投稿元:
レビューを見る
当時の外交文書がこんな大量に解読されているとは驚いた。文明の崩壊は複合的な原因で起こるので、滅亡している当人たちもそのことに気づかない、ということらしい。
投稿元:
レビューを見る
最近少し流行りの文明崩壊に関する本の一つなのかもしれないが、本書が扱うのは、エーゲ海・東地中海からエジプト、メソポタミアまでの地域の後期青銅器文明の終焉。本書によれば、紀元前13世紀から15世紀にかけて、これらの地域は相互に結び付いて豊かな文明を育んでいたが、紀元前1177年を含む前後数十年の間に、その中の多くの文明が崩壊したという。そして、その崩壊の原因は未だに特定されておらず、諸説あるが、著者は複合要因説、つまり、気候変動、地震等の自然災害、民族移動などの複数の要因で「パーフェクトストーム」のような現象が生じたとしている。
何しろ、古い時代の話なので、中々時系列でも追うのが難しいが、エジプトのファラオの変遷を一つの軸として読んでいくと分かりやすいかもしれない。
それと、あまり馴染みのない地域が次々と出てくるので、場所や名前を追うのが大変で、最初は読んでて眠くなった。ただ、ある程度読んで理解が進んでくると見通しがよくなる。そうなってから、まえがき、プロローグ、第1章の最初の方などを読み返すと、分からなかったことが分かってくる。
投稿元:
レビューを見る
【運命のひと時に】古代史上の一時代を画する出来事となった「海の民」の襲来。世界史の授業でも取り上げられる一方で,その内実が明らかにされていないこの民族の謎に迫りつつ,往時に成立していた国際的なネットワークについて考察した作品です。著者は,ジョージ・ワシントン大学でキャピトル考古学研究所の所長を歴任するエリック・H・クライン。訳者は,翻訳家として活躍する安原和見。原題は,『B.C. 1177: The Year Civilization Collapsed』。
前半部分は聞き/読みなれない固有名詞が並ぶため,門外漢にはかなり読みづらいのですが,後半部分の歴史ミステリー的要素はその大変さを軽々と超える面白さ。また,エジプトやヒッタイト,エーゲ海文明が,それぞれ独立したものではなく,かなり緊密につながりあっていたという指摘にも驚きを覚えました。
〜真の問題は,「だれが犯人か」でも「なにが原因か」でもなく--というのは,関係する要素や民族はいくらでもあるようだから--「なぜ起こったのか」「どのように起こったのか」のほうである。〜
読書の愉悦,ここにあり☆5つ
投稿元:
レビューを見る
レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12375366289.html
投稿元:
レビューを見る
大まかなエジプト史、メソポタミアの国名、ヒッタイトなど知ってはいても、BC1400-1200頃の地中海情勢、古代国際関係の観点などは知らず、それなりに面白かった。
しかし、古代文明世界の崩壊の原因を探ると言う惹句ほど、記述は明瞭ではなく、地震、気候変動、「海の民」(外敵)、内乱、それらの複合、色々あるけどよくわからないよねが結論。密結合のシステムは一部が揺らぐと崩壊しやすいというのは、魅力的な議論だが、何があったのかの部分は、明確ではなく、著者自身も積極的に一つの原因を主張してはいない。これは、誠実な態度とも言えるけど、スリリングとは言えないところ。出版社の売り文句と本の内容に乖離があると言うべきか。
これほど古く高度な文明、外交、経済活動が、あったことには驚く。
3000年前も今も変わってないじゃん。
絵が無い。遺跡や、出土品の写真を入れてくれたら、イメージしやすく、もっと楽しめた。
投稿元:
レビューを見る
とても期待しながらざっと流し読みした限りの感想。もっとじっくり読めば感想はかわるかもしれない。
過去にあったグローバル社会の崩壊の原因をさぐるという狙いは今日的ですばらしいと思った。後期青銅器文明時代の詳細な検証もさすがは考古学の権威だけあって微に入り細に入りでさすが。
だが、まとめの崩壊の原因が特定できなかったという結論は残念というしかない。
やはり今度こそ単体文明ごとの崩壊研究の書ジャレド・ダイヤモンド「文明崩壊」を読もうと思う。
満足度★★+0.5
投稿元:
レビューを見る
最後の解説がよくまとまっていて判りよかった。
本編は、詳しいんだろうけど私には難しく、人の名前なのか国の名前なのか、学者の名前なのか、だんだんわからなくなる始末。
もしかしたら第5章だけでも私は満足できたかも。
投稿元:
レビューを見る
前15世紀から13世紀にかけてエーゲ海・東地中海で文明が繁栄し、国際交易ルートがあったが、前1177かその後に多くの都市が破壊され、後期青銅器時代は終わりを告げた。
ジョンソンの複雑性理論で説明できるのではないか。システムの構成要素の相互依存が高まるとシステム全体を安定に保つのが難しくなる(超干渉性)。一部に変化があれば、全体を不安定化させ、システムは崩壊する恐れが出てくる。
ジョンソン:『複雑で単純な世界』
投稿元:
レビューを見る
BC1177 エリック・クライン 筑摩書房
所有欲が芽生えて以来の
グローバリズムに注目し
紀元前と現状の社会の類似性を見抜いた
見識を評価したい
強奪に始まる侵略戦争と共に
交易と政略結婚による縄張りで対立を生み出し
漁夫の利による利権を狙うグローバリストの台頭
それにしても知識に頼ることで
調和による相乗効果を見逃している愚かさに
我々は学ぶべきなのだ
ビックリしたのは
弓に関する科学力による進歩だ
紀元前2000年ごろに
異種の素材を張り合わせることで
強力な弓を開発していると言う
合わせて馬による戦車も登場していたとも言う
尽きぬ強欲とそれがもたらす不安恐怖による力は
死に物狂いだと言うことだ
内容は兎も角
日本語の乱れを感じずにはいられない
毎度のことだが
肝心なテニヲハによる機微に疎いし
ガの乱用や主語の重複が悲しい
投稿元:
レビューを見る
紀元前1200年ごろメソポタミア〜地中海沿岸に繁栄した
文明が突如として消滅、これまでデウス・エクス・マキナの
ごとく、そのすべてが「海の民」による侵略のためと考え
られてきたきらいがあったのだが、決してそれだけが原因
ではなく、様々な要因(地震・旱魃・飢餓・内乱、そして
侵略など)が複合的に作用したため、巨大な一つのシステム
となっていた広大な文明がドミノ倒しのように崩壊したと
説明しようとするのがこの著作である。その是非については
判断する立場にないのだが、それ以前にこの時代にこれだけ
広範囲に及ぶ貿易圏・文化圏が成立していた様を生き生きと
描いているところが一番の読みどころではないかと思った。
その崩壊直前の様相は現代のグローバル社会に通じる所が
あり、その意味での警鐘ともなっている。
投稿元:
レビューを見る
考古学的な知見から、三千年以上も昔のここまで詳細な事実がわかるようになったのかと驚く。焼成された粘土板に刻まれた文字の、年月に耐える力というのはただごとではない。
ただしかし、肝心のタイトルの年に起きた数々の国や都市の滅亡の背景にあった事実についてはそこまではっきりとした経緯が確かめられたわけではなく‥
投稿元:
レビューを見る
紀元前13世紀末〜前12世紀初頭にかけて、近東・東地中海地域に栄華を誇っていた古代文明の数々が次々に“終焉”を迎えた。それは一体、なぜなのか。謎の民族「海の民」が引き起こしたものなのか。アメリカ考古学者クラインが軽快な語り口でその謎に迫っていく。
私は近東のある古代文明を研究したが、その国のことを学ぶのに手一杯で、なかなか当時の国際関係にまでは気が回らなかった。本書はそれを非常に鮮やかに描いている。「海の民」については、この地域に興味のない方には聞き覚えのないものかもしれない。私は、彼らは単一民族ではなく難民のようなもので、何度か波のように押し寄せてきたと学んだように記憶している。やはり今でも彼らは謎の民のままである。ワクワクする。
本書は大きく2つのパートに分けることができる。まず、前半は当時の豊かな国際関係の紹介である。国王同士の手紙など、とても興味深い。このパートはいわば証拠固めに当たる。
そして、シャーロック・ホームズの言葉も引用される後半は謎解きである。クラインは文明の崩壊の原因を単一要因に帰結させず、複合要因に求める。前半で紹介した高度に結びついた国際関係が、ドミノ崩しのように大きなハレーションにつながったというものだ。とはいえ、様々な未解決の課題は残り、謎解きは不首尾に終わったとも言える。
本書は一般書らしい。しかし、内容はなかなか高度である。慣れない方にはカタカタの、それも欧州圏とは違う地名や人名に苦労するかも。でも読み終えたとき、現代社会に通じる大きな学びがあるだろう。
投稿元:
レビューを見る
地中海に花開いた青銅器文明が、紀元前12世紀に崩壊した理由を分析した本。恥ずかしながら、本書の時代と舞台については疎く、海の民という言葉も忘れていた。アッシリア、ヒッタイト、クレタ、ミュケナイ文明という言葉を断片的に覚えているだけだった。
本書は、当時のグローバリズムを各国間の手紙(なんと陶器の板)や様々な遺物から読み解き、驚くほど密接な国際社会が存在したことを知らしめる。この部分だけでも当時を学ぶには十分な資料と言える。そして、青銅器文明の崩壊については、既存の学説や新しい見解を一つ一つ取り上げ、その信憑性について分析している。
最終的には、文明崩壊の原因は現時点ではわからない、と認めているものも潔い。
学者の記述は往々にして専門的になりすぎるきらいがあるが、本書は専門的に話しつつも、一般読者も十分理解できるレベルである。
惜しむらくは、現代に結びつけようとしてなんとなく尻切れトンボ気味なところか。無理に現代に結びつけるような記述は不要だったと思う。
投稿元:
レビューを見る
BC1177前後に一斉に崩壊した地中海の青銅器文明についての本。崩壊前の豊かなグローバル経済、国交などの様子や、滅びた都市の遺跡からわかることを詳細に語り、突然の文明滅亡の謎に挑んでいる。
遺跡の発掘、出土した粘土板の解読が進んでいるという紹介が面白かった。エジプトに黄金をねだる周辺国の粘土板や敵国への貿易ブロックを指示するものなどバラエティに富んでいて、これを3000年を超えた現代で読めるのがすごい。肝心の文明滅亡については様々な要因が絡んだ複雑なものとしか言わず、帯で煽られている海の民についても詳細はわからずじまいだが(古代のことが完璧にわかるなどありえないのだから仕方のないことだけど)、今わかっていること、議論されていることを整理してくれているので十分と思う。読んだ印象では解説の通り気候変動が引き金ではあると思うのだが、それではまずいのだろうか?
投稿元:
レビューを見る
後期青銅器時代、エーゲ海から東地中海に根ざしていた複数の文明が同時期に滅んだ。滅びは暗黒時代を呼び、それは300年ほど続き、再び立ち上がった文明は前時代を継承してはいなかった。
本書は、滅びを招いたものはなにかと問い、はっきりとはわかっていない、複合的な要因であろうと答えている。
主題はおそらく、グローバル化した経済圏をもつ現代と、後期青銅器時代に文明間に構築された経済圏の相似形を語ることであろう。相互に依存した経済圏は、目に見えぬ形で積算した幾つものきっかけが原因で、ゆるやかにだが復元できぬほどの崩壊に至ることがある。
現代においてもそれは起こりうると述べている。発刊年からするとリーマンショックを念頭に置いてのことか。
ミケーネ……ミュケナイ、ミノス、ヒッタイト、ミタンニ、バビロニア、カナン、エジプト。歴史に興味がなくとも耳にしたことのある文明または勢力圏。それらの間には定常的な交易網が存在した。
イリアスで語られるトロイア、聖書で語られる出エジプト。これらは時代の趨勢の変化――文明あるいは勢力圏の弱体化――が招いた出来事であったかもしれない。
これらについてはこれまでキーワードでしか認識していなかったきらいがある。同一時空に在ったことを認識させてくれた。