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注文して届いたのは、赤表紙金文字製本の本。まず、論文のスモールサイズのような装丁に驚いた。黒表紙は見慣れているが、赤表紙。まさに「美」。
とても読みやすく、夢中になって読んだ。
生きるとは、日々発見と創造の繰り返し。
今、この本に出会えてよかった。
しばらく経ってから、読み返したい。
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すごく、すごーーく良い本だった!
わたしたちは60兆個の細胞からできていて、生きてるだけですごいんだってことがよくわかった。
レム睡眠とノンレム睡眠も、これまで何度も教わっているけど、改めてよく理解することができた。人間は脳が発達しすぎちゃったから、脳を休めるためにノンレム睡眠という新しい睡眠の形が生まれたのだね。でも脳が完全に休んでしまうと生物としては危険だから、レム睡眠と交互に訪れる仕組みになっている(p95あたり)。
睡眠システムひとつをとっても、表面的な説明ではなく、なぜそういう仕組みになっているのかということを、生命の歴史からひも解いて書かれているので、すごく興味深く、わかりやすく、納得がいく。へえええーー、という話の連続だった。
人間は海から出てきて、月のリズムより太陽のリズムに合わせて生活するようになった。でも、海にいたころの名残で女性の月経は月のリズムとかかわりがある。そういうことに思いを馳せると、自分はただ生かされているだけで、何も悩むことはないのだなあ、と気持ちが楽になるような気がする。
p134
自分の体の状態次第で心の状態はすぐに変わるということを、東洋では深く理解していた。また、ロシアの医師であり文学者でもあるチェーホフは「風邪を引いても世界観は変わる。よって、世界観とは風邪の症状にすぎない」とも言っている。例えば風邪を引いたり病気になったりした時を考えてみてほしい。落ち込み、気弱になることもあるだろう。ひどい時は「もう生きていても仕方がない」と生きること自体に絶望してしまうこともあるかもしれない。しかし、風や病気が治って元気が出てくると、落ち込んでいたことすらすっかり忘れてしまう。つまり、ちょっとした体の状態で心の状態は簡単に変わり、見える世界すら変化してしまうわけだ。
p170
外的にものをつくる行為は、内的な心の世界において道のものをつくっては壊す、という新陳代謝が同時に生起するプロセスの引き金となる。ものをつくる行為の中には、あらゆる失敗と、その失敗を乗り越える工夫とが渾然一体となってすでに含まれており、心の中に抱えている葛藤や矛盾があらゆるプロセスを経て最終的にひとつの形を持った作品として顕在化する。もちろん、完成しないこともあるかもしれない。そう簡単に矛盾は解決しないからだ。
ただ、そうした心の葛藤や矛盾こそが、創造物をつくる豊かな母胎にもなっている。多くの人が気づかない部分に違和感を持ち、多くの人が見過ごしているものを発見し、その違和感やずれをこそ大切にして、安易に解決しないように心の奥深くで孵化を待つ卵を抱えているのだ。
そうした外的な行為と、内的な心のプロセスとは分かちがたいものだ。内的なプロセスが、心の深い場所を通過したものであればあるほど、それは強い力を持ち、質がともなったものになるだろう。自分自身を癒すものでありながら、他者をも癒す力を内在する作品へと昇華されるだろう。そのことを、人々は芸術(アート)と呼ぶのだ。
p187
(エンデの言葉)
「シェークスピアの芝居を見にいったとする、そのときもです。���はけっして、りこうになって帰るわけではありません。なにごとかを体験したんです。すべての芸術において言えることです。本物の芸術では、人は教訓など受けないものです。前よりりこうになったわけではない、よりゆたかになったのです。心がゆたかに――そう、もっといえば、私のなかの何かが健康になったのだ、秩序をもたらされたのだ。
およそ現代文学でまったく見おとされてしまったのは、芸術が何よりも治癒の課題を負っている、というこの点です」
子安美知子『エンデと語る 作品・半生・世界観』(朝日選書)より
p203
西洋医学は「病気を治すこと」が目的であり、その後どこへ向かっていくのかは何も問わない。伝統医療では、「健康になること」を目的とする。その結果、いつのまにか病気が治っていることもあるし、治っていなくても病気と共存しながら心の折り合いをつけてより良く生きていけばそれでいいと考える。そもそも、向かうべき目標が違うのだ。どちらがすぐれていて劣っている、という話ではなく、そもそもの目的が違う、ということだ。それは方法論の違いであり、考え方の違いである。
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「おわりに」の後に書かれていた文章より。
河合隼雄、三木成夫、井筒俊彦のすべての著作から大きな影響を受けて、本書を記している。この本のインスピレーションのもととなっているものも多い。思索を深めたい方は、この方々の著作を穴が開くほど精読することを強くお薦めしたい。
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医師が書いたこころとからだについて。
何と言って良いのかわからないがとても良質な文章で、言葉の一つ一つに透明感のような心地よさを感じます。
美しささえ感じる文章は繰り返し読みたくなります。
とても良かったです。
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ハードカバーの、デザインが素敵な本。
本棚に飾って置きたくなるような、大切にしたくなる本だ。
自分も医療者で、西洋医学だけではいのちは救えないと思っていろいろと模索していた中、今アートの世界を勉強し、この本に出逢った。
とても共感することが多かったし、人類の歴史など、たくさんことを学ばれているんだろうなぁ。勉強になることがたくさんあった。
こんな先生に診てもらいたいし、こんな医療者、アーティストでありたいと思う。
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図書館で借り、今・読了。
多岐に渡り書かれている。『良かった』と簡単にひと括りには言いたくない濃さ、重さ、深さ…。
著者の生まれ年が書かれていなかったらきっと、人生を長く生きて来られた方だと思ったことでしょう。41歳という若さに、嬉しい驚きを感じています。家族も読了。そして先程、ポチッと購入しました。
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「生き方」シリーズ。医者であり芸術にも造詣が深い稲葉先生の著書。心と体の関係を独自の視点で解説してくれる。生まれた時から付き合っている「体」であるが、当たり前すぎてじっくり考えることもなく、わかっていないことも多い。病気にならないと健康を意識しないし、喉元過ぎればなんとやらで、忘れてしまう。自分の体を改めて考えるきっかけをくれる一冊。「病気が治るから元気になるのではなく、元気になるから病気が治るという考え方」「植物性臓器(循環)と動物性臓器(運動)の調和を意識する」「風邪をひいても世界観は変わる。よって世界観とは、風邪の一症状にすぎない(チェーホフ)」「生きているだけで、生き残っていることに自信を持って良い」「矛盾とは、絶対に解消すべきものではなく、共存しても良い。事情が分かれば全く逆の意味になることさえある」「拒絶反応は自己の深層の投影」「光は同じ場所に存在できる」
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【この本を読む目的】
・自分の身体、心と向き合うため
【学び・気付き】
・人間は60兆個の細胞から出来ている
・多くの人は外の世界へと視点が向いていて自分自身の内側から離れている
・見るべき世界は外側だけでなく、自分の内側にもある
【ネクストアクション】
・日常で自分を感じる
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著者の良心をひしひし感じる本です。心臓外科医としての実体験から、心臓のみならず身体全体との関係、人間の身体と心の進化・発展、さらには医療と芸術との関係にまで及び、(少なくとも自分には)まったく知らない世界に焦点を与えてくれます。文章も透明感があり、人柄がしのばれる内容と思います。
西洋医学での「心臓」という部分だけではなく、患者の「Life(=生活、人生、命と複数の意味あり)」全体を診る東洋医学的な観点を取り入れ、治療を主とする西洋医学に対し、日本ではそれを心の面から予防するさまざまな芸術がある(能・狂言、歌舞伎、華道・茶道、武道)など、医療から話題は多岐にわたっていきます。
2017年に出版されたものですが、今のコロナを予言するように、「生命の知恵として持つシステムの本質を、頭が『戦争』のメタファーとして捉え、病や異物を憎悪し攻撃する対象として考えるのか、あるいは、頭が新たな『調和』へと至るメタファーとして捉え、病や異物の深い意味を読み取るように新しい平衡状態へ移行するきっかけとして考えるのか、その考え方の違いは日々の積み重ねの中で心身へ大きな影響を与え続けるだろう」と書いています。コロナ禍でテレワークが急速に広がり、新しい価値観も生まれようとしているなか、コロナも新たな調和への一歩とするとどうなるのかと考えさせられました。
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本文より
もちろん、時間をかけないと受け入れられないものもあるので焦る必要はない。その場合は、未来の自分に可能性を賭けて、未解決のまま託す、というのもひとつの解決法だろう。辛抱強く、時間をかけて、しかるべき時がやってくるのを待つことが必要な時もある。
人間は変化することが予め内在化されている存在だ。細胞は日々生まれ変わり、成長し続け、そしていつか死ぬ。死ぬことすらも変化のプロセスとして含まれている。そういう力が内在しているからこそ、赤ん坊はいつのまにか大人になっていく。赤ん坊や子どもの時は変化や成長かわ強く感じられるが、大人になっても人間は死ぬまで変化し続けている。変化していく過程の中で、多面的に物事を見て、プラスもマイナスも包み込んだ広い視野から見られるようになった時、人は成長し、成熟していく。
葛藤や矛盾をそのまま自分の中に同居できる状態こそが「ひとつ上の視点に立つ」というイメージに近いだろう。
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生きる過程で、自分の内側と深く繋がっていくことが大切なのだろう。
外の自分ばかりコントロールしようとすると自分との離れていき、人と深く繋がりあうことができなくなる。
全体性を取り戻すために私はヨガをやっているように思った。
芸術もその一つとしてやってみたくなる。
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以前購入したものを、ふと改めて読んでみました。深いところで感じることができたような気がします。私の中の水路がつながってきたような感じです。医療、介護、療育、教育などに関わるすべての方におすすめです。
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2023/5/15
490.4||イ (5階自然科学・医学)
心臓の専門医が書いた「こころ」と「からだ」についての本。
「健康」とは「調和」である。今の状態が「不調和」か「調和」なのかを、心や体と対話していく。体だけを診るのではなく、心や命そのものと向き合う。
西洋医学だけでなく、伝統医療や代替医療を取り入れた医師が、「医療の本質」とは何かを問います。
今、体の不調を感じている方や、医療に携わる方におすすめの一冊です。
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一日一日違う日として生きる、それだけで誰もが芸術的に人生を創造してる、と思ったら、ふと心が軽くなった。
色んな矛盾を含みながら生きているからこそ、一人ひとりが魅力的。
時間はたっぷりあるようで、そんなに多くはないから、日常に小さな新事や芸術を取り入れるも良し、身体と真摯に向き合うのも良し、自分自身の全体性を取り戻しながら未来を創造していきたいと思った。