違いない。そして、読んでみてここに書かれていることが正しいということも実感できた。
本書は、こころの病と闘う家族がいる人はもとより、予備軍かもしれない現代社会の多くの人が、一度は目に通しておいて損はないと思う。
本書の中で、親や身近な大人が子どもに対して、積極的に使いたい三つのコミュニケーションと、避けたい三つのコミュニケーションを紹介している。
前者は
①繰り返す
②行動を言葉にする
③具体的に褒める
後者は
①命令や指示
②不必要な質問
③禁止や否定的な表現
これは、本書のエッセンスであると私はとらえました。
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子どもの対する不適切な養育(育て方や接し方)が子どもの脳を傷つけ、学習意欲の低下や非行、うつなどの精神疾患を引き起こすことが、最近の(というか長年のかも?)研究からわかってきたとのこと。
以前からも同様のことは言われていましたがそれは、身体的な虐待やネグレクトのみをさしているようなイメージがありましたが、親が自覚しない精神的・心理的な虐待でも同様もしくはそれ以上の傷つけ方をしているかも・・・ということが書かれてあり、真っ青になりました。
親が自覚しづらい虐待・・・というか不適切な養育にはこんなものも含まれるとのこと。思い当たる方もいるのではないでしょうか。私はあります。だから青くなりました。
・子どもの失敗を頭ごなしにしかりつける。
・「ぐっずり眠っているから」と下の子を寝かせたまま、下の子を一人にして上の子の幼稚園のお迎えに行く。
・子どもの前で夫婦げんか
・上の子と下の子の勉強やスポーツの出来などを比較する。
・できなかったテストの点を本人の前で他人に話す(本人の尊厳を傷つける行為となるそう)。
こういう話が出てくると気になるのが、
・どんな行為が不適切な養育(著書ではこれを「マルトリートメント」と言っています)にあたるのか
・子どもに対するそのような行為が子どもの脳に与える影響がいかほどのものか
・子どもが受けた脳の傷は治るのか。治し方は。年齢を重ねるごとに難しくなるのか。まだ間に合うのか。
といったところでしょうか。
本書にはそれらの答えとさまざまなヒントが書かれています。
そして最後にちらっと触れてありましたが、ケアの必要があるのは子どもだけではなく、親に対するケアの必要性についても書かれています。こういう本は、親側から見るとつい「自分が責められている」という感覚になりがちですが、そんな心配はしないで一度手に取っていただけるといいと思います。
私も読了後、大いに反省。
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2人の娘を持つ母親でもあり、児童精神科医でもある著者が自身の研究に基づいて書いた新書。
一般向けにわかりやすく書かかれており読みやすかった。
近年少子化が進んでいるにもかかわらず虐待件数が増えてきている。実際に増えているのか、発見が増えてきているのかは定かではないが、実際に多いのは間違いない。
実際虐待を受けた子どもたちは愛着障害を起こす子が多く、発達障害に似た症状がでることもある。性格と片付けてしまえばそれまでであるが、この著者のすごいところはMRIやfMRIという脳の大きさや機能を調べて実際に虐待が子どもの脳を傷つけていることを証明されていた。
なんとなく心に傷を負うことは理解していても、科学的に証明されるとインパクトが強い。
身体的虐待よりも心理的虐待の方がダメージが大きいなど、最新の知見に基づいて書かれていた。
この心理的虐待は直接子どもに言っていなくても、親同士の喧嘩やDVを目撃するだけでも起こる。
その子どもたちが傷つきながら成長し大人になると、人を信用できなかったり、苛々を抑えられなかったり、さらにその子どもたちへ伝播していってしまうという悪循環に陥る。
幸い、傷ついた脳は元に戻ることもあるそうで、周りの大人が愛情を持って接することが非常に大事で、みんなが心に余裕をもち子どもだけでなく誰に対しても優しくなれる世の中になってほしいと思った。
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子どもに対する不適切な養育を「マルトリートメント」と呼び、その結果子どもの脳にどんな影響が出るのか、その治療にはどんな手立てがあるのかが紹介されています。
こころの傷つきによって、可視化されるほど脳がダメージを受けるという具体的なデータを見て、マルトリートメントのおそろしさを感じました。
子どもに携わる大人の方には一読をお勧めします。
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■マルトリートメントという考え方
・1980年代になると,児童虐待をより生態学的な観点からとらえるようになり,「チャイルド・マルトリートメント」という表現が広くる使われるようになった。
・treatment(扱い)に,mal(悪い・悪く)という接頭語が付いたもので日本語では「不適切な養育」と訳される。
■成長過程で母親からグルーミング(毛づくろい)やリッキング(なめる行動)をされ大事に育てられた仔マウスは社会的にも情動的にも正常な発達を遂げるが,そのようなケアを受けずに育った仔マウスは成長後,ストレスや不安が高まることを明らかにした。(カナダのマニトマ大学のマイケル・ミーニー)
■いたいけな子供が,助けを必要としているとき,親から無視され,放っておかれる。愛情を伝えようと近寄り,親を見上げ,微笑みかけても,同じような反応は帰ってこない。不安で元気がない時にも共感や励ましの言葉をかけてもらえない。これでは健全な愛着は形成されません。
■子供は親との愛情・信頼のキャッチボールを通して人間関係について学び,社会のありようを知っていく。それが不十分だと,人とのかかわり方自体も変わってきてしまう。実際親子の愛着が希薄だと,子供は生来持っている愛着行動をとらなくなっていく。成長して社会に出てからも他者との人間関係をうまく結ぶことができない。
■愛着が不足した結果として出現する様々な症状を総括したものが「愛着障害」である。
■特に,幼児期に受けた過度なマルトリートメントに起因する愛着障害は,感情制御機能に問題が発生しやすく,うつ病や多動性障害,解離性障害などの重篤な心の病へと推移するといわれている。
■親や身近な大人が子供に対して「積極的に使いたい三つのコミュニケーション」
①繰り返す
②行動を言葉にする
③具体的に褒める
■避けたい三つのコミュニケーション
①命令や指示
②不必要な質問
③禁止や否定的な表現
■「食べ物やお金と同じように”褒められる”ことも「報酬(ご褒美)」として脳内で処理されている」ということを発見した。(定藤規弘氏の研究室)
■子供時代にマルトリートメントを受けた被害者が成長して親になったとき,自分の子供に対してもマルトリートメントを「行う」確率は3分の1。「行わない」確率もまた3分の1。「どちらにも傾く可能性がある」のが残りの3分の1。
■子供を慈しみ,大事に育てようという感情は,生まれながらにして持っているものではなく,子供と実際に触れ合うことで喚起され,育っていくもの。
■育児経験のない成人のほとんどが子供に接する機会を持たないため,この「養育脳」は活性化していないと考えてよい。
■スキンシップを図ることで,人は誰でも脳が活性化するばかりか「オキシトシン」というホルモンが分泌され,穏やかな気持ちになることができる。
・オキシトシンは別名「愛情ホルモン」とも呼ばれ脳の下垂体後葉から分泌され,女性の出産・育児に大きくかかわっている
■子供を健やかにはぐくむために ~愛の鞭ゼロ作戦
■愛の鞭のつもりの行動がいつの間にか虐待へとエスカレートしていく危険性
①子育てに体罰や暴言を使わない
②子どもが親に恐怖を持つとSOSを伝えられない
③爆発寸前のイライラをクールダウン
④親自身がSOSを出そう
⑤子供の気持ちと行動を分けて考え,育ちを応援
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図書館で借りた本。
「こころ」とは、心臓や胸にあるのではなく、脳にある。親の何気ない、こころない一言が子供の脳を傷つけているということ。どの親も、大なり小なり思い当たることがある。確かに。言い過ぎたこと、思わずこぼれた余計な一言。感情に任せて言い放った言葉。親として、大変参考になり、反省させられた一冊です。
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https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000885232017.html
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親の言葉、行動が子どもの脳を変形させる。
でもそれは、その後の処置でリカバリできるってのも新鮮だった。
親自身の変容も大事だと思うが、それを行うためには、まずマルトリートメントの事実を認める、ないしはそれが明るみに出る必要がある。その最初のハードルが一番高いと思う。
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行動を言葉にする、具体的に褒める。