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30周年かあ。初めて読んだのは「まあじゃんほうろうき」だったと思う。最初の頃のとぼけた感じが、あれよあれよという間に疾風怒濤前代未聞のむしられドキュメントへとなだれ込んでいって、この人はまあ一体何者なのかと思ったものだった。
ご本人がおっしゃるとおり、仕事には切れ目がなく、嵐のような家庭生活だった頃も描き続けてきた、その根性には頭が下がる。「毎日かあさん」は「善人モード」で「自分ロンダリング」だと言うけれど、初期の「ゆんぼくん」「はれた日は学校を休んで」などのころから、独特の叙情性があった。「恨ミシュラン」や「できるかな」シリーズなんかの方がプロ意識で描かれたもののようにも思う。
ともあれ、さすが新保信長氏の編集だけのことはあって、実にみっちりと濃い内容。ご本人のロングインタビューはもちろんのこと、高野秀行さんとの対談や、歴代担当者の座談会、伊藤理佐・吉田戦車・羽海野チカといった方たちによる書き下ろしマンガなどなど、読みごたえたっぷりだ。一番笑ったのは、マンガデザイナーであるボラーレの方たちとの「放談」。これは再録だそうだが、まさに放談、言いたい放題だ。お堅いイメージの河出書房新社、裏表紙の高須クリニックの広告とあわせ、社内的に大丈夫だったんでしょうか。
エッセイの執筆者も、角田光代・有川浩・平松洋子という豪華版だけど、こういうキョーレツなムックのなかではなんとなく影が薄いような気がしてしまった。あ、ゲッツ板谷さんのは面白かったです。