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あらすじ(背表紙より)
英国でこの世を去った大伯母・玉青から、高級住宅街にある屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。思わぬ遺産に飛びつくが、大伯母は面識のない自分に、なぜこの屋敷を託したのか?遺産を受け取るため、親族の中で異端視されていた大伯母について調べるうちに、「十六夜荘」にこめられた大伯母の想いと、そして「遺産」の真の姿を知ることになり―。
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自分しか見えていない主人公の雄哉くん。記憶のない大伯母の玉青さんの遺言で手にした「十六夜荘」。少しずつ少しずつほぐれていく感じと、戦時中の異常さ、その中で「自由」を大切にした玉青さんをはじめとする人たちのかっこよさと苦しさに敬意を表したい。一鶴さんのような懐の大きな人になりたい。
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いやー、久々に良い小説、良い作家に出会えました。
素晴らしい本です。十六夜(いざよい)荘、十五夜から欠けていく月が集まるところ…、人生も月の満ち欠けと同じ。満つる時もあれば欠けるときもある、でも欠けるときも悲しむことはなく、また満つるときに向けての大切な時間。会社でがむしゃらに働いてきた主人公の雄哉。倫敦で客死した大伯母の玉青から、十六夜荘を遺言で託される。会社を辞めてわかる自分の小ささ、世の中や社会の不条理。人生で大切なものは何か?それを徐々に取り戻していく主人公。戦時中に生きた人々の不条理、平和な時代に生きることのできる我々の幸せ。現代と戦時中が織り成す物語。中国語翻訳者である古内一絵さんでなければ書けないストーリー。ほぼ同年代の彼女がこういった厚みのある小説を書けるのも凄いと思います。特に若い人に読んでもらいたい小説です!
「満ち欠けがあるのが自然。人も国も仕事も、恋愛も」
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お月様のように
満ちていく時もあれば欠けていく時もある
欠けている時は
『色々なものを失ったり、手放したりしなきゃならないし、人から軽んじられたり、バカにされたり、自分が世間から"無用だ"って全否定されてるような気がするよな』
-p288
ただそんな欠けてる時も満ちていくための必要な時間と割り切って、この割り切ってができないからみんな苦しむんだよなー。
雄哉の言うことや考えている事は間違っていない
合理的だし、筋は通っている。
だからこそ周りの人は正しすぎて厄介者扱いをしている。
それを戦後苦しい時代を生き抜いた大伯母から
伝えられるならわかるが
大伯母玉青からメッセージを受け継いだ
シェアハウスの住人たちから伝えられると言うのは
予定調和過ぎて。
【十六夜荘】を残すと言う事自体がメッセージというのはわかるが
もう少し、写真や一編の手紙なり
直接のメッセージは見たかったかも。
それこそうまくでき過ぎか。
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面識の無い大伯母・玉青から、高級住宅街にある「十六夜荘」を遺された雄哉。大伯母の真意を探るうち、遺産の真の姿が見えてきて――。〈解説〉田口幹人
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遺産として引き継ぐことになった古いお屋敷の歴史を探るお話。
現在バリバリのサラリーマンである主人公の目線と戦時中のお屋敷の持ち主の目線で交互にお話は構成されています。
戦争中誰もが犠牲者であったことを一つのお屋敷を通して表現されてます。
戦争を表現したお話については自分には真実を見極める力が不足しており正直どのパターンのお話を読んでも受け入れられない部分がある。
ただ願うならば今後戦争はおきないでほしいということだけ。
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十六夜荘というシェアハウスである、玉青(たまお)の遺産の古ぼけた洋館を中心にして、戦前戦中戦後を力強く生き抜いた玉青と、彼女から十六夜荘を遺贈された現代を生きるその曾孫 雄哉の物語が交互に進んでいきます。
笠原家の離れに集った若き芸術家たちは、そのほとんどが戦争によって命を落としました。狂気に満ちていた時代。その哀しみを、わたしたちは決して繰り返してはいけない。
大伯母が何故ほとんど繋がりのなかった雄哉へ十六夜荘を遺したのか、散りばめられていた謎が収まるところに収束してゆくお話は、読んでいてとても心地よかったです。哀しみは残るけれど。
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最短距離で結果を出すことがモットーのエリート会社員雄哉が、突然ほとんど付き合いのなかった大叔母の遺産(好立地のお屋敷)を相続することになる。お屋敷について調べると、場所は素晴らしいが、老朽化が進んでいる。しかも訳の分からない4人の住民がタダ同然の家賃でシェアハウスとして使っており、利益も出ていない状況。彼らを追い出し、土地を「有効利用」しようと試みるが…。
大叔母が少女時代を過ごした戦時前後と現在の様子が交互に書かれている。
雄哉がお屋敷について調べる過程で、今まで持っていなかった価値観と出会い、戸惑い、失っていくものもありながら、人間として厚みを増していく。
月みたいに満ちていくときもあれば、欠けていくときもある。見たいと思わなければ見えない景色がある。素朴な言葉ながら、戦時中の話や雄哉の素直な気づきによって胸にスッと落ちてくる。
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大伯母から思いもがけない遺産をもらう事になる。
その館はシェアハウスで経営は成り立っていない。
その館は戦前戦後を潜り抜け今に至る。
戦争を挟んだ時代と忙しき現代を行ったり来たりする。
館を取り巻く人達の生き様が面白い。
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なんだろう。
戦争時が舞台の話ははいくつか読んだことあるけど、本作ほど身近にリアルに感じたことはないかも。
そうは言っても華族なワケだし、、一般の人と比べたら戦時中とはいえとても恵まれた環境だったと思うんだけど、それでも妙に生々しく感じた。
現代の話はそれほど、面白くはないけど玉青の話はまだまだ読んでいたいと思った。
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古内一絵過去作品遡り。
戦前、戦中を生き抜いた異端の大伯母所有の屋敷を相続することになった、ヤリ手広告マンの主人公。物語はその大伯母と主人公の2つの目線で代わる代わる語られていく。
価値観や正義が一つの方向に向けられるってことの危うさである。「日本が戦争に勝って世界に正義をもたらす」ことや「効率優先で仕事において確実に成果を出す」ことが間違っていないのかも知れないが、それがすべての人々に強制的に仕向けられた価値観や正義となったら…。
絶対正義などきっと存在しない。そんなことをやり続けたら必ず滅びると歴史は証明している。
この本を読んで、世界で絶対の価値観など存在しないし、させようとすれば不幸しか訪れない、と改めて認識させてくれた。
価値観の多様化を認めることが大事である。他人の価値観を認めること。自分の価値観と相違があっても「こういう価値観もあるんだなぁ」と存在だけは認めること。それがどうしても相容れなけくとも、叩く貶す潰す…みたいなことはしないこと。距離を置く、離れるで十分じゃないかと思う。
離れてみたら、その価値観の良さも認識できるタイミングだってあるかもしれんし、なくても距離があれば一安心できるし。
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現代と過去を行ったり来たり。一つの家の歴史になるのか?写真でしか知らない死んだ人にも、当たり前だけど生きていた日があって、それが身内だと、自分にも繋がってる。こんなドラマチックな身内持つことはそうそう無いだろうけど(´∀`)
でもなんか、今の時代もあちこちでまた、何か息苦しくなってきてるなあ。ただ声がでかくて乱暴な奴が威張り出すとろくな事にならないって、何度も歴史が語ってるのに。
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人も月も同じで、満ちてくときもあれば、欠けていくときだってある。欠けていく月が集まるシェアハウス「十六夜荘」を舞台に、財閥解体によって没落した華族の生き様を描いた物語。笠原玉青の凛とした姿と愛を貫いた生涯。彼女が体を張って守り通そうとしたものは何か。読み応えのある大作でした。古内一絵 著「十六夜荘のノート」、2012.9刊行、2017.9文庫化。
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現代の雄哉と、戦前戦後時代の玉青。2人の人生が交互に語られる。
現代の雄哉は鼻持ちならない男で、半分くらい読んだ段階では、玉青の話だけでいいのに、と思っていた。
しかし、最後まで読むと、戦争のあった頃から地続きで繋がっている現代を感じられて、とてもよかった。
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作家古内一絵さんの発想はどこからくるのだろう。
予想をはるかに超えた展開に感動した。
この作品を読んで十六夜の意味を調べて、その意味深さとこの作品の関連を考え更に感動した。
また、巻末の書店員田口さんの解説もブラボー!